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第2章 スランプ、そして、輝き放つ。
Round7 呪い発動
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インディ500王者として迎えた、デトロイトGP。俺はここから「呪い」がかかってる事なんて知るはずも無かったし、知る由もなかった。その「呪い」というのは、初日から起きていた。マジで勘弁して欲しかった。初日は、なんと俺のマシンにトラブルが頻発して、まともに走れたものでは無かった。そのトラブルというのは、走行中に起きた。普段ならエンジン音が聞こえるのだが、その時に「バンッ!」という何かが爆発する様な音が聞こえた。俺も何が何だかよく分からなかった。ひとまずマシンを安全地帯に止めて脱出する事に。でも走行中に、なんか白い煙が上がってた様な気がして、もしかしてと思ってたらその通りだった。なんと交換したばかりのエンジンがブローしていた。即リペアして望んだ2日目こそ、まともに走れる事が出来てホッとしていたのも束の間だった。予選では、トラフィックに引っかかってしまい、思う様にタイムが伸びず、最初のセッションで敗退するという醜態を晒してしまった。美海の方はノントラブルで乗り切ってるとの事で、本人もルンルン気分だった。そして決勝では、もうフラストレーションが溜まりに溜まっていた。そのおかげかは知らないが、怒りのファステストラップを連発していた。これでもマシンには、トラブルが出ていた。そして最終ラップの頃には、思いもよらない事態が起きた。なんとパワステが完全にダメになって、昨年の状態で走る事を強いられていた。この時の美海との差はもう広がっており、これ以上縮める事は不可能に近い状態だった為、とにかく今の順位をキープして完走することに徹して、そのままフィニッシュ。結果は2位と、何とか連続表彰台記録は伸ばせたものの、個人的にはストレスが溜まったレースウィークだった。交換日記の方にもコースの方にはボールペンで「初日は、ここで止まった。」とラインを引いて書いた。もう1つの方には「このラウンドは何もかもが噛み合わなかった。次こそは。な…泣いてなんかないからね!」と書くと、美海は「ひー君先輩もこういう一面あるんだと初めて知る事が出来ました。あの時、悔し涙を流してるのを初めて見ました。でも終わった時に涙を堪えて、私に優勝おめでとうと言ってくれてありがとう。」と書いてくれた。この呪いは留まる事を知らなかった。所謂「スランプ」の始まりであった。俺は、これはまだ気付かずにいるのだった。そしてこれに長い事もがき苦しむのだった。まるで何かに取り憑かれてるかの様に。
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