Verizon,NTT-Data IndyCar series extreme Speed

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第2章 スランプ、そして、輝き放つ。

王者の翌日

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遂にインディ500を制した俺は、この日から大忙しだ。まずは朝イチで、皆大好きナスダックの株式取引市場で取引開始のチャイムを鳴らしたその後に、「王者の証」とも言える「ボルグワーナートロフィー」に刻まれる「自分の顔」を彫刻師さんにやってもらう為に、その彫刻師さんがいる所まで行って顔を彫ってもらった。そして次の日は、何と誰しもが憧れる「夢の舞台」である、MLBの試合の始球式に招待された。初めてあのマウンド上に立ったけど、凄いね。観客の熱量が違い過ぎる。そして、思いっきり全力で球を投げると観客席からもベンチからも大歓声があがった。その日は、「インディ500の王者」としての「スピーチ」がある為、その会場に向かった。遂にスピーチが始まった。俺は、まず開口一番に「今日ここに居る、第103回インディアナポリス500マイルを全力で戦った32名のドライバーに感謝と敬意を表したいです。俺と一緒に走ってくれてありがとう!!」と言うと会場中から拍手喝采。そして、「今回の勝利は、普段のレースとは違う光景を見れて、今でも忘れられない瞬間になってます。初めて挑戦した、昨年の第102回大会は、あと一歩の所で、栄光の座を取り逃してしまって、内心完走出来てホッとした反面、凄く悔しかったのを凄く覚えてます。確か俺は、あの時パワーにサムズアップした様な記憶があります。今年はラスト1周、その1周がとんでもなく長く感じたなと思ってます。ヘルメット越しから見えた光景は、今でも鮮明に覚えてます。そして、ゴールラインを通過した時には、もう終わったのか!?もう終わったのか!?と聞き返すと、ボビーが「もう終わったよ。お前が…勝ったんだよ!!このレース!!お前が今年のインディ500を制覇したんだ!!歴史に名を刻んだんだよ!!ヒカル!!」と返してくれて、俺はこの時、ゾーンに入ってたので、自分が勝ったことすら知らないまま、美海と星奈と一緒にゴールしてました(笑)。するとボビーが「さっきも言ったけど、今年のインディ500の勝者は、ヒカルお前だよ!お前が勝ったんだよ!」と言ってきて一瞬耳を疑いましたが、どうやら本当にトップでゴールしてたらしくて、俺はヘルメット越しに泣いてました。この時スポッターを務めてる安田さんにもありがとう!と伝えると、安田さんからも、「おめでとう!輝!!」と来た時には肩の荷が降りた感覚がしました。ブリックヤードに向かってる時、AJのクルー皆も祝福してくれました。フォイトの親父もです。何せ、自分がインディでのキャリアを開始した時の最初のチームでしたからね。ブリックヤードに着いた時には、これちょっと恥ずかしい話なんですけど、エンストして焦ってました(笑)。そして、マシンから降りた俺は、手渡されたミルクを飲んでから、思いっきり被りました。今日、ここに居る32名の中で最も感謝と敬意を表したいドライバーが1人居ます。そのドライバーの名前は佐藤 美海選手。彼女は、俺の後輩でもあり、ルーキーでありながら、頼れるチームメイトでもあります。今回は、俺のバックアップ役を嫌な顔一つせずに、あのパンケーキ屋でパンケーキを食べながら引き受けてくれた事に感謝と敬意を表したいです。でも一時的にラップリーダーになった時、物怖じせずに走ってる姿を見た時は、グッと来るものがありました。最後は、美海と星奈で3人揃ってランデブーフィニッシュした時は、もう泣いてました。実はあの時、かなり精神的にもアクセルを緩めることが出来ない状態だったんですけど、何故か緩めてました。でも、全て終わった後に俺は、美海選手と星奈選手に、ありがとうと伝えましたが、言葉では表しきれない感謝の気持ちでいっぱいでした。美海選手本人が一番悔しいはずなのに、涙ひとつ見せず、初のインディ500を思いっきり楽しんでたみたいで良かったです。あとこれは、まだ皆に言ってなかったけど、俺は、整備士の資格とか持ってるのですが、レース後で本来ならヘトヘトなはずですが、ご自慢の「バカ体力」を武器に、HPDの皆とエンジンを分解してみたら、4番シリンダーあたりに小さいヒビが見つかって、HPDの皆からは、「この程度で収まって良かったな。これがあと数ミリ行ってたら…」なんて言う話もしてました。これが最後になりますが、今回の勝利は、俺一人で掴み取った物ではありません。RLLRのメンバー皆で掴み取った勝利です。ボビー、マイク、チェイス、ルーカス、デビッド、安田さん、ロンさん、美海、HPD、メインスポンサーのブシロード、パイオニア、カシオ、デンソー、アサヒ飲料の皆で掴み取った勝利です。そして、ここに居る、俺を除く32名のドライバー皆が第103回インディアナポリス500マイルレースの勝者だと俺は思ってます!!以上で俺のスピーチを終わります!ご清聴ありがとうございました!!」と言うと、会場中から拍手喝采が起きた。受け取った賞金もかなりの額だった。日本円にして億単位相当の金額だった。俺は、「このお金の半分は、いじめ等で学校に行けず苦しんでる子供たちのために寄付しようと思います。これは人情でもなんでもありません。今回のインディ500のレースウィークの時から決めてた事です。俺自身小さい時や中学時代にいじめを経験した関係上、どうしても、こういった事で困ってる子供達を放っておけないんです。レースウィークの時もそうでした。一番の決め手となったのが、1人のファンの子が、俺のサインを貰った後に、「僕は今、学校でいじめられていて、学校に行けないんだ…本当はもっともっと勉強して、クシマ選手みたいなレーサーになりたいって思ってるんだけど…皆がその夢をバカにしてくるんだ。どうせ無理だって。でも諦めたくないんだ!」その一声に俺は、こう言いました。じゃあ完走したら、そのお金を君と同じ境遇に置かれてる皆の為に使う事にするよ。もし勝ったら…君をあのブリックヤードに招待するよ!約束する!皆の前で証明してやろうぜ!僕は、皆がやろうとしてる夢の何倍、何十倍、何百倍、何千倍もデカい夢を叶えようと頑張ってるんだ!ってね。そしたらその子も、「今日は全力でクシマ選手を応援するよ!その為に今日はクシマ選手のナンバー、31の旗を手作りで作って来たんだ!!ここにもサインを書いて欲しいな。」って。俺は、その子と交わした約束を守る為にも、絶対負けられませんでした。きっとその子も今日のパーティーを見てることでしょう。インディ500で勝ってからですが、連日、家族やファン、更には学生時代世話になった先生方や友人からもお祝いのメッセージが届いたりして、とても嬉しい限りです。でも最後、メット越しから見えましたよ。リタイアした皆もファンも他のチームも俺を応援してる姿が。「頑張れ!ヒカル!!」って。あそこまで熱くなれるレースもそうそうありません。やっぱりインディカーって楽しいです!!」と言うと賞賛の声があがった。そしてペースカーランを務めてくれた、アキュラNSXもプレゼントされて、俺は「この車カッコイイから好きなんだよね。ちょっと今、友達とかに自慢の電話してみるよ。とスマホを出して、友達に電話して、もしもし?あのね、ペースカーランを務めてくれたNSXをプレゼントされたみたい。今度機会があったら乗せてやろうか?楽しいと思うぞ~。」と言うと会場中から笑いの声があがったりもした。こうして王者の翌日は終わりを告げた。
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