これ友達から聞いた話なんだけど──

家紋武範

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追い付かれる!

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 俺は今、峠の道を猛スピードのオートバイで駆け下りている。
 なぜなら、血まみれの看護婦に追いかけられているからだ。

 彼女の身体の血色はなく衣服も肌も真っ白だ。だからこそ、血がついた衣服と唇の赤さが妙に際立つ。

 なぜ現在の状況になったか覚えていない。家に帰るためのこの道に気付いたら看護婦は俺の横に並走していたのだ。
 手には死神が持つような大鎌を持って、俺に狙いを付けて振り上げている。

 オートバイと並走できるなんて、確実にこの世のものではない。それに俺を殺そうとしているのは明白だ。

 しかし、アクセルを全開にしコーナーをうまく利用することによって、差を広げることに成功している。

 彼女がどこまで追って来るかは知らないが、行けるところまで行くしか生き延びる術はない。

 中腹まで下りてくると、彼女の気配を感じなくなったので振り返る。するとそこにはすでに彼女の姿はなかった。

 よかった──。どうやら振り切ったようだ。

 俺はスピードを落として大きなカーブをゆっくりと曲がる。

 しかし、そこにはヤツがいた。カーブを曲がったしばらく先に大鎌を持って待っているではないか!

 スピードを落としていて良かった。俺はすぐに上り坂へと向きを変える。看護婦は、また俺に向かって駆け出してきたが俺のほうが早かった。

 先ほど来た道を引き返す。しかし、どうして彼女は先回りできたのか? 瞬間移動でも出来るなら、こんなに走り回っても無意味だ。

 その時、ガサガサと山のほうから音がした。

 あっ!

 つまり看護婦は山を駆けて直線にショートカットしているんだ。
 このままではまずい。追い付かれてしまう。

 その予感は的中してしまった。俺の首に衝撃が走り、俺が股がったオートバイはガードレールに衝突するのが見えた。
 俺の首は回転して夜空を見上げていた。



 すると、空の上に『continue?』の文字が浮かんでいるのが見えた。



 そうか──。俺はゲームのキャラクターで、訳の分からない看護婦はクリーチャーなのだ。俺は何度も何度も彼女に殺されては同じ帰り道を……。





 俺は今、峠の道を猛スピードのオートバイで駆け下りている。
 なぜなら、血まみれの看護婦に追いかけられているからだ──。
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