アドリアンシリーズ

ひまえび

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アドリアンシリーズ第12話……エピソード1……アドルフと2世の死亡

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1385年11月下旬月曜日午後1時…エクダーラーの要塞
 ベンガル王国を首尾よく攻略し、国王シカンダル・シャーとその男系子孫を処刑したアドルフ軍は大いに士気が高まり、戦利品のうち金銭の分配を受けて宴会も大きく盛り上がった。ちょうどその時トゥグルク朝の使者団が現れた。砦の中に収まらないくらいの膨大な数の贈り物を差し出し、親善と同盟の申し入れだと言っている。

 身体検査をしたあと3人だけと面会した。トゥグルク朝国王フィールーズ・シャー・トゥグルクの親書を差し出して恭順の意を示した。属国になるから、命だけは助けてくれという内容だ。とりあえず了承をしておき、宴会となった。

 色々話をするうち、絵画と陶磁器の話になった。アドルフにはちんぷんかんぷんの話で皇子アドルフ2世の独壇場となった。
 中々口の上手い使節でアドルフ2世はすっかり彼の話に惹き込まれてしまい、贈り物の中に中国の珍しい絵画と陶磁器があると聞き、アドルフに是非とも今見たいとねだった。

 やむを得ず部下に持ってこさせてアドルフたちの見ている前で贈り物の箱を開けた。
開けた途端、箱は大爆発し、その場に居た者は全員即死であった。いわゆる自爆テロであった。

 アドルフ軍の幹部はアドルフとアドルフ二世の死体を確かめ、茫然自失状態だ。ビアンカもどうして良いか分からず混乱している。ここに敵が攻め込んできたらアドルフ軍は全滅になる

 大混乱の最中に沈着冷静に事態を把握し、部隊を落ち着かせ、命令を下す者が1人だけいた。アドルフとライサの間の長男ガーリブ14歳である。取り乱すビアンカを落ち着かせ、デリーのトゥグルク朝攻撃命令を出させた。

トゥグルク朝、首都デリー
 全軍に「アドルフもアドルフ2世も重体だが命はとりとめた。今から報復にデリーへ向かうぞ。強盗、略奪、強姦は禁止だが戦利品はすべてお前たちに分配してやる」
と指示し、デリーへと進軍した。ガーリブはビアンカを落ち着かせ、全軍を鼓舞した。

 報復に燃えたガーリブは自らも先頭に立ち、全アドルフ軍を奮い立たせた。全アドルフ軍は死にものぐるいで戦い、ベンガルまで出向いてきていた敵軍を少しづつ追い詰めた。デリー城にまで追い詰められた国王フィールーズ・シャー・トゥグルクは籠城した。

 歴史と伝統のあるデリー城を破壊したくはなかったが、やむを得ずガーリブは大砲を撃ち込み、敵陣営の後宮の女どもを震え上がらせ、原油のたっぷり詰まった布袋を城内に投げ入れた。その後何万本となく打ち込まれた火矢によってデリー城内は火だるまとなり、阿鼻叫喚地獄と化した。

 飛び出してきた後宮の女達は全員捕らえガーリブ14歳の妾とした。降伏してきた国王フィールーズ・シャー・トゥグルクとその男系子孫だけでなく将校たちも許さず皆殺しにした。彼らの妻妾たちや使用人たち及び降伏した兵士たちを全員捕虜にした。

 工兵たちを総動員してデリーの王宮や諸施設を修理すると同時に、アドルフとアドルフ2世の死を公表し、デリー王宮にて大葬儀を行い、1年間の喪に服した。ビアンカを摂政に任命し、政治を司らせた。誰の目にも跡目は明らかであった。

 アドリアンは「ビアンカがアドルフ帝国の摂政を1年間務める。アドルフ帝国の後継者はライサの長男ガーリブである。ガーリブは謹んでこの命令を受けよ」と全員に告げた。ガーリブは正式にアドルフ帝国の皇太子となった。

 母ライサも現れガーリブを祝福した。母ライサはイラン王となり、隠居生活を送っていたが、末っ子ガーリブがアドルフ帝国の皇太子となり、元気を取り戻していた。

 イラン王を長女のルフナに譲り、ガーリブの世話をするつもりである。こちらに来る時にアドリアンの許しを得て、アドリアンとの間に生まれたアフクセンチー男19歳、イーナース18歳女、ガーダー女17歳、アダルベルト男16歳を連れてきていた。ガーリブの補佐をさせるつもりである。

1385年12月上旬月曜日朝7時…デリー王宮
 アドルフとアドルフ2世の葬儀が終り、一段落した時、皇太子ガーリブは次の攻撃を考えていた。喪に服している期間中に攻撃してくるとは誰も思うまい。異母兄弟のアーキル男、カイス男、ガニー男、カラム男、ガーニム男、カーミル男、ガーリー男、カーリム男、カターダ男、カマール男、カミール男11人を1万戸長に任命し、それぞれ1万名の兵士を率いさせた。全軍を率いるのは異父兄弟のアフクセンチー軍司令長官とアダルベルト副軍司令長官である。
次回の攻撃目標は、ヴィジャヤナガル朝「首都ヴィジャヤナガル」とバフマニー朝「首都グルバルガー」である。
 

行政・内政についても考えていた。
 アイダ女、タグリード女、ズカー女、スハー女、スアード女、ズィーナ女、ズバイダ女、バーナ女、ハウラ女、バスマ女、ハフサ女、ハラー女の12名を内政行政官に任命した。イーナース18歳女をクジャラート地方担当内政行政長官に任命し、アイダ女、タグリード女、ズカー女、スハー女、スアード女、ズィーナ女を部下に付けた。
 ガーダー女17歳をマールワー地方担当内政行政長官に任命し、ズバイダ女、バーナ女、ハウラ女、バスマ女、ハフサ女、ハラー女を部下に付けた。
内政面に於いては、マールワー地方……注①とクジャラート地方……注②に力を入れた。
 これらの地域は、豊かで人口も多く、クジャラートはインドはインド西部の海港を支配し、その海港とガンガー流域「ガンジス川流域」を結ぶ貿易路をも支配していた。
 

 クジャラートの海港と海外との貿易は莫大な金銀をもたらし、この地域の支配者は金銀を蓄えていたからである。皇太子ガーリブがグジャラート地方支配を確立しようとしたもう一つの理由は、グジャラート支配によってその軍隊への馬の供給をしっかりと確保できるだろうということにあった。八世紀以来、重要な貿易品は、アラブ産、イラク産、トルコ産の馬で、西インド海港を通じてインドに輸入されていた。
今回はここまでにいたしましょう。
次回をお楽しみに。

注① ……マールワー地方……ウィキペディア
 マールワー (Mālwā、मालवा)は、インド中部、マディヤ・プラデーシュ州南西端一帯の地方名。その範囲は歴史的にも一定しないが、グジャラートの東、ラージプーターナーの南、ボーパールの西、ヴィンディヤ山脈とその北麓に広がるデカン高原の北端部を指す。 標高は400~600mで、北はほぼ北緯23度30分までをいうが、南はナルマダー川の河谷平野を含ませる場合もある。
 
マールワーは、黒色綿花土……注③に覆われた肥沃な農業地帯で、ミレット(雑穀)、豆類、綿花、小麦などの産地であって、ガンジス川中上流域とアラビア海及びデカン高原を結ぶ幹線交通路が走り、特に中世史において重要な役割を果たした。

注② ……クジャラート地方……ウィキペディア 
 グジャラート・スルタン朝は繁栄が続き、インド西海岸のキャンベイ湾を中心に交易でにぎわい、カンベイはマラバール地方の都市カリカットと並んで栄えた。また、王国はインド洋交易に従事する商人の活動を規制、統制することなく、ボーラと呼ばれたムスリム商人やバニヤーと呼ばれたヒンドゥー教徒やジャイナ教徒の商人が積極的に交易に参加し、グジャラート地方の綿布はアラビア海岸の都市や東南アジアに大量に輸出された。
注③……黒色綿花土「レグール」……ウィキペディア
 レグール は、玄武岩が風化してできた土である。間帯土壌のひとつ。保水力が大きいため、農業に適している。特に黒色土で肥沃なことから綿花の栽培に適している。その特徴から黒色綿花土と呼ばれることもある。この土壌の分布域は、熱帯に多い、特にインドのデカン高原が有名。デカン高原では綿花のほかに、落花生も栽培されている。
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