【第一部完結】忘れられた王妃様は真実の愛?いいえ幸せを探すのです

Hinaki

文字の大きさ
上 下
32 / 122
第二章  過去から現代へ向かって ~過去二年半前

10  何故そこで王妃の名が出るの? Sideエヴァ

しおりを挟む


 結果は予想通り、そう一身上……ではマックスは納得しなかった。
 意外とマックスしつこい?


「それは仕方ないでしょ。何と言っても君は今やこの診療所ではなくてはならない人となってしまったのだからね。先ず来週明けに僕は患者さん達から責められるからね。それに週明けのあの殺人的な忙しさを君はに全て押し付けてしまうのだよ。忙しい上に大好きなフィオの姿がなければきっといや、絶対に暴動が勃発する」

「そんな大袈裟な……」
「大袈裟ではないよ。ファン心理を甘く見てはいけない。なのに君は良いよね。そんな理由で僕達の前より逃げてしまうのだからね」

「……マックス」

 確かにマックスの言う通り週明けの月曜日は何時も殺人級に忙しい。
 二人いて何とか診療所を回しているのも事実。
 行き成り退職するからと仕事を放り投げようとしているのは外の誰でもない私。

 では何と言えばいい?
 実はこの国の紙切れだけの忘れられた王妃で、何も国の事も知らない、また知らされてもいない存在価値すらない人質だと言えばいいの?

 私と言う存在の所為で故国ライアーンはシャロンと手を組まざるを得なかった。
 その結果ルガートと開戦されこの国は勝利は納めたけれどもシャロン連合軍によって失われた命、若しくは傷ついた兵士も多くいる筈。
 どの場所を攻め込んだのかまでは私は知らされてはいない。
 場所によってはルガートの国民にも戦禍を被ったのかもしれない。

 考えれば本当にキリがない。
 
 あの頃は幼過ぎて私は何も出来なかった。
 でも今は違う。
 私は自分の命以上に私に尽くしてくれたアナベルを護りたい!!
 
 離宮にさえいれば穏やかに生きて行けると思ってもいたわ。
 でも現実はまだこの国の者達の心の中に戦争への遺恨が根強く残っている事に気づかされてしまったの。
 だからこの国にはもう留まる事は出来ない。
 私はアナベルを護ると決めたのだから……。





「……実はし、親戚の叔母の具合が、あぁ病気ではないのですがもうかなり高齢で……ひ、一人暮らしも、も、問題ではないかとアナ、あの、姉と相談して向こうで一緒に暮らす事になったのです」

 咄嗟に出た嘘。
 真実を告げる事は出来ない。
 でもそれではマックスは納得しない。
 だから……とは言え中々に苦しいいい訳なのは自分でも自覚しているわ。
 しかしこの嘘を吐き通すしか道はない。

「ふーん、で、何処まで行くの?」

 マックスは綺麗な青い瞳を細めじーっと私を凝視している。
 まるで尋問にでもあっているかと思うのはもしかしなくとも気の所為?
 

「え……と、ルガートとシャロンの国境近く、です」

 幾ら嘘が苦手でも素直に南へ行く何て、そんなお馬鹿な回答は私でもしないわよ。
 一介の街の医師に何が出来るという訳でもないけれど用心に越した事はない。

 ただこれ以上の詰問はされたくはない。
 ボロを出さない為にもここは早々に帰る必要があるわね。
 私は何食わぬ様子……精一杯冷静を装いながら食事の後始末をし始める。


「僕はね、フィオが先日の捕りものの一件が理由ではないかと思っているんだ。うん、これは別に聞き流してくれても構わないよ」

「…………」

「この国は建国してまだ歴史の浅い国なんだ。でもねその分この百年もの間戦争の絶えない、実に血みどろの時代でもあるんだよ。シャロンより独立して以来実際の所敵はシャロンだけではなかったしね。このルガートを取り巻く大小様々な国々と何時も争いが絶えなかったし、この王都へも何度か敵が攻め込んできた事もある。当然他国からの間者も沢山侵入していたよ。まぁ厳密に言えば今現在も国内に潜んでる筈だよ。そんな中北方の隣国ライアーンだけはずっと中立を保っていたのに今から八年前、そのライアーンにも裏切られた……かな?」

「――――っっ⁉」

「今この国は漸く表面上だけれど戦争を終える事が出来たんだよ。それは今の陛下の力によるところが大きいと僕は思っている。だけど復興はまだ始まったばかり。そして復興はまだ何年掛るかもわからない。僕も含め先日の騎士達やこの国の人間は皆他国者よそものに関して疑心暗鬼の目で見る者が多い。その点に関して僕は反省している。フィオに先日言われた事をね。君に何時も命の尊さを教えていたのは他の誰でもない僕なのに、その僕が一瞬とは言え自分を見失っていた事実が本当に情けないと思ったよ。だからもしだ。それが今回の理由ならばフィオには辞めて貰いたくはない。フィオの様な素晴らしい助手がいてくれないと僕はまた道をたがえないとも限らない。それに――――


 えっ!?
 
 何故ここにの話が出てくるの⁉
 まさかバレてはいません……よね?
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

7回目の婚約破棄を成し遂げたい悪女殿下は、天才公爵令息に溺愛されるとは思わない

結田龍
恋愛
「君との婚約を破棄する!」と六人目の婚約者に言われた瞬間、クリスティーナは婚約破棄の成就に思わず笑みが零れそうになった。 ヴィクトール帝国の皇女クリスティーナは、皇太子派の大きな秘密である自身の記憶喪失を隠すために、これまで国外の王族と婚約してきたが、六回婚約して六回婚約破棄をしてきた。 悪女の評判が立っていたが、戦空艇団の第三師団師団長の肩書のある彼女は生涯結婚する気はない。 それなのに兄であり皇太子のレオンハルトによって、七回目の婚約を帝国の公爵令息と結ばされてしまう。 公爵令息は世界で初めて戦空艇を開発した天才機械士シキ・ザートツェントル。けれど彼は腹黒で厄介で、さらには第三師団の副官に着任してきた。 結婚する気がないクリスティーナは七回目の婚約破棄を目指すのだが、なぜか甘い態度で接してくる上、どうやら過去の記憶にも関わっているようで……。 毎日更新、ハッピーエンドです。完結まで執筆済み。 恋愛小説大賞にエントリーしました。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません

ゆうき
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。 そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。 婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。 どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。 実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。 それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。 これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。 ☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する

影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。 ※残酷な描写は予告なく出てきます。 ※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。 ※106話完結。

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。

112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。 エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。 庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──

居場所を奪われ続けた私はどこに行けばいいのでしょうか?

gacchi
恋愛
桃色の髪と赤い目を持って生まれたリゼットは、なぜか母親から嫌われている。 みっともない色だと叱られないように、五歳からは黒いカツラと目の色を隠す眼鏡をして、なるべく会わないようにして過ごしていた。 黒髪黒目は闇属性だと誤解され、そのせいで妹たちにも見下されていたが、母親に怒鳴られるよりはましだと思っていた。 十歳になった頃、三姉妹しかいない伯爵家を継ぐのは長女のリゼットだと父親から言われ、王都で勉強することになる。 家族から必要だと認められたいリゼットは領地を継ぐための仕事を覚え、伯爵令息のダミアンと婚約もしたのだが…。 奪われ続けても負けないリゼットを認めてくれる人が現れた一方で、奪うことしかしてこなかった者にはそれ相当の未来が待っていた。

処理中です...