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第二章 過去から現代へ向かって ~過去二年半前
1 本当に知らない? Sideエヴァ
しおりを挟む素敵な第一回目のお給料日より時は駆け足で過ぎていく。
気づけば勤め始めて半年が経過していたわ。
毎日が本当に楽しいの。
月、水、金曜日は診療所で働き、火、木、土曜日は仕事の帰りに購入した食材で料理の下拵えや菜園の手入れ等をして過ごしている。
そして日曜日はアナベルと二人一緒にお休みの日。
アナベルと共に過ごせる貴重な時間。
一緒に家事をし終われば我が家唯一の贅沢品でもある紅茶と自家製クッキーで、この一週間にお互いについてを話し合う大切な時間。
また報告会が終われば明るい未来についてどの国へ逃げて行くのか、旅費や交通機関等をどう調べるのかを話し合う。
残り二年半となった夢の自由よ。
話題が尽きる事なんてないわね。
勿論その合間に半ば強制的に行われる体術の稽古は今も現在進行形で行われている。
アナベルってばそちら方面に関して少しも手加減をしてくれないの。
だけど実際問題として私はどうやら体術の才能には恵まれていないらしい。
何故なら理由は簡単。
私はアナベルが匙を投げ出したくなるくらいの運動音痴だからよ。
私も頑張ってはいるの。
運動は苦手だけれどアナベルが丁寧に教えてくれるのですもの。
少しは成長した姿を見て貰いたい。
頑張っている証拠に身体中至る所へ青痣が出来るのだけれど、少しも体術が習得出来ないというのはもう天才としか言いようがない。
そうして週明けの月曜日、何時もの様に仕事帰りに市場で買い物をしていると、通りにある酒場の前で先生の患者さんのアルノーさんとバヌロさんと言う愉快なジジイ様達と出会ったわ。
向こうも私に気が付いたらしく、ほろ酔い加減で紅色に頬を染めながら陽気な感じで声を掛けてきたの。
「お、フィオちゃんじゃねぇか?おーいフィオちゃーん」
「あらどうしたのですか?お二人共まだお日様が高い時間から酔っていらしているのですか?」
「いいのいいの。今日はいいんだよ」
一体何が良いのだか、この酔っ払いジジイども!!
あら、下品な物言いになってしまったわほほ……。
とは言え折角処方された鎮痛剤の効き目が弱くなるのに、本当に一体何が良いのか私にはわからない。
それでも二人の陽気なジジイ様達は楽しそうにお酒を飲んでいた。
「いや~平和はいい!! ホントーに平和ってもんはいいねぇ」
「あぁ平和が一番だな!!」
平和が一体どうしたのかしら?
そう言えば少なくとも私が働きに出た頃よりこの国で戦の話は聞いてないわね。
怪訝そうにしている私へアルノーさん達は実に嬉しそうに教えてくれた。
そう二年前の今日ルガートは漸く全ての戦争が終結したのだと言う。
争っていた国とは同盟を結んだり中には属国となった国もあるのだとか。
だからなのね。
二人が今と言う日を心から喜んでいるのは……。
また二人だけでなく周りの人達も何処か笑顔に満ち溢れている。
皆で平和な日常に幸せを感じている。
人質同然で嫁いできた時もずっと戦争は続いていたわ。
紙切れ上の、肩書だけとはいえ王妃である私は何時戦争が終結したのかも知らされなかったし知らなかった。
その事実にほんの少し胸がつきんと痛い。
「んーいやだけどなぁ。やっと平和になったんだしそろそろ王様にも嫁さん迎えてもらわねぇといけないよな」
「あぁそうだな。だけど――――」
ん?
今なんて?
まさかですけれどもしかして?
陛下七年半前よりは既婚者ですけど……って、本当に国民の誰もが肩書だけの王妃がいるって事実を知らないの⁉
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