これ友達から聞いた話なんだけど──

家紋武範

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【実話ホラー】闇に蠢くもの

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 実話の体験談です。

 かなり前の話で20年前くらいだと思います。

 当時の私は健康のために夜な夜な、ウォーキングしていたのです。
 これは今でもやるのですが、明るいときにやるとバツが悪いので暗くなってから。
 しかも犬をつれてと言う、散歩の名目もつけております。
 家の近所をグルリと3キロほど。
 時速5キロくらいのゆったりスピードで回るので40分ほどかけてやっておりました。

 その私の地域は市とは名ばかりの農村。
 街灯も少なく、通りから各家までは門を入って玄関まで結構な距離がある田舎の造り。
 車通りも少なく、人の通りは夜は皆無。
 暗闇に歩くのは少し怖い感じなのです。

 廃施設の脇を通るときは心の中で軍艦マーチをならします。
 大人ですが疑う心の暗闇にゆうれいをみるというやつで、白いカーテンの棚引き、立ち入ることがないので身長以上のセイタカアワダチソウ。
 それらがなお恐怖心をかき立てます。

 ですが私は無霊論者。魂は敬ってもそんなものはないと心の中で思っていますので、無用な思いは軍艦マーチで消し去っておりました。

 さらにこちらの地方は、人は少なくともタヌキにキツネ、ノラネコなど豊富に脅かしてくれます。夕暮れ時などは国鳥キジが急いで寝床に帰ろうと畑の中をかけてゆく様は驚くものです。
 前に、田んぼの水を見に行ったらサプ……サプ……と、側溝の中から不思議な音が聞こえてきたので覗いてみると30センチほどのドブネズミでした。ほとんどネコ。
 また夜間は頭上にコウモリが羽ばたくと言う自然豊かな場所。街灯にコウモリの影が映るとドキリとするものですが、心の中で

「わぁッ! なんだよ。コウモリ……。でもコウモリは益鳥(獣?)。虫を食べてくれるから。虫を食べてくれるからーッ!」

 と思いながらウオーキングを続行するのです。


 そんな中を、犬を連れて進んでいきますと、やおら犬が立ち止まり、先に進むのを拒否したのです。

 なんだろ? と先に目をやります。

 電信柱の影に、ネコのような動物がいました。
 月明かりにネコの毛のようなものも見えます。

 ははぁ。ネコがいると思っておびえちゃったのねぇ。

 と思い、犬を繋いでいるヒモを引きます。

 そして、そこに近づくと……。

 見てしまいました。

 ネコ、犬、タヌキ、キツネの指っていうのは…
 こう、丸くて小さいですよね?

 でも、その動物の指は細長く人の五指に毛が生えた形をしていたのです。
 つまり、体長40センチほどの人間に長い体毛があるような生き物!

 ゾッ! として足を止め立ちすくみました。

 そいつはこちらに出てくることなく、ゆっくりと後ろにある田んぼの中に稲をかき分けて入って行ったのです。

 トキトキトキと心臓がなります。

 いったいなんだったんでしょう?
 あの生き物は。

 サル? しかし、ウチの地方にはサルはいません。
 サルは直線にして30キロ離れた山の中にいるものの、途中は大きな湖水も市街もあり、こちらにくるには並大抵のことではありません。



 未解決。

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