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縁の下の力持ち、そして、ワイルドカードエントリー。
第26話 MFJ-GPに緊急参戦
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Moto2が終わり、やる事が終わったと思っていた俺は、何か抜けていた事に気付いた。それはスポーツランドSUGOで復活した「MFJ-GP」への参戦だった。それも何とLCRホンダからのエントリーである。実は、Moto2の時にルーチョさんから「ヒカル、噂だとスポーツランドSUGOでMFJ-GPが復活したみたいだけど、参戦する気は無いか?」と提案されて、俺は「是非とも!」と即決で提案を快諾していた。チーム名もまさかのフィリップモリスの電子タバコブランド「iQOS」とのコラボが実現して「LCRホンダ・モリワキ・プリキュア・チームiQOSイルマ」というのでエントリーする事になった。LCRホンダ・イデミツのライダーは当初レギュラーのガミ先輩だったけど、どうしても都合が合わないという事で急遽星奈が抜擢された。対するレプソル・ホンダは、ミルに加えて美海が初のレプソル・ホンダライダーに抜擢された。最終戦も終えた後にマシンや機材達が輸送されて来た。今回エントリーするメンバーのカーナンバーは、普段自分達が使ってるのを継続している。LCRのガレージには、俺の方はキュアスカイのグッズが置いてあったりと結構ワイワイしていた。俺は、レースモードになってモリワキMD213VFへと跨ってライディングスタイルをチェックしていた。約2年ぶりの最高峰クラス実戦の為、色々忘れてる可能性があるからだ。星奈の方は初のRC213Vの為、色々メカさんからレクチャーを受けている。が、あまりにも長ったらしい上に、何か本人もしっくり来てない感じだったので俺が星奈に「なぁに!簡単な事だよ。普段やってる事やりゃいいだけの話。ただRC213Vは触る箇所多いだけ。でもレース中殆ど触ってないボタンとか多かったよ。俺は。ただトラコンの効き具合とかは随時弄った方がいいよ。あとはV4の特性やらに慣れろ!それだけ。」と、かなりシンプルかつ大雑把に教えたなんて言う面も。こうして迎えたMFJ-GP。フリー走行から多くの観客がスポーツランドSUGOに押し寄せた。俺は、我先にとコースインした。実は恥ずかしい話、ここ走った事が無いので手探りスタートなのだ。とにかく走り込んでセッティングを探る事からフリー走行はスタートした。それは星奈も一緒だ。マジでワイルドカード行使して全日本ロードレース選手権のこのラウンド出れば良かったと、すごい今更感全開で走りながら後悔していた。データもかなりの量が集まったので決勝まで苦しむ事は無くなった。予選では、何と今回限りの「復活」を遂げたロッシとの一騎討ちを演じた。結果は、俺がコースレコードを更新してのポールポジションを獲得。コンマ1秒差でロッシが2位という結果になった。3位には星奈が入り、4位に美海が入った。白熱した予選から一夜明けて迎えた決勝。会場には多くのファンが駆けつけた。俺は、後ろにロッシがいるというプレッシャーにも苛まれていた。どうすりゃいいんだと。俺は、何としても勝ちたいという気持ちで満ち溢れていた。スタート1分前のボードが掲示された。観客のボルテージも最高潮に達していた。スタート15秒前になった。シフターを「ガチャッ!」と踏んで1速に入れた。10秒前からローンチコントロール及びホールショットデバイスを起動。シグナルがブラックアウト。その瞬間に勢いよく俺が飛び出してホールショットを獲得した。俺は、集中力を限界まで高めていた。序盤は特に波風立たずに終わったが、中盤から一気に動き出した。美海が初めて戦うロッシに対して猛アタックをしていた。レース前に俺はあれだけ「間違えてもロッシには猛アタックするなよ。全て読まれるからな。」と言ったはずなのに、「いつまでも後ろ走ってる私じゃない!」と言わんばかりの走りを披露。2位に浮上した。ロッシは星奈とのデッドヒートを演じて観客を盛り上げていた。終盤に入ると遂に世界最速の「夫婦喧嘩」が始まった。全日本スペックを駆る俺(MD213VF)vsワークスマシン(MY23)を駆る美海のトップ争いは、最後まで続いた。クロスラインでの攻防と言い、お互いにスーパーバイク世界選手権王者同士がMotoGPマシン乗って本気出すとこういう事になると見せつけていた。そして最後の馬の背コーナーでフルスロットルのまま俺がと思ったら僅差で美海が逆転優勝。3位は2台同時にゴールインして、カメラ判定にまでもつれ込んだ結果、数cm差で星奈が逃げ切った。俺はインタビューで「ヴァレンティーノ・ロッシファンの皆さん!ごめんなさい!」と謝罪から始まってインタビューアの人が「九嶋選手は久しぶりにロッシ選手と戦ったとの事でしたが、どうでしたか?やはり速かったですか?」と聞いてきて「いやぁ速いというより、とにかくプレッシャーヤバかったです。スタート前なんて、「俺を早くこの地獄から解放してくれ!!お願いだ!!」と祈ってたくらいですし。でも、50近いにもかかわらずあの当時の速さ持ってるのは知ってましたが、予選でポールポジション争いした時にコンマ1秒差まで詰めて来た時は、変な汗出ましたね。とにかく表彰台取れて良かったです。」と返した。美海は、「初のワークスチーム、初のワークスマシンを駆っての優勝!!これまでに無い経験が出来て感無量です!レプソル・ホンダの皆さん今回は滅多にないチャンスを私に与えてくれて本当にありがとうございました!!」と喜びを爆発させていた。こうしてMFJ-GPは大盛況で終わった。
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