23 / 76
通り魔
しおりを挟む
誰でもいい。誰でも良かったんですよ刑事さん。
世間の奴らはみんな私をバカにしてやがるんですから。だから私は出刃包丁をカバンに入れてね、駅で待ったんです。
殺しやすい獲物を──。
それは力の弱いものなら子供でも赤ん坊でも良かったんです。でもね、その時間は退勤時でね、回りには家へと帰る大人しかいなかったんですよ。
だからその女に目標を定めたんです。
女は電車を待って、ベンチに座る私に背を向けておりました。幸いにも、あの女の回りには人がおりませんでした。誰も私を邪魔するものはいなかったんですよ。こいつはラッキーだと思いました。
女は左手の腕時計を見て時刻を確認していました。まさか今から起きることなどなにも知らなかったでしょうね。クックック。
私はね、今だと思いましたね。時計を見てる今のうちに女の背中に包丁を突き立ててやろう。そしたらそれを抜いて、次は少し離れたところにいる男の首に、その次は──。
そんな作戦を立てて、すぐにベンチを立ち上がりました。そしてカバンから包丁を出して女の背中に向けて駆けたのです。
「キャーー!!」
とけたたましく叫ぶ女の声が聞こえました。私の包丁に夕日が反射して気付いたものがいたのでしょう。
しかし、もうバレてもよかったのです。この女を刺したら、次は男を、次はその叫んだ女を──。
そう思った時ですよ。ご存じの通り私の身体は宙を舞っておりました。
飛んだ空中から、駅にいる大勢の人々を見下ろせるほど高かったのです。
そしてあの女──。
あれはニヤリと笑って人混みに消えましたよ。そして私は地面に衝突してこうしてこの病院にいるわけですから。
私の包丁。根本から折れているはずです。調べてみてください。私はね、あの時確かに女を刺したのです。
でもね、鉄にぶち当たったのかと思いましたよ。そしたら空中でしょ?
どうやったかなんて知りませんよ。
刑事さん。私は確かに人殺しをしようと思いましたよ。
でもね、この日常には得体の知れないものがおります。そんな奴らを野放しにしていていいんですか?
え? 刑事さんのその目……。まるであの時の女の……。
世間の奴らはみんな私をバカにしてやがるんですから。だから私は出刃包丁をカバンに入れてね、駅で待ったんです。
殺しやすい獲物を──。
それは力の弱いものなら子供でも赤ん坊でも良かったんです。でもね、その時間は退勤時でね、回りには家へと帰る大人しかいなかったんですよ。
だからその女に目標を定めたんです。
女は電車を待って、ベンチに座る私に背を向けておりました。幸いにも、あの女の回りには人がおりませんでした。誰も私を邪魔するものはいなかったんですよ。こいつはラッキーだと思いました。
女は左手の腕時計を見て時刻を確認していました。まさか今から起きることなどなにも知らなかったでしょうね。クックック。
私はね、今だと思いましたね。時計を見てる今のうちに女の背中に包丁を突き立ててやろう。そしたらそれを抜いて、次は少し離れたところにいる男の首に、その次は──。
そんな作戦を立てて、すぐにベンチを立ち上がりました。そしてカバンから包丁を出して女の背中に向けて駆けたのです。
「キャーー!!」
とけたたましく叫ぶ女の声が聞こえました。私の包丁に夕日が反射して気付いたものがいたのでしょう。
しかし、もうバレてもよかったのです。この女を刺したら、次は男を、次はその叫んだ女を──。
そう思った時ですよ。ご存じの通り私の身体は宙を舞っておりました。
飛んだ空中から、駅にいる大勢の人々を見下ろせるほど高かったのです。
そしてあの女──。
あれはニヤリと笑って人混みに消えましたよ。そして私は地面に衝突してこうしてこの病院にいるわけですから。
私の包丁。根本から折れているはずです。調べてみてください。私はね、あの時確かに女を刺したのです。
でもね、鉄にぶち当たったのかと思いましたよ。そしたら空中でしょ?
どうやったかなんて知りませんよ。
刑事さん。私は確かに人殺しをしようと思いましたよ。
でもね、この日常には得体の知れないものがおります。そんな奴らを野放しにしていていいんですか?
え? 刑事さんのその目……。まるであの時の女の……。
1
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。




会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる