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第二章 過去から現代へ向かって ~過去二年半前
9 最後の晩餐ならぬ午餐 Sideエヴァ
しおりを挟む「遅くなって悪いね。待たせ過ぎたかな?」
「いいえ大丈夫ですよマックス」
「では食事にしようか」
「はい」
全部仕事が終えた頃にマックスは何時もの様に花束とケーキの箱を抱えて帰宅した。
それから私達にとって最後の晩餐ならぬ午餐が始まったの。
少なくとも私はそういう気持ち……。
何も正式な午餐という訳ではない。
今の私は平民の娘フィオであり王族のエヴァンジェリンではない。
何時もと同じ昼食。
ただ私の心の中でそう思っているだけ……。
そうして常よりも贅沢な昼食を終え私達は今、食後のお茶をしている。
何時もならばとても楽しい時間、でもそれも今日で終わり。
最後だから笑顔で終わらせるというものが礼儀よね。
だから私は出来るだけ今この時間を楽しんでいる。
マックスにもそれが通じたのか、この一週間のぎこちなかった空気が幾分かましになっている……と思う。
「はいこれはフィオ今月のお給料とそして今月も頑張ってくれたからご褒美のケーキとお花だよ」
「有難う御座いますマックス。そして今まで本当に有難う御座いました」
私は彼よりケーキの箱と可愛い黄色の小さな薔薇の花束とお給金を受け取ったわ。
これが最後かと思えば少し……いいえ、かなり寂しいものね。
「ねぇフィオ、一体どうして急にここを辞めたいのか、もうそろそろ理由を言ってくれてもいいと思う。それに取り消しは何時でも受け付けるからね」
人懐っこい顔で彼はさり気なく訊いてくる。
然もちゃんと帰る場所まで用意していると、その気持ちがとても有り難かった。
本当にマックスはどうしてこんなにも優しいのかしら。
余りの心遣いについほろりと真実を告げてしまいそう……って駄目よ!!
どんなに優しくても真実は絶対に告げてはいけない。
もしマックスが知れば彼まで巻き込んでしまうもの。
もうこれ以上私の為に他人を巻き込んではいけない!!
心ならずもアナベルを巻き込んでしまったのはまだ私が幼かったから。
そして私の為に故国の民達は一時命の危機にも晒してしまった。
しっかりしなさいエヴァンジェリン。
貴女はもう15歳になったの。
15歳と言えばもう大人よ。
だからもう自分の為に他人を巻き込む行動をしてはいけない。
とは言え対面に座しているマックスからは並々ならぬオーラが漂ってきているわ。
理由を告げなければここより一歩も引かないってね。
はてさてどうしたものかしら。
真実を語れない以上彼を納得させるだけの嘘を吐かなければいけない?
嘘を吐くのは非常に心苦しい。
それにしても前にも先日も単一身上と伝えたのに、やはり簡単には納得してくれないか。
はぁ……私は天井を見上げゆっくりと深く嘆息する。
そして前を見据えマックスと視線がぶつかった。
「一身上とお伝えした筈では……」
視線を逸らさず私は無駄な足掻きと思いつつも、もう一度そう伝えた。
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