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第二章 過去から現代へ向かって ~過去二年半前
18 計画の履行
しおりを挟む確かにラファエルの言う通り、彼はエヴァを気にかけてはいても触れ合うどころかあの日以降一言も言葉を交わしてはいない。
だがマックスは一縷の望みを賭けて願う。
エヴァンジェリンならばラファエルの凍った心を溶かしてくれるのではないだろうか。
「それはそうと陛下、王妃様は大変素晴らしい女性へとご成長されておいでですよ」
「そうか。では国へ戻れば直ぐに嫁の貰い手が見つかるであろう」
「まぁそれもそう……ですね」
駄目だ。
これ以上強く推してはラファエルが意地になってしまうだけだと悟ったマックスは『ご武運を……』と告げて部屋を後にした。
集合場所へと向かう道すがらマックスは独り言ちた。
シャロンは、いやアーロンはラファエルとエヴァンジェリン二人の運命を余りにも弄び過ぎだと。
脱出当日密かに放っていた間者より翌朝無事にエヴァンジェリンの一行が王都を出たとラファエルへ報告がなされた。
ラファエルはその報告を以って一斉掃討の号令をかけた。
王宮内に潜み侍女や侍従として潜り込んでいたシャロンの間者達はその号令が掛かると同時に、以前より彼らをマークしてい者達の手により密やかに息の根が止められた。
当然死体だけではない。
流れ出たであろう血の一滴も残さず彼らは文字通りこの世より消されたのである。
非情に思うかもしれない。
だがシャロンの間者として潜入した彼らを生かして捕らえ、拷問したとしても彼らは洗脳された人間達。
潜入先で捕まる=自死を以って沈黙とする。
配下の命に価値はない。
それがシャロンと言う国の考え方だ。
ラファエル自身その過去何度も見てきたからこそ彼らを助けよう等とは考えない。
相手へ情が湧き助けようとすればこちら側が殺される。
これまでそうして過去に多くの被害を受けたのだ。
一つの命も無駄にしない為にはこうして消すのが一番なのだと、長年の経験によりラファエル達はそう判断した。
また騎士の中にも数名暗殺集団の一部が潜り込んでいたのだが、これも本日行われる宴の客として目的地へ向かう道中にラファエルの指示によって森の中で密かに殺害された。
当然騎士団所属の者だけあり死亡届は必要となるがそこは特に問題はない。
移動時による事故死。
そう暗殺者へ名誉ある殉死等決して与えはしない。
そうして最後に貴族達である。
自国を裏切り敵国へ情報や物資を融通し甘い汁を飲み続けた獣以下の傲慢なる存在。
また何れの貴族達も罪状を突き付けられたのだが、自分達よりも格下の騎士達へ頭を下げ恭順の意志を示す者はいなかった。
罪状を告げても知らぬ存ぜぬで突っぱねるがそれぞれに証拠は事前に抑えられており、結果言葉だけの上っ面な犯行だけ。
それでも遂には最後の抵抗ともいう様に、暫くすると下手に出て命乞いをし始める。
貴族平民関係なく皆命は大事らしい。
ある貴族は自分の娘をラファエルの側妃いや、愛妾にでも差し出すと訴える者。
またシャロンという真黒な裏社会で稼いだ汚い金銀財宝をラファエルや騎士達へ賄賂として差し出すと言ってのける、実にふざけた事を言う者もいた。
その状況を水晶魔鏡で全て見ていたラファエルにしてみれば愛妾や側妃等持つ気もないし金銀財宝……?
爵位没収に家名断絶だと申し渡していると言うのにだ。
差し出せるもの全ては国庫へ没収した後我が国の復興の為に使うに決まっているだろう……と、その場で家族諸共へ処刑を言い渡した。
貴族達の中には幼い子供も勿論何人もいた。
だがその幼子数名の命と国民全ての安全を比べれば自然と答えは出てくるというもの。
確かに後味のいいものではない。
しかしそれが王として、国を護る者の覚悟である。
ラファエルは十五年前、まだ王ではなかったがその時に覚悟を決めたのだ。
自分の代でこの悪の循環へ完全に終止符を打つと!!
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