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第15話 はじめてのキス
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ソリが平原を滑る。あまりの気持ちよさに私は手を挙げ叫んだ。
すると、ギャアギャアという魔物の声。
見つかった。空飛ぶ魔物が20ほど列をなしてこちらに飛んでくる。訓練されたものではない。野生の魔物の群れだった。
「きゃあ! ラース! 魔物だわ!」
「え!? マズい!」
その声に魔物は速度を上げる。
ラースはソリを停め急いで私の体を抱き抱えてソリの影に。
しかし、身を躍り出すこともせず、隠れたままだ。
私の体にはラースの腕が回されたまま。
これは──!
嬉しい!
なにこれ。ドキドキするんですけど?
ちょっとちょっとォ!
魔物へのドキドキなのか、ラースへのドキドキなのか、ルビーわかんなぁい。
はふはふジタジタしていると、ラースはますます腕の力を強めて私の動きを止める。
そして、そして……!
熱烈なキス!
どうして? ラースどうしてなの?
私の心が蕩ける。ラースの力強い唇に身も心も融かされていく……!
周りに魔物が飛んでいるのに、危険な状態なのに。
ラース、ガマンできなくなっちゃったの?
やっぱり私のこと好きなの?
私もラースへと腕を回して力を入れた。
そのまま長い時間。気付くと、魔物は去っており、辺りには静寂が訪れていた。
ラースはようやく名残惜しそうに唇を離す。
私は恥ずかしくてラースの顔を見れなかった。
「姫。ご無礼を。どうか私を罰して下さい」
私はそれに返答できなかった。ただ首を強く横に振るだけ。
なぜ。なぜなの?
最初はラースのことなんて、なによコイツって思ってた。
だけど今は、ラースしか見えない。
このまま雪原の上で抱き合いたい。もう一度キスして欲しい。
この力強い体の下で優しく抱かれたい。
「あの魔物は目は良くないのです。ですが人間の声や動作音に反応するので、身を抑えさせて頂きました」
え?
じゃあなに?
あのキスは危機を乗り越えるためだけのキスなわけ?
両手が塞がってたから、口を使って口を塞ぎましたと。
えーと、えーと、でもさ、でもさ、好きじゃなきゃキスは出来ないわよね。そうよね。ラースも私のこと好きよね。
お嫁さんに欲しいのよね?
ね! ね! ね!?
「ねぇ、ラース」
「は、はい」
「魔物から逃れるためにキスしたなんて言い訳よね? あなたには物凄い秘められた力があるのだから。私とキスしたくてしたんでしょう? そうでしょう?」
「め、滅相もございません!」
「うそ。うそよォ。あなたから情熱を感じたもの。本当は口実なのでしょう? 私とキスがしたかったということよね?」
「あの、その、それは、つまり、その」
「ハッキリなさい! キスしたかったのよね?」
「い、いえ、姫。私はそんな感情はありません。ご安心下さい。程度の低い私が姫へ思いを抱くなど許されないことなのでございます」
「こ、こ、こ、この不埒者!」
私は近くにあった棒切れを掴んでラースを打ち据えた。
ラースはそれを頬で受けて堪えていた。
その場に平伏して謝ってきたのだ。
「姫の高貴な唇を口で塞ぐなど慌てていたとはいえ、間違った対処でした。存分にお仕置き下さい」
余計に腹の立った私は、平伏するラースの背中を何度も何度も打ち据えた。
涙を流しながら──。
ラースの気持ちが見えない。しょせん君主と民の間柄なのだろうか?
私だけが強い思いを抱いて。思い通りにならない気持ち。
腹が立って腹が立って仕方がなかった。
すると、ギャアギャアという魔物の声。
見つかった。空飛ぶ魔物が20ほど列をなしてこちらに飛んでくる。訓練されたものではない。野生の魔物の群れだった。
「きゃあ! ラース! 魔物だわ!」
「え!? マズい!」
その声に魔物は速度を上げる。
ラースはソリを停め急いで私の体を抱き抱えてソリの影に。
しかし、身を躍り出すこともせず、隠れたままだ。
私の体にはラースの腕が回されたまま。
これは──!
嬉しい!
なにこれ。ドキドキするんですけど?
ちょっとちょっとォ!
魔物へのドキドキなのか、ラースへのドキドキなのか、ルビーわかんなぁい。
はふはふジタジタしていると、ラースはますます腕の力を強めて私の動きを止める。
そして、そして……!
熱烈なキス!
どうして? ラースどうしてなの?
私の心が蕩ける。ラースの力強い唇に身も心も融かされていく……!
周りに魔物が飛んでいるのに、危険な状態なのに。
ラース、ガマンできなくなっちゃったの?
やっぱり私のこと好きなの?
私もラースへと腕を回して力を入れた。
そのまま長い時間。気付くと、魔物は去っており、辺りには静寂が訪れていた。
ラースはようやく名残惜しそうに唇を離す。
私は恥ずかしくてラースの顔を見れなかった。
「姫。ご無礼を。どうか私を罰して下さい」
私はそれに返答できなかった。ただ首を強く横に振るだけ。
なぜ。なぜなの?
最初はラースのことなんて、なによコイツって思ってた。
だけど今は、ラースしか見えない。
このまま雪原の上で抱き合いたい。もう一度キスして欲しい。
この力強い体の下で優しく抱かれたい。
「あの魔物は目は良くないのです。ですが人間の声や動作音に反応するので、身を抑えさせて頂きました」
え?
じゃあなに?
あのキスは危機を乗り越えるためだけのキスなわけ?
両手が塞がってたから、口を使って口を塞ぎましたと。
えーと、えーと、でもさ、でもさ、好きじゃなきゃキスは出来ないわよね。そうよね。ラースも私のこと好きよね。
お嫁さんに欲しいのよね?
ね! ね! ね!?
「ねぇ、ラース」
「は、はい」
「魔物から逃れるためにキスしたなんて言い訳よね? あなたには物凄い秘められた力があるのだから。私とキスしたくてしたんでしょう? そうでしょう?」
「め、滅相もございません!」
「うそ。うそよォ。あなたから情熱を感じたもの。本当は口実なのでしょう? 私とキスがしたかったということよね?」
「あの、その、それは、つまり、その」
「ハッキリなさい! キスしたかったのよね?」
「い、いえ、姫。私はそんな感情はありません。ご安心下さい。程度の低い私が姫へ思いを抱くなど許されないことなのでございます」
「こ、こ、こ、この不埒者!」
私は近くにあった棒切れを掴んでラースを打ち据えた。
ラースはそれを頬で受けて堪えていた。
その場に平伏して謝ってきたのだ。
「姫の高貴な唇を口で塞ぐなど慌てていたとはいえ、間違った対処でした。存分にお仕置き下さい」
余計に腹の立った私は、平伏するラースの背中を何度も何度も打ち据えた。
涙を流しながら──。
ラースの気持ちが見えない。しょせん君主と民の間柄なのだろうか?
私だけが強い思いを抱いて。思い通りにならない気持ち。
腹が立って腹が立って仕方がなかった。
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