上 下
78 / 122
第四章  現在

3  今度こそ Sideエヴァ

しおりを挟む


 スティアおばさんを見送ってから、私は診療所内の掃除と診療に使ったものを洗濯をし終えると中庭へ干していく。
 マックスがカルテの整理をしている間に私はダイニングで昼食の用意を……そうそう今日は三人分ね。
 本当は私とマックスの分だけでいいのだけれども、二年前怪我負って入院していたエルさんがいたく私の料理を気に入ってくれたとかで、マックスの提案により週に一度水曜日のお昼は三人お食事をする事になったの。

 でもここだけの話、最初はエルさんがとても怖かったわ。

 何故ってそれはそうでしょ。
 初対面で行き成り部屋に入った瞬間羽交い絞めされる何て普通にいないもの。
 それに何時も部屋に入ると物凄~く難しい顔をして書簡を読んでいるの。
 だからエルさんって一体何者なのだろうと思うけれども敵ではないのは確かよ。

 ふふ、あのマックスが礼儀正しく彼に接しているところからして、もしかすると王宮関係なのかもしれないわね。
 でも王宮の関係者だとすれば私の正体……いえ、もうずっと忘れられている人間何て誰も興味すらないでしょ。
 そうそう心配するだけ無駄だわ。


 とは言えエルさんは本当によく食べる男性ひと
 でも物凄く美味しそうに食べてくれるのは嬉しいし見ていて飽きないわね。
 それに頑張ってお料理を作った甲斐があるってものだわ。

 年齢はマックスと一緒くらいだと思う。
 私よりも遙かに年上でしょうし顔の作りも悪くない。
 寧ろ女性が放っておかないくらい整っているイケメンという部類に入るのでしょうね。

 背中まである銀色の髪を一つに束ね、深い湖の様な蒼い瞳が魅力的だわ。

 一目会えば忘れられないという感じに見受けられるけれど、私にとってはただの元患者さんでありおじさん……んんと言うところかしら?

 それとも週一回だけ一緒にお食事をするお友達?
 何れにせよこの診療所にいるだけのお付き合い。


 それに私は忘れてはいなくてよ。
 前回私はこの国を出る事に失敗してしまったのだから今度こそ失敗は許されない!!

 この国へ来て十年。
 色々あったけれど漸く目標の年月をクリアしたの。
 蓄えもそれなりに出来たしね。
 後はタイミングを狙ってアナベルと一緒に第三国へ脱出し、そしてほとぼりが冷めた頃と言うかよ。
 出来るだけ早く彼女をライアーンへ帰国させて今度こそ私は私の為の人生を送るわ。

 そう今度こそ私だけを愛してくれる素敵な男性ひとと恋をするの。 

 きっと白馬に乗った素敵な方が私を探して見つけてくれる筈。

 また私がいなくなれば陛下もきっと遠慮なく新しい王妃を大々的に娶る事も可能だわ。

 第一顔さえ知らない夫何て私はいらない。
 私自身覚えていないのも問題かもしれないけれども、陛下もきっと私の事等覚えていらっしゃらないでしょうから……ね。

 だから私がこの国を出れば全て解決するの。


 さぁこうしてはいられない。
 早くお料理を並べなくては!!

 今日のお昼はスイーツ鴨のオレンジソース掛けに朝市場で新鮮な魚が手に入ったからカルパッチョをサラダ風にアレンジしたのよ。
 我が家産の人参のポタージュに自家製のクロワッサンをオーブンで温めて……と、デザートは苺のカスタードパイ。

 我ながらお料理の腕は本当に上達したわね。
 これならば何処へ行ってもちゃんと暮らしていけるわ。

 後何回こうして三人でお食事会が出来るのでしょうね。
 私が出て行っても男性二人がきちんと食事をしてくれたらいいのだけれど、それだけが少し心配だわ。

 ふふ、何年かしてこの診療所へ訪れた時、マックスとエルさんの干乾ひからびたミイラ姿何て見たくはないわね。

 そうならない為にもおじ様方、そろそろ結婚して幸せな家庭を築いて下さいね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした

月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。 それから程なくして―――― お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。 「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」 にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。 「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」 そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・ 頭の中を、凄まじい情報が巡った。 これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね? ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。 だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。 ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。 ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」 そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。 フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ! うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって? そんなの知らん。 設定はふわっと。

エルネスティーネ ~時空を超える乙女

Hinaki
ファンタジー
16歳のエルネスティーネは婚約者の屋敷の前にいた。 いや、それ以前の記憶が酷く曖昧で、覚えているのは扉の前。 その日彼女は婚約者からの初めての呼び出しにより訪ねれば、婚約者の私室の奥の部屋より漏れ聞こえる不審な音と声。 無垢なエルネスティーネは婚約者の浮気を初めて知ってしまう。 浮気相手との行為を見てショックを受けるエルネスティーネ。 一晩考え抜いた出した彼女の答えは愛する者の前で死を選ぶ事。 花嫁衣装に身を包み、最高の笑顔を彼に贈ったと同時にバルコニーより身を投げた。 死んだ――――と思ったのだが目覚めて見れば身体は7歳のエルネスティーネのものだった。 アレは夢、それとも現実? 夢にしては余りにも生々しく、現実にしては何処かふわふわとした感じのする体験。 混乱したままのエルネスティーネに考える時間は与えて貰えないままに7歳の時間は動き出した。 これは時間の巻き戻り、それとも別の何かなのだろうか。 エルネスティーネは動く。 とりあえずは悲しい恋を回避する為に。 また新しい自分を見つける為に……。 『さようなら、どうぞお幸せに……』の改稿版です。 出来る限り分かり易くエルの世界を知って頂きたい為に執筆しました。 最終話は『さようなら……』と同じ時期に更新したいと思います。 そして設定はやはりゆるふわです。 どうぞ宜しくお願いします。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

追放聖女。自由気ままに生きていく ~聖魔法?そんなの知らないのです!~

夕姫
ファンタジー
「アリーゼ=ホーリーロック。お前をカトリーナ教会の聖女の任務から破門にする。話しは以上だ。荷物をまとめてここから立ち去れこの「異端の魔女」が!」 カトリーナ教会の聖女として在籍していたアリーゼは聖女の証である「聖痕」と言う身体のどこかに刻まれている痣がなくなり、聖魔法が使えなくなってしまう。 それを同じカトリーナ教会の聖女マルセナにオイゲン大司教に密告されることで、「異端の魔女」扱いを受け教会から破門にされてしまった。そう聖魔法が使えない聖女など「いらん」と。 でもアリーゼはめげなかった。逆にそんな小さな教会の聖女ではなく、逆に世界を旅して世界の聖女になればいいのだと。そして自分を追い出したこと後悔させてやる。聖魔法?そんなの知らないのです!と。 そんなアリーゼは誰よりも「本」で培った知識が豊富だった。自分の意識の中に「世界書庫」と呼ばれる今まで読んだ本の内容を記憶する能力があり、その知識を生かし、時には人類の叡知と呼ばれる崇高な知識、熟練冒険者のようなサバイバル知識、子供が知っているような知識、そして間違った知識など……旅先の人々を助けながら冒険をしていく。そうこれは世界中の人々を助ける存在の『聖女』になるための物語。 ※追放物なので多少『ざまぁ』要素はありますが、W主人公なのでタグはありません。 ※基本はアリーゼ様のほのぼの旅がメインです。 ※追放側のマルセナsideもよろしくです。

頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。

音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。 その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。 16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。 後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。

【完結】神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。 神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。 追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。 居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。 小説家になろう、カクヨムでも公開していますが、一部内容が異なります。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

処理中です...