河童ライダー

家紋武範

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死霊博士、恐怖の正体

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 河童マン、木郷もくごうたけしは改造人間である。
 彼を「きゅうり男」に改造し、出荷しようとした『シュッカー』は世界征服を目論む悪の秘密結社である。河童マンは世界の平和のためにシュッカーと戦うのだ!
 ゆけ! 河童マン!


◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 ジャジャーン!

『死霊博士、恐怖の正体』

◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 シュッカー軍団は軍勢では勝っていたものの、日本支部基地に河童マンの侵入を許すという、いわば本土決戦という形となったことに苛立ちを隠せなかった。
 ポテト男爵の亡きあと、日本支部に派遣されたのは死霊博士である。彼は人間や凶悪犯を拐ってきては数多の怪人へと改造した張本人であった。

 その死霊博士は最後の猛攻とばかり、シュッカー軍団を引き連れて街を破壊して高笑いをしていた。

「ふふふふふ、河童マンよ。我がシュッカー軍団の恐ろしさを思いしるがいい」

 泣き叫ぶ人々、笑う死霊博士、あばれるシュッカー軍団。もはや街はパニックだった。このまま世界はシュッカー軍団に征服されてしまうのか? みんなで呼ぼう。せーの。河童マーン!!

「待てィ!!!」

 その声に一同声のほうを見ると、ビルの上に緑色に輝く河童マンが立っていた。

「許さないぞ! 死霊博士!」
「貴様は河童マン! お前たち、かかれ!」
「ベジー!」

 河童マンはビルより飛び上がり、その勢いでシュッカー戦闘員たちに蹴りかかると、戦闘員たちは爆発しながら舞い上がったのだ。あっという間に全滅である。

「あとはお前だけだ。世界征服の野望、いまここで打ち砕く!」
「バカめ、河童マン。ワシをただの老人と侮ったか! 食らえ!」

 その時である! 河童マンの足が土中より這い出た腕に押さえつけられ、身動きが取れない。驚いた河童マンがそちらを見ると、一度倒したはずのくり男が地面から姿を現すではないか!
 それだけではない。先ほど倒した戦闘員たちもムクリと体を起こし、その中央から前に倒した、いもバロンも現れたのだ。

「な、なにぃ!? これは一体?」
「ふふふふ、河童マン。ワシがただ死霊とか幽霊とか心霊系統に詳しいから死霊博士と呼ばれていると思ったようだな。ワシはこうして死んだものを操ることが出来るのだよ。くくく。さぁお前たち! 河童マンを出荷しろ!」

 迫りくるシュッカー軍団! このまま河童マンは倒され、シュッカーの野望通りになってしまうのか!!





「待ちなさい!!」
「なに!?」

 突然の声に死霊博士はそちらに顔を向けると、ビルの屋上に桃の仮面を被ったプロポーションのよい女性が立っていた。それを見て河童マンも叫ぶ!

「桃子!」

 桃子と呼ばれた女性は河童マンに向けて大きく頷いた。続いて死霊博士も叫ぶ。

「貴様はもも女!」

 そう。これは河童マンに以前倒されたもも女であったが、まだ息があったところをおやっさんに助けられ、河童マンとおやっさんにシュッカーの洗脳を解かれ、新たに正義のヒロインとしての改造を受けた。
 もも女こと園田そのだ桃子ももこは新しく生まれ変わったのだった!

「私はもう、もも女じゃない。ピーチレディとして悪と戦う!」

 またもや英語版になったらどうするんだといった名前だが、そもそも『くも男』とか『こうもり男』とか英語にしたらアメコミヒーローの名前になっちゃうもんね。だからいいんです。

「ピチピチピーチ!!」

 でました。ピーチレディの魅惑の術。男たちはこれにはひとたまりもない。復活した怪人たちは悶えながら地面に倒れた。
 しかし、死霊博士は倒れない。老人だからもう色恋には平気なのだ!
 ピーチレディは河童マンへと近づいた。

「もう大丈夫なのか? 桃子」
「平気よ。この通り。いたたたたた」

 河童マンの問いかけにピーチレディはガッツポーズをとったが、まだ前の戦いの傷が癒えていないようで身をよじった。
 河童マンは死霊博士を指さして叫ぶ。

「さあ桃子! 一緒に死霊博士を倒すぞ!」
「わかったわ! 河童ライダー!!」

 その言葉に死霊博士はたじろぐ。

「なに!? 河童ライダーだと? もうヤツに乗り物はないのでは!?」

 そう言われて河童ライダーは赤くなって照れた。

 昔の歓楽街、吉原では女性を馬に例えた。理由は男を乗せるから当時の乗り物「馬」と言われたのである。つまり河童ライダーはピーチレディとねんごろになったのである!
 下品な説明だと見ているチビッ子は思うかもしれないが、私は台本を読んでいるだけ。私のせいじゃないのである!

 それを、聞いて死霊博士は、己のマントを翻すとダイコン頭の怪人へと変貌した!

「河童ライダー! 今度はダイコンデビルが相手だ!」
「いくぞ! ダイコンデビル!」

 河童ライダーが攻撃をしかけるものの、ダイコンデビルもさるもの。こうきたのをこうかわして、スッときたのをサッとかわす。
 だがダイコンデビルに相対するのは河童ライダーだけではなかった!

「ピーチキック!」

 ピーチキックの横蹴りにダイコンデビルは体勢を崩す。

「今だ! 河童ライダーきりもみシュート!!」

 河童ライダーはダイコンデビルに組みついて大空へ飛び上がる! そのままダイコンデビルの脳天を地上へと向けて叩きつけた!
 ダイコンデビルは河童ライダーへ恨み言を言って大爆発! 見事河童ライダーとピーチレディはシュッカーに勝利したのだ!

 河童ライダーとピーチレディは変身を解いて駆け寄り抱き合う。そこに赤々とパトランプを灯したパトカーが現れ中から一人の女性が泣きながら降りてきた。

「桃子!」
「……お母さん!」

 そう。これは桃子の母である。女で一つで育て上げた桃子をシュッカーの手で拐われ改造手術をされてしまった。
 彼女は桃子を探し、捜索願を出していた。それがややあって本日願いが叶ったのである。探し求め何度も諦めかけた娘が今、目の前にいる。涙なしには語れない。河童ライダーこと木郷孟も涙を流したが、その手には手錠がかけられていた。

「え? ちょ!」
「誘拐容疑で逮捕する!」

 なんと! 木郷孟は桃子を誘拐した容疑で捕まってしまったのだ。桃子は涙を流して母親と抱き合っているのでこちらが見えていない。

「桃子!」
「お母さん! 私(シュッカーに誘拐され改造されて)怖かった!」

 そのセリフを聞いて手錠をかけたトレンチコート姿の警部は確信した。そこに野次馬が話しかける。

「刑事さん、何かあったんですか?」
「いやぁちょっとした誘拐事件ですよ。お騒がせしました」
「まぁ若い人は本当に恐ろしい……」

 残念! 違うという木郷孟を引き連れパトカーのドアは無情に閉まる。
 あわれ、河童ライダー。でも正義のために今後ともよろしくお願いします。
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