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第三章 過去2年前
6 悩めるマックス
しおりを挟む今回の一件はシャロン絡みであるのはほぼ間違いない。
だからこそ今ラファエルが深手を負ったという情報が広まればだ。
あの馬鹿王太子の一派は国内外を問わず、一気に息を吹き返した様に襲い掛かってくる可能性があるのは否めない。
ラファエルは重臣達へ念の為にと一週間程視察に出ると告げていた。
実質二日で切り上げ帰城するのは何時もの事である。
逆に調査が長引き予定よりも日数を有する事も度々あった。
なので今回も何時もと同じ様に臣下達はそう捉えているだろう。
それまでラファエルはマックスの元に身を寄せ、ある程度傷の回復に徹する事となったのである。
だがこれは日頃ラファエルとエヴァの関係を密かに案じていたマックスにとって思いがけない吉事である。
王宮でラファエルの執務を代行するチャーリーにしてみれば冗談ではないと一刀両断されるかもしれない。
実際ラファエルの怪我をシャロン側に知られずまた国政を停滞させない為にチャーリーは暫くの間屋敷に帰れないと愚痴三昧なのだ。
とは言えチャーリーもまた有能な側近。
愚痴れども仕事は常に完璧にこなしている。
マックス同様チャーリーもまたラファエルの親友であると共に忠実なる臣下。
チャーリーの苦労を棚上げにしマックスは今こそこの国の未来にとってラファエルとエヴァの再会は神のお導きではないだろうか……と感慨深く思っていればである。
今し方のフィオとのやり取りで噛み合う事のない妙な違和感。
患者さん……。
あ、ああああああああああ〰〰〰〰⁉
ままさかのフィオはラファエルを認識出来てはいない!?
だとすれば今のやり取りは十分噛み合う。
それが当たっているとするならばフィオはラファエルの顔を全く覚えてはいないって事なのか……ってあ゛あ゛、実際そうなのだろうな。
あの頃の彼女はただ単に幼いだけではなかったのだから……。
ではフィオの言うアレは何の事なのか?
確かに誰もいない筈の客間に男が寝ていたのであれば普通に驚くだろうが、何もそれは今日が初めての事ではない。
ここは入院施設のない診療所。
体調が優れず帰宅出来ない、または事情がある場合は何日か入院と称し泊めていた事もこれまでに何度もあったのである。
だから男性が寝ていたくらいでフィオが驚く事……まぁ多少は吃驚するだろうが不機嫌さまでは滲ませたりはしない筈。
フィオが不機嫌になる理由……部屋で何かが起こったのか!?
いやいやいやいや相手はあのラファエルである。
女嫌いのラファエルがフィオへ無体等働く訳がない!!
然も彼は腐っても一国の王。
いや、ラファエルの方はフィオを見て自身の王妃だと気がつき、久しぶりに見る成長し美しくなった妃に〰〰〰〰ってなのか⁉
幾ら何でもそれは早計過ぎではないでしょうかラファエル……。
あ〰〰〰〰でもそれはそれで後継問題もこれで安心かと思えば……う~んでもやはり幾ら自分の妃でも無体は宜しくないでしょう。
そしてあのアナベル姫を敵には回したくはないですラファエル!!
一体どうしたものかと客間にも入れず暫くの間マックスは一人悶々と部屋の前で逡巡する。
結果から言えば答えは出ない。
仕方なく意を決したマックスは目の前の扉をノックしたのであった。
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