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第一章 過去から現在へ向かって ~十年前より三年前
12 奇跡 Sideエヴァ
しおりを挟む「いや~悪かったね、色々と手伝って貰って」
「い、いえ私は何も……」
あのヨレヨレな白衣を纏う優男風なイケメン医師の名はマックス。
あの後私は苦しんでいた女性、ルシンダの妹に間違われ……って彼女と顔の造りも違えば、髪の色も全く違うのだけれどね。
それでも周囲の人達の波に流される様にあれよあれよという感じでここ、マックス先生の診療所兼自宅へと連れて来られてしまった。
私はそのままマックス先生の適切な指示の下お湯を沸かしたり清潔な布を用意をする。
今まで私は赤ちゃんと言う存在がどの様にして生まれるかなんて知らなかったわ。
だからあの場所から赤ちゃんが出てきた瞬間吃驚し過ぎて腰を抜かし掛けてしまったわ。
でも同時に誕生した赤ちゃんの第一声を聞いて、手足をぎゅっと動かしているのを見て心か震えるくらいに感動したの。
生命の神秘を身近で感じたというのかしら。
勿論生まれた赤ちゃんとルシンダさんも無事にお産を終えたわよ。
マックス先生のお話では安全なお産は珍しいらしい。
そうよね。
一つの生命と言う奇跡を生み出すのだもの。
奇跡はそう簡単に生み出されないって事なのかもしれない。
奇跡の塊である赤ちゃんも然る事ながら、お産と闘うお母さんはそれこそ命懸けだもの。
きっとお母様の私を産んで下さった際は命懸けだったのね。
私は心の中でそっともう会う事のないだろうお母様へ感謝をしたわ。
あぁでも生まれたての赤ちゃんは何て可愛らしいの。
私も何時か赤ちゃんが欲しいかも……と思うけれどよ。
とは言え目の前でお産を見た後では少し怖い。
だがそんな私へそれを凌駕する程の恐怖が次の瞬間待ち構えていたとはこの時点の私はまだ気づいてはいなかった。
その恐怖に晒されるのはたった数分後だなんてね。
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