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第32話 料理しちゃいます!

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「ただいまっ」

 恵子は誰もいない部屋に嬉しそうに挨拶をした。
 本日のメニュー。
 主食は、牛スジチャーハン恵子オリジナル。
 荒神バージョンから、ちょっと変えてみる構想。

 サイドメニューは、ちょっと甘いものにする。
 コーンのサラダと、サツマイモを使った料理。
 チャーハンだから、スープが合うだろう。
 ちょっとシャキシャキが残るくらいのネギの中華スープ。

 和斗はおそらく、好き嫌いはないだろう。
 なんでも食べそうだ。

 酒のおつまみに、マカロニをフライにして、塩コショウをかける。

 時間がかからなそうだ。この料理だと。
 しかしそれでいい。時間余ったら、引っ越ししようとしていた段ボールを片付けて、ゴミ捨ててこなくてはならない。

 スタート!
 サツマイモをむいて。大きさはこのくらい。
 コーンは缶詰のものを使用する。
 さて、牛スジ。タッパーを開けて驚く。

 これで1000円分かという量。明らかに入れすぎだ。
 大将の優しさに顔がほころぶ。
 余った分は冷凍にしてとっておくことにした。
 またいつでも和斗と荒神の味が味わえるだろう。

 テンションあがる。
 これからの和斗との新しい生活に二人の思い出の味。
 さすが大将、魔力の持ち主。

 手際よく炒めて完成。
 スープは蓋かけとけばあったかいままだ。
 サイドメニューは冷蔵庫に入れてていい。
 チャーハンは、このまま鍋に入れておいて、和斗が来てから盛り付ければいい。

 早く和斗がこればいいと、時計を見ながら胸を弾ませた。
 時計の針は19時15分。その時。

 ピンポーン

「あ! 来た! 早いじゃん!」

 恵子はニコニコしながら期待を込めてドアを開けた。

「はーい! いらっしゃい!」
「よっ!」

 そこには愛しい和斗ではない。別れを告げた秀樹が立っていた。

「え? 佐藤係長?」
「入れてくれる?」

「だ、ダメです。帰ってください」
「なんだよ。怒ってんの?」

 ドアを足で止める秀樹。

「怒ってないです。イヤ! もう終わったんです。お願い帰って」
「やだなぁ。好きなんだろ? ホントは。デキてなくてお互いよかったよなぁ」

「ダメダメ開けないで! 許して!」

 男の力だ。秀樹は強引に体をねじ込ませて、部屋に侵入し、ズカズカと上がり込む。
 恵子は玄関先で震えるしかなかった。

「ほーうまそうな匂い! なに作ってたの?」
「やめて! さわらないで!」

 秀樹はテーブルの上を見た。
 キレイに飾られたテーブル。
 それはいつも自分が迎えられる様式と同じ。
 秀樹の顔が笑顔になる。

「ん? 皿が二つ。なぁんだ。やっぱ待ってたんじゃん。ゴメンなケイコ」
「チガウ。チガウ。チガウ……」

「なんだよ。早く来いよ。生理だろうから、抱きしめるだけ抱いてやるぞ♡」
「お願い! 帰ってください!」

「ん? オマエ、何? マジで言ってんの?」
「あ……」

 恵子の様子に、迎えられるのは自分でないと気付いた。
 秀樹は恵子を押さえ、羽交い絞めにし、壁に押し付け尋問をした。

「オマエ、まさか男つくった?」
「やめて! やめて!」

「図星だな? お前はオレのもんだろぉ!」
「やめて! はなして!」

「チッ! うるせぇなぁ! 犯してやるよ。生理なんてカンケーねぇ」
「やめて! やめぇぇぇーーー!」

 だが恵子の抵抗は空しいものだった。


 その頃、和斗は恵子のアパートに向かって急いでいた。
 手には大きな花束を二つ。

「あー楽しみ! 楽しみ! ケイちゃん、何作ってるかなぁ? 腹減ったなぁ~。あれ? 靴の紐が。なんだろ。嫌な予感」

 見ると、靴紐がブッツリと切れている。
 しゃがんで応急処置をし、顔を上げたそこには。

「ニャーん」
「え? 黒猫? なんか不吉な予感」

 言いようもない不安な気持ち。その時。

「カァカァカァ」
「は! カラス。夜なのに。まさか……」

 その予感は的中していた。
 恵子の衣服は強引に引き裂かれ、下着一枚にされてベッドに寝かされていた。
 無抵抗だったわけではない。男の力でねじ伏せられ、小さく泣くしか出来なかった。

「さぁ~。恵子ちゃん、最後もヌギヌギしましょうねぇ~。大人しいねぇ~。2、3発ビンタしただけなのに~。もっと抵抗しないよ、ヤラレチャウヨ~?」
「カズちゃぁん……助けて」

「誰? そいつ。そいつが来る前にやってやる! もう鍵もかけたし。入ってくるなんて無理。無理」

 秀樹はすでに部屋のカギをかけて安心していた。
 あとはゆっくりと慣れ親しんだ恵子の体を楽しむだけ。

「……カズちゃん、早く来てぇ。エッエッエッ」
「いつから? 何回その口でくわえ込んだの?」

「いや。いや。こないで」

 恵子の横に座り、顎をつかみ込む。

「愛してるって言えよ。そうすれば勘弁してやる」
「…………」

 恵子は黙って彼の顔を睨みつけた。

「言えよ。言えって!」
「いや。いやです!」

 秀樹は恵子の上に馬乗りになり、強引に最後の一枚を剥ぎ取った。

「もう、いいよ。分った。思い出させてやるかぁ。オレの味も形も」
「イヤ! 止めて! 助けてカズちゃん!」

「だから! カズちゃんは入ってこれねーーんだって! はは!」

 和斗は恵子のアパートの前の交差点に立っていた。

「もうすぐ、ケイちゃんちかぁ。早く信号青にならないかなぁ~」

 信号が長い。しかし、恵子の料理の旨さを思い出してほくそ笑む。
 しかも彼氏になったと言うことは、あの時の朝食より豪勢だ。
 ラインで送られてきた、ブロッコリーとベーコンの炒め物。
 あれもリクエストすれば良かった、などと平和に考えていた。


 恵子はすでに毒牙にかかる寸前だ。
 一糸もまとっていない。
 秀樹は自分服を脱いでいた。彼も最後の一枚を取る。

「さぁ。オレも脱いじゃったよ。じゃ、はじめようか」

 秀樹は恵子の生足を掴み自分方へ引き寄せた。


 恵子のアパートの外。速足で歩く和斗。

「ケイちゃん、ただいまっていったらどんな顔するかな? お帰りって言ってくれるかなぁ? それとも、まだお客さんでしょ? っていうかなぁ? あ。そーだ。カギ、カギ」

 キーホルダーから恵子の部屋のカギを出し、ドアノブの穴へ差し込んだ。
 秀樹の方はまだ差し込んではいない。
 和斗が外にいる状況も分かっていない。

「よし。じゃ、ケイコ。いつもみたいにアンアン言えよ? 外に新しい男来たら聞こえるように。どうせ入ってこれねーんだから。いくぞぉ~」

 恵子に秀樹が乗りかかったその瞬間。

 カチャカチャン。ガチャ。カギが開いた音に、思わず玄関に振り向く。

「ケイちゃんただいま~。なんちゃって。あれ?」

 部屋の奥にあるベッドの上には裸の二人。
 恵子は目に涙をたたえ、頬は赤く腫れている。

「……すぎ さ わ」
「あんた、なにやってんだよ……」

「カズちゃぁん、たすけてぇ~」

 か細い恵子の声。
 状況がつかめた。全て分かった。振られた腹いせに恵子を強引に自分のものにしようとしたのだと。
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