29 / 33
第29話 最高の誕生日プレゼント
しおりを挟む
「ケイちゃん?」
「うん?」
「オレ腑に落ちないんだけど」
「だよね」
「ウン」
「このまま、何も話さないまま、楽にカズちゃんと付き合えたらいいんだけど。あたしの場合、事情が事情だしね」
「ウン」
「あのね。あたし、カズちゃんが好き」
「ウン。でも」
「うん。佐藤係長ともまだ付き合ってる」
「あ、そうなんだ」
「でも、明日、ちゃんと別れる」
「え? そうなの? どうして?」
「カズちゃんへの思いが、大きくなりすぎちゃった!」
「あ、そうなんだ。へへ」
「……あたしね。佐藤係長の子供、妊娠したんだ」
「え? え? え? え?」
「それで、カズちゃんのこと好きだけど、あきらめたの」
「え? え?」
「で、佐藤係長に言ったら、いまだに返答なし! 離婚するとも言わないし、堕ろせともいわないの」
「ウン。ウン」
「それでね。あたし、一人で産むことにしたんだ」
「だめだよ」
「いや、ちょっと待って」
「オレがいるじゃん! ケイちゃん! オレ、オレが、オレが二人を幸せにします!」
「だから、ちょっと聞いて!」
「いやだ! なんで言ってくれなかったんだよ! オレ!
悔しい!」
「もう! バカ!」
「うるさい! 愛してるんだ! ケイちゃんのこと!」
恵子は取り乱す和斗の頬を平手で打った。
「みたか。奥義弓美乃見様見真似」
「……一体なんだってんだよ」
「それが、さっき、荒神に来るまでに決心してたことだったの! そしたら、カズちゃんから電話来たじゃん?」
「……ウン」
「そしたら、その電話の途中で」
「え?」
「生理、来た」
後ろに大きく倒れる和斗。桂文枝師匠のよう。
もう、起きる気力もない脱力感。
「なんだそーか」
「だから、ここに来たの。さっきも言ったじゃん。アノ日だって」
「そーでした」
「だから、ホラ立って!」
「うん」
二人は立ち上がって、お互いの顔を見つめ合った。
「あたしは、カズちゃんが好き」
「なんか、ラブコールするの、オレよりも多くなってるし」
「カズちゃんの気持ちも聞かせて?」
「ケイちゃん、愛してる」
そして、顔を近づけ合って口づけ。
今までの距離が一気に近づいた気がした。
「あぁー。最高♡……あ、そうだ。カギ」
「あー。それ? カズちゃんにあげる。スペアだから」
「え? マジ? やった! ちょーうれしい!」
本当は秀樹のために作った合鍵。彼は家族に見つかるとヤバいと受け取らなかった。
二人の部屋なのに、彼には別に帰る家があった。
だが和斗は違う。嬉しそうにそれを眺めた。
大事に丁寧に自分のキーホルダーに収めた。
彼はもはや客じゃなくなるのだろう。恵子は嬉しくなって微笑んだ。
「人の誕生日にプレゼントをもらってますねぇ」
「あ! プレゼント! ちゃんと用意してますぜ」
「え? なに? 自分の体にリボン巻いてるとかやめてよ?」
「あ、じゃぁ、ありません」
「うぉい! 図星かい! 引く。マジで引く」
「うそですよぉ」
和斗は自分のバックに手を入れて、恵子の前に跪く。手には小さい箱。
「え? なに?」
「ケイちゃん。誕生日おめでとう。わたし、杉沢和斗は、渡良瀬恵子を愛しています。結婚してください」
そういって、その小さい箱、指輪の箱をあけた。中には輝く透明な宝石がついたリングが入っていた。
「え? うそ」
「ホント」
「なんで?」
「ちゃんと給料の三か月くらいだよ?」
「なんで??」
「サイズは、だいたい。合わなかったら二人で合わせに行こう」
「だって、断られる確率の方が高いじゃん! 今日来たのだってタマタマなのに」
「そう。だって、オレ、いつもそうでしょ?」
「呆れた。ホントだ。会社もその理由で辞めるし、誕生会もこないかもしれないのに勝手に開くし。でも、これはさすがに驚きだよ~」
「さぁ。手を出して」
「はい……」
「よいしょっと。お! けっこう、ゆるいかなぁ」
「ホントだ。ゆるゆるじゃん。何号?」
「15?」
「どんな指太いって想像してたのよ」
「だって、初めてだったんだもん」
「まーね。カズちゃんらしいわ。じゃ、二人で今度合わせにいこうね」
「やった」
店の照明が恵子の指を改めて輝かせた。
「うん?」
「オレ腑に落ちないんだけど」
「だよね」
「ウン」
「このまま、何も話さないまま、楽にカズちゃんと付き合えたらいいんだけど。あたしの場合、事情が事情だしね」
「ウン」
「あのね。あたし、カズちゃんが好き」
「ウン。でも」
「うん。佐藤係長ともまだ付き合ってる」
「あ、そうなんだ」
「でも、明日、ちゃんと別れる」
「え? そうなの? どうして?」
「カズちゃんへの思いが、大きくなりすぎちゃった!」
「あ、そうなんだ。へへ」
「……あたしね。佐藤係長の子供、妊娠したんだ」
「え? え? え? え?」
「それで、カズちゃんのこと好きだけど、あきらめたの」
「え? え?」
「で、佐藤係長に言ったら、いまだに返答なし! 離婚するとも言わないし、堕ろせともいわないの」
「ウン。ウン」
「それでね。あたし、一人で産むことにしたんだ」
「だめだよ」
「いや、ちょっと待って」
「オレがいるじゃん! ケイちゃん! オレ、オレが、オレが二人を幸せにします!」
「だから、ちょっと聞いて!」
「いやだ! なんで言ってくれなかったんだよ! オレ!
悔しい!」
「もう! バカ!」
「うるさい! 愛してるんだ! ケイちゃんのこと!」
恵子は取り乱す和斗の頬を平手で打った。
「みたか。奥義弓美乃見様見真似」
「……一体なんだってんだよ」
「それが、さっき、荒神に来るまでに決心してたことだったの! そしたら、カズちゃんから電話来たじゃん?」
「……ウン」
「そしたら、その電話の途中で」
「え?」
「生理、来た」
後ろに大きく倒れる和斗。桂文枝師匠のよう。
もう、起きる気力もない脱力感。
「なんだそーか」
「だから、ここに来たの。さっきも言ったじゃん。アノ日だって」
「そーでした」
「だから、ホラ立って!」
「うん」
二人は立ち上がって、お互いの顔を見つめ合った。
「あたしは、カズちゃんが好き」
「なんか、ラブコールするの、オレよりも多くなってるし」
「カズちゃんの気持ちも聞かせて?」
「ケイちゃん、愛してる」
そして、顔を近づけ合って口づけ。
今までの距離が一気に近づいた気がした。
「あぁー。最高♡……あ、そうだ。カギ」
「あー。それ? カズちゃんにあげる。スペアだから」
「え? マジ? やった! ちょーうれしい!」
本当は秀樹のために作った合鍵。彼は家族に見つかるとヤバいと受け取らなかった。
二人の部屋なのに、彼には別に帰る家があった。
だが和斗は違う。嬉しそうにそれを眺めた。
大事に丁寧に自分のキーホルダーに収めた。
彼はもはや客じゃなくなるのだろう。恵子は嬉しくなって微笑んだ。
「人の誕生日にプレゼントをもらってますねぇ」
「あ! プレゼント! ちゃんと用意してますぜ」
「え? なに? 自分の体にリボン巻いてるとかやめてよ?」
「あ、じゃぁ、ありません」
「うぉい! 図星かい! 引く。マジで引く」
「うそですよぉ」
和斗は自分のバックに手を入れて、恵子の前に跪く。手には小さい箱。
「え? なに?」
「ケイちゃん。誕生日おめでとう。わたし、杉沢和斗は、渡良瀬恵子を愛しています。結婚してください」
そういって、その小さい箱、指輪の箱をあけた。中には輝く透明な宝石がついたリングが入っていた。
「え? うそ」
「ホント」
「なんで?」
「ちゃんと給料の三か月くらいだよ?」
「なんで??」
「サイズは、だいたい。合わなかったら二人で合わせに行こう」
「だって、断られる確率の方が高いじゃん! 今日来たのだってタマタマなのに」
「そう。だって、オレ、いつもそうでしょ?」
「呆れた。ホントだ。会社もその理由で辞めるし、誕生会もこないかもしれないのに勝手に開くし。でも、これはさすがに驚きだよ~」
「さぁ。手を出して」
「はい……」
「よいしょっと。お! けっこう、ゆるいかなぁ」
「ホントだ。ゆるゆるじゃん。何号?」
「15?」
「どんな指太いって想像してたのよ」
「だって、初めてだったんだもん」
「まーね。カズちゃんらしいわ。じゃ、二人で今度合わせにいこうね」
「やった」
店の照明が恵子の指を改めて輝かせた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
23
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる