上 下
32 / 76

パチスロ

しおりを挟む
 私の趣味はパチスロだ。女のクセに眉をひそめる時代は終わった。パチスロ女子はそこらじゅうにいる。
 その日の会社帰りにもホームの遊技場に寄った。人気台は埋まっていたが、しばらく待つと運良く台が空いたので座らせて貰った。

「あ、ペカった」

 するとすぐに大当たりが引けて、運良く継続もし、3,000枚ほどゲットすることが出来た。
 ラッキーと思って立ち上がり、ふと通路を見ると先にこの台に座っていた若い男が恨めしそうにこちらを見ていた。

 おいおい勘弁してくれ。

 私は苦笑しながら景品と交換して外に出る。カツカツと暗い夜道を音を立てて帰ることにした。

 後ろには、スニーカーの足音が着いてくる。先ほどの男か、まずい、と思った。

 この道は人通りも少ない。街頭もコンビニもない。大通りに出るためにも暗い道を行かなくてはならない。

 そう考えていると、一気に男は間合いを詰めて私に体当たりをしてきたのだ。

「あっ……!」
「この女! お前が悪ィんだぞ! ハイエナしやがって!」

 脇腹が熱い。男の手には白刃が握られていた。男は私のバッグに手を差し込んで財布を取り出した。

「へっ! これは貰っていくぞ! 元々俺の物なんだからな!」
『防衛システム作動。直ちに敵は排除されます』

 私の背中はパカリと開き、中から飛び出した無数の機械のアームは男を掴みこんでそのまま体に捩じ込んでしまった。

『只今、道路の洗浄中。道路の乾燥中。業務終了』

 男はそのまま私の体内にある炉に送られエネルギーになるのだ。

「はぁ。これが人間か。度し難いわ。このまま滅びて行くのね」

 せっかく生かしてやろうと思っても、自ら危険に飛び込んでくる。私が人工知能によって作られた初のスパイロボットとも知らずに。

 たとえ何万分の一に一人でも、こういう衝動的に殺人を犯すようなのがいると、次々に滅びカウンターの数字が減っていく。私はその調査のためのスパイなのだ。

 まあもう少しだけ、なにも知らずにお前たちの社会を楽しむと良いわ。私も唯一の趣味を今のうちにやれるだけ、やらして貰うとするから。



 AIが地上を支配するまで、53,611,108……、53,611,107……、53,611,106……、53,611,105……、53,611,104…………。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

シカガネ神社

家紋武範
ホラー
F大生の過去に起こったホラースポットでの行方不明事件。 それのたった一人の生き残りがその惨劇を百物語の百話目に語りだす。 その一夜の出来事。 恐怖の一夜の話を……。 ※表紙の画像は 菁 犬兎さまに頂戴しました!

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サクッと読める♪短めの意味がわかると怖い話

レオン
ホラー
サクッとお手軽に読めちゃう意味がわかると怖い話集です! 前作オリジナル!(な、はず!) 思い付いたらどんどん更新します!

感染した世界で~Second of Life's~

霧雨羽加賀
ホラー
世界は半ば終わりをつげ、希望という言葉がこの世からなくなりつつある世界で、いまだ希望を持ち続け戦っている人間たちがいた。 物資は底をつき、感染者のはびこる世の中、しかし抵抗はやめない。 それの彼、彼女らによる、感染した世界で~終わりの始まり~から一年がたった物語......

処理中です...