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お経
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会社の帰り道、夕陽を背中に浴びながら妻からのトークアプリを思い出していた。今日はカレーらしい。料理上手な妻のカレーはまた格別なのだ。
通り道の壁の奥からもカレーの香りがする。ますます食欲が沸いてきた。
「ナムアミダブツ……」
突然の声に視線を落とすと、そこには小さなお坊さんが立っていた。そしてまた、
「ナムアミダブツ……」
こちらを向いて手を合わせて祈るものだからムッとした。お坊さんを避けてさっさと行こうとするも、前に立ちはだかって退こうとしないので、怒鳴り付けた。
「いい加減にしてください! 何なんですか! お経なんて不吉じゃありませんか!」
と言うと、お坊さんは険しい顔で言い返して来た。
「君こそ、自分が死んだことに気付かずどこへ彷徨うのか?」
遠くで救急車の音が聞こえる。
そうか。俺、さっき交差点で──。
通り道の壁の奥からもカレーの香りがする。ますます食欲が沸いてきた。
「ナムアミダブツ……」
突然の声に視線を落とすと、そこには小さなお坊さんが立っていた。そしてまた、
「ナムアミダブツ……」
こちらを向いて手を合わせて祈るものだからムッとした。お坊さんを避けてさっさと行こうとするも、前に立ちはだかって退こうとしないので、怒鳴り付けた。
「いい加減にしてください! 何なんですか! お経なんて不吉じゃありませんか!」
と言うと、お坊さんは険しい顔で言い返して来た。
「君こそ、自分が死んだことに気付かずどこへ彷徨うのか?」
遠くで救急車の音が聞こえる。
そうか。俺、さっき交差点で──。
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