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第二章  過去から現代へ向かって ~過去二年半前

24  プロポーズのその後は……

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 診療所内は現在プチパニック状態である。

 理由はジェンセンからの

 診療所内にいる大勢の患者さん達は目を白黒させている者もいれば楽し気に騎士へ応援している者もいる。
 女性陣の多くは残念なプロポーズと文句を言っていたりする。
 その中でも多分プロポーズされたであろうフィオよりも一番驚いているのはマックス。

 マックスはフィオの正体は勿論だが実はジェンセンの事も知っていたのである。
 当のジェンセンはマックスを一軍医だったと言う認識しかなく、彼がラファエルの親友である事実までは知らない。

 この場合知られない様に振る舞っていたと言った方が正しい。
 その方がマックスにとって色々と動きやすい。

 話は戻りジェンセンのプロポーズした相手がフィオ秘匿されし王妃だったとは⁉
 
 マックスはこの難局をどう切り抜ければいいのかと頭の中をフル回転させた。
 ジェンセンの性格は猪突猛進。
 戦闘時は先陣を切り、切り込み隊長として力を発揮してきた。
 とは言え幾ら実力があろうともだ。

 自国の王妃へ懸想をする何て事はあってはならない。

 譬え今、王の心が王妃にないのだとしてもである。
 いやいや最初からないのだけどね……と言ってそれではいいのではと問われれば答えはNOだ。
 ジェンセンには何としてもフィオを諦めて貰わなければならない。
 だが何か、そう問題なく解決出来る法はないのだろうか……とマックスは頭の中を忙しく考え巡らせながらもう一方の当事者であるフィオを見る。

 きっとこの様な状況は初めてだろう。
 漸く社会生活も普通に過ごせるようにもなったばかりである。
 今回の件はフィオにとって衝撃以外何物でもない。
 とりあえず今日は時間を切り上げ、ジェンセンに見つからない様にそっと離宮へ帰さなければいけない。
 勿論影は人数を増やしておかねばいけないだろう。
 兎に角この件はラファエルとあの姫将軍たる恐ろしいアナベルへ報告し、至急打開策を考えなければ……?


「――――て下さい」
「へ!?」

 フィオが何かジェンセンに向かって何か話している。
 最初は上手く聞き取れなかった。
 外野が煩くて……だけどその外野もフィオが口を開き始めると水を打った様に静かになった。

「手を離して下さい。先程よりあなたに手首を掴まれて手先が痺れて仕方がないのです。それにいきなり人の腕を掴むなんて乱暴過ぎます。今は診療中なのです。診療所に関係のない方は離れて下さい。他の患者さんへ迷惑ですよ」


 素っ気ない。
 余りのフィオの塩対応ぶりにジェンセンの表情かおは次第に赤から青へと変わり、周りの患者さんより憐みの言葉が掛けられる。
 マックスはと言えば少しほっとしたのも束の間フィオより仕事をサボるなと注意され、何をする事もなくただ慌てただけでそのまま診察室へ逆戻りし、診察を再開する。

 そしてマックスだけでなくその場で固まっていたジェンセンにもフィオは容赦をしなかった。

「あなたもです。ここは診療所なのですから病気や怪我をされている方が来られる所です。看た限りお元気そうなので御用のない方はどうぞ早々にお引き取り下さい」

 フィオは何事もなかったかの様に何時も通り仕事をし始めた。
 暫くすると診療所は何時もの賑わいを見せていた。
 何時の間にか先程まで思い切り項垂れていたジェンセンは静かに姿を消していた。
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