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アイシテル ──ふれんず
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小6の時、女友だちと廊下で話してるとき。幼稚園からの幼なじみの文也にスカートめくられた。
ムカついたから追いかけてビンタしてやった。
中2の時にクレクレ言うからバレンタインにチョコ作ってやったら、サンキューな。ってそれだけ。私はアンタの家政婦じゃないんだけど?
文也のやつ、何様なわけ?
高2の冬休み、一線を越えた。
ヤツは何の前触れもなく一緒にコタツで勉強していた私を押し倒したのだ。
宿題一緒にしようと誘われて彼の家に行った。
なんの期待もなかったのかと聞かれればウソになる。姉に貰った小さな飾りのついたネックレスをして覚え立ての化粧をしていった。
初めてのキスの余韻に浸っているうちに全てが通り過ぎたという感じだ。
文也は勝手に始めて勝手に終わらせ、ただ「悪ィ……」って謝っただけ。
それだけだった。
それって、まだ幼なじみなだけなの?
友だち? 恋人になったわけ?
馬鹿にしてる。
親が帰ってくるからってせかされてマフラーを巻くヒマも与えずに外に押し出したアイツ。
それからなにも連絡はなかった。
私だけ意味も分からず悶々としてるだけ。
もやもやを抱えたまま街に出てもモヤモヤはモヤモヤなだけ。
ふいに風で飛ばされた帽子。
追いかけた先でキャッチしてたのはアイツ。文也。
「……よーう」
なにがよ。ムカつく。ツケてたのかよ。勝手なままで勝手に視界に入ってくる。
「よ!」
ムカついたから気にしない振りの大きな声で挨拶して帽子だけふん捕まえて被って逃げた。
どうせ友だちで同級生でしょ。
都合のいい女になんてなりたくない。
文也なんて。私はなんとも思ってないんだから。
高校卒業間近に、免許取ったからドライブに行こうって誘われた。つーか、私に彼がいたらどうすんだっつーの。小学校の友だち感覚がエラいムカついた。一度は断ったけどディスティニーランドのパスがあるっていうから仕方なくついてったら、夕方からのパスで、パレードと花火見ただけ。乗り物に乗せる気はなく、混むからという理由でサッサと駐車場に連れて来られて車の中でキス。
突然のキスでパニクって、よく憶えてないけどいつの間にかディスティニーパートナーホテルにチェックインされてた。
で、お決まりの都合のいい女。
まったくワケが分からない。
思い出したか、忘れないうち。
私の視界に入ってきて、どこかに連れて行く。
こっちに予定があったらどうすんだ?
自分でも休日を空けてるのが悲しい。
わけのわからん観光地。
わけのわからん夜景。
わけのわからん潮風。
勝手気ままなキスに翻弄。
そして都合のいい女。
文也のことなんかよく知らないのに、向こうはこっちのことよく知ってるみたいな。
私ばっかりしゃべってるような。
宇宙人にさらわれて実験されてんのかな?
一方的にコイツの言いなりっつーか、思い通りにされてる感じ。
「好きとも愛してるとも言われたことないんだよ?」
「そんなのお父さんだってそうだよ?」
私は控え室で純白のドレスに身を包みながら母親に言った。
「突然親に挨拶に行くって、私は何にも聞かされてないんだけど」
「じゃあ聞くけどなんであんたここにいるの?」
「分からない。お母さんも結婚しろって言うし」
「アンタねぇ。気持ちがないなら結婚しなくてもいいんだよ。今ならまだ間に合う」
「──いや」
「そらみなさい。小さい頃からずっと一緒にいるくせに当日に変なこと言い出して。お母さん親戚の対応で忙しいんだから」
いや、そういうことじゃない。勝手に文也に振り回されっぱなしなんだよ。ウチの夕食に来てお父さんと酒飲みながら勝手に予定とかあんたらと決めてただけ。私、アイツと付き合ってたの?
アイツは私のこと好きだったわけ?
私はアイツのこと──。
分からない。なんにも分からない。
夢でも見てるみたいだよ。ちくしょう。
披露宴も終わり、友人たちのセッティングした二次会と三次会も終わった。
文也と私は終始にこやかだったと思うよ。みんなに祝福されて。
「絶対二人、結婚すると思ってたー」
「じゃなきゃウソだよねー」
そんなに私たちベッタリだったの?
勝手にコイツが女クラに来て女あさりしてんのかと思ってたよ。そーいや休み時間の後半は私の席に常駐してたけど。
「文也クンみたいなかっこ良くて将来有望な人なんてうらやましいぞ、コイツ」
「でもいつから付き合ってたのぉ?」
それは私が聞きたいわ。
ホテルに帰って明日は新婚旅行で機上の人になるんだけど、思い切って文也に聞いてみた。
「ねぇ。私たちいつから付き合ってたの?」
文也は唖然とした顔をして吹き出した。腹を抱えて笑ってる。ムカつく。
「私! 好きだとか愛してるとか今まで聞いたことないんだけど!?」
腹が立って、思い切りぶちまけた。
泣きながらギャーギャーわめいていたと思う。
文也は呆れてため息を一つ。
「なんだ。そんなことかよ」
彼は5文字の言葉をサラッと言った。
そしてキスをする。
「言わなきゃ分かんねーの? 俺は分かってるけど?」
言わなきゃわかんねーよ。クソ。
「じゃあ可憐はなんで結婚したんだ? ファッションか? トロフィーかよ」
「そりゃあ……」
ムカつく。テメェじゃ今まで言わなかったクセに人にいわせるつもりかよ。
心の中には幸福とか納得とかが必要なんだよ。クソ。まあそりゃあ私にも言えるかも知れねーけどさ。
でもいつから付き合ってたのかなぁ。恋人関係だったんだろう? 謎です。
まぁ今度からキスの前には5文字の言葉を言って貰うことにするわ。
ムカついたから追いかけてビンタしてやった。
中2の時にクレクレ言うからバレンタインにチョコ作ってやったら、サンキューな。ってそれだけ。私はアンタの家政婦じゃないんだけど?
文也のやつ、何様なわけ?
高2の冬休み、一線を越えた。
ヤツは何の前触れもなく一緒にコタツで勉強していた私を押し倒したのだ。
宿題一緒にしようと誘われて彼の家に行った。
なんの期待もなかったのかと聞かれればウソになる。姉に貰った小さな飾りのついたネックレスをして覚え立ての化粧をしていった。
初めてのキスの余韻に浸っているうちに全てが通り過ぎたという感じだ。
文也は勝手に始めて勝手に終わらせ、ただ「悪ィ……」って謝っただけ。
それだけだった。
それって、まだ幼なじみなだけなの?
友だち? 恋人になったわけ?
馬鹿にしてる。
親が帰ってくるからってせかされてマフラーを巻くヒマも与えずに外に押し出したアイツ。
それからなにも連絡はなかった。
私だけ意味も分からず悶々としてるだけ。
もやもやを抱えたまま街に出てもモヤモヤはモヤモヤなだけ。
ふいに風で飛ばされた帽子。
追いかけた先でキャッチしてたのはアイツ。文也。
「……よーう」
なにがよ。ムカつく。ツケてたのかよ。勝手なままで勝手に視界に入ってくる。
「よ!」
ムカついたから気にしない振りの大きな声で挨拶して帽子だけふん捕まえて被って逃げた。
どうせ友だちで同級生でしょ。
都合のいい女になんてなりたくない。
文也なんて。私はなんとも思ってないんだから。
高校卒業間近に、免許取ったからドライブに行こうって誘われた。つーか、私に彼がいたらどうすんだっつーの。小学校の友だち感覚がエラいムカついた。一度は断ったけどディスティニーランドのパスがあるっていうから仕方なくついてったら、夕方からのパスで、パレードと花火見ただけ。乗り物に乗せる気はなく、混むからという理由でサッサと駐車場に連れて来られて車の中でキス。
突然のキスでパニクって、よく憶えてないけどいつの間にかディスティニーパートナーホテルにチェックインされてた。
で、お決まりの都合のいい女。
まったくワケが分からない。
思い出したか、忘れないうち。
私の視界に入ってきて、どこかに連れて行く。
こっちに予定があったらどうすんだ?
自分でも休日を空けてるのが悲しい。
わけのわからん観光地。
わけのわからん夜景。
わけのわからん潮風。
勝手気ままなキスに翻弄。
そして都合のいい女。
文也のことなんかよく知らないのに、向こうはこっちのことよく知ってるみたいな。
私ばっかりしゃべってるような。
宇宙人にさらわれて実験されてんのかな?
一方的にコイツの言いなりっつーか、思い通りにされてる感じ。
「好きとも愛してるとも言われたことないんだよ?」
「そんなのお父さんだってそうだよ?」
私は控え室で純白のドレスに身を包みながら母親に言った。
「突然親に挨拶に行くって、私は何にも聞かされてないんだけど」
「じゃあ聞くけどなんであんたここにいるの?」
「分からない。お母さんも結婚しろって言うし」
「アンタねぇ。気持ちがないなら結婚しなくてもいいんだよ。今ならまだ間に合う」
「──いや」
「そらみなさい。小さい頃からずっと一緒にいるくせに当日に変なこと言い出して。お母さん親戚の対応で忙しいんだから」
いや、そういうことじゃない。勝手に文也に振り回されっぱなしなんだよ。ウチの夕食に来てお父さんと酒飲みながら勝手に予定とかあんたらと決めてただけ。私、アイツと付き合ってたの?
アイツは私のこと好きだったわけ?
私はアイツのこと──。
分からない。なんにも分からない。
夢でも見てるみたいだよ。ちくしょう。
披露宴も終わり、友人たちのセッティングした二次会と三次会も終わった。
文也と私は終始にこやかだったと思うよ。みんなに祝福されて。
「絶対二人、結婚すると思ってたー」
「じゃなきゃウソだよねー」
そんなに私たちベッタリだったの?
勝手にコイツが女クラに来て女あさりしてんのかと思ってたよ。そーいや休み時間の後半は私の席に常駐してたけど。
「文也クンみたいなかっこ良くて将来有望な人なんてうらやましいぞ、コイツ」
「でもいつから付き合ってたのぉ?」
それは私が聞きたいわ。
ホテルに帰って明日は新婚旅行で機上の人になるんだけど、思い切って文也に聞いてみた。
「ねぇ。私たちいつから付き合ってたの?」
文也は唖然とした顔をして吹き出した。腹を抱えて笑ってる。ムカつく。
「私! 好きだとか愛してるとか今まで聞いたことないんだけど!?」
腹が立って、思い切りぶちまけた。
泣きながらギャーギャーわめいていたと思う。
文也は呆れてため息を一つ。
「なんだ。そんなことかよ」
彼は5文字の言葉をサラッと言った。
そしてキスをする。
「言わなきゃ分かんねーの? 俺は分かってるけど?」
言わなきゃわかんねーよ。クソ。
「じゃあ可憐はなんで結婚したんだ? ファッションか? トロフィーかよ」
「そりゃあ……」
ムカつく。テメェじゃ今まで言わなかったクセに人にいわせるつもりかよ。
心の中には幸福とか納得とかが必要なんだよ。クソ。まあそりゃあ私にも言えるかも知れねーけどさ。
でもいつから付き合ってたのかなぁ。恋人関係だったんだろう? 謎です。
まぁ今度からキスの前には5文字の言葉を言って貰うことにするわ。
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