5 / 33
第5話 良い子、悪い子
しおりを挟む
そして週末。駅裏の喫茶店エルム。
冬子といつものお茶会。
恵子が秀樹との睦み事の話しをすると、冬子は頭を抱えて激高した。
「もう、知らん。なんなの!? その最低男!」
「やめてよ。泣きそう」
「あたしだって泣きそうだよ。もう、ホント体大事にしなよ」
「トーコ、ごめん」
「もうさ、安心させてよぉ~。あんたのこと考えると仕事も進まなかったりすんだよ?」
「そっか」
「もう。……ハァ」
「…………」
「……ホント最低!」
冬子がまた席を蹴って帰りそうな雰囲気になった。
恵子は、また秀樹の評価が下がってしまう。本当は優しくて大人な人なのに、たった一つで評価が下がるなんて、自分の言い方が悪いんだろうな。と思い、必死に違う話題を考えた。
「そ、そいえばさ。ウチの部署の新人君。かくかくしかじか──」
その話題になると冬子の目の色が変わった。
「へー! いいじゃん」
「いいって~。ホンキかどうかわかんないよ?」
「ホンキ。じゃない?」
「髪の色も、テゴマスのまっすーみたいだったのにさぁ~」
「すごいねぇ。愛の力を感じるじゃない」
「そぉーかなー?」
「自分のポリシー捨ててんでしょ? ましてや、アンタのその彼氏が入社以来言ってたのを聞かないで、アンタが言ったとたん聞くなんてさー」
ポリシーと聞いてハッとした。
そしてなるほどと思った。
秀樹に言われても止めなかったことを、自分が言ったら止めた。
「うーん。そうだよねー」
「いずれにしろ、今の男よりずっとず~っといいわ」
「んー。だよね~」
「でも踏ん切りはつきません。っと」
「だってすっごい軽すぎんだよ? 女の子もモノ扱いするし」
「聞きましょう。」
冬子はコーヒーを置いて前のめりになりマジメに聞く姿勢をとった。
「今まで付き合った人は0なんだって。でも、友達とも最後までいっちゃう感じ」
「まぁー、そういう人もいるよね?」
「話し方もすっごい軽いの。まだ10代って感じだよ。あんなんでいいのかなぁ?」
「ハイハイ」
「絶対、あたしだけじゃなく、他の人にだって言ってるって。そんでモノにした後は付き合ってませんでしたっていうつもりなのよ」
「そーでしょーかねー?」
「もう、大嫌いなタイプ。ガキすぎて。多分ヤリ目」
「つまり、エッチしたいだけっていう? そんなんで、そこまで変えるか??」
「なんにしろ、今の若者は怖い」
「いくつ違うの?」
「え? ふたつ」
「2コ下かい! もっと違うのかと思ってれば」
「でも、体感的にはもっと下!」
「知らん。そんなの!」
「ふふ」
「ふ。はは」
冬子も笑いながら恵子の顔を見た。
「あのさー。無理やり悪いとこ探してない?」
「え?」
「ケイコは彼氏と継続しようと良いとこしか探してない。後輩君のは、恋に落ちないように悪いとこしか探してない。どう? 違う? 告白されてんでしょ? 気持ちはちょっとピクッとしてんじゃない? それに、ヤリ目っつったら、アンタの彼氏だって変わんないと思う。今までの話しからすると」
「……ア。ウン。……かも」
「それが問題よ。第三者の目で見て見りゃいいじゃん」
話がまとまり、その日のお茶会は終わった。
恵子は家に帰ってその話を思い出し、冷静に考えることにした。
「ホント、冬子の言う通り。図星。良いとこと悪いとこか。杉沢クンはホントにいい男だと思う。格好もいいし、男前。体格だっていい。身長なんて、びよーんて見上げる感じだもんね。トークも上手。黙ってても女の子は寄っていくと思う。一生懸命だし、誰からも好かれる。ヒデちゃんは……。すぐスネる。スネると長い。性欲が異常。独占欲が強い。優しいし、大人……。抱きしめられるとあったかい。……好き。……愛してる。奥さんと別れてくれるっていった。それなら待っていたい。ヒデちゃんと一緒に未来を歩きたい」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
次の日。会社。
秀樹は休み中は家族と過ごさなくではいけない。
休み明けで、はじめて秀樹と会う。
普通の挨拶をして、席に着く。
月曜なので、みんなぞろぞろと営業に出ていった。
課長は会議。
たまたまアポの時間が午後な恵子と秀樹で二人っきりとなっていた。
内線が ポポポ となる。
ディスプレイにうつる内線は「佐藤係長」。
秀樹だった。
恵子は何食わぬ顔で受話器をとった。
「はい。営業一課です」
受話器と隣りから声がする。
「この前は無理やりでゴメン。反省してる」
「いえ、大丈夫です」
「今でも痛い?」
「……少しだけ」
「今日も行ってもいいかな?」
「はい。ですが、まだ例の件が終わってません」
「あ、生理? いいよ。行くだけでいいんだ」
「そうですか。わかりました」
「この前のつぐない。ね?」
「了解です。では、よろしくお願いします」
カチャ。
二人して受話器を置いた。
「ふふ」
「隣なのに内線?」
「まぁね」
「楽しみ」
「そっか」
「もうやめてよ?」
「はーい」
「んふふ」
「ゴメン。ゴメン」
「許してあげます!」
「やった!」
恵子の胸の内は小躍りしたいくらいだった。
イレギュラーな間髪入れずの訪問だ!
今日は、夕食の献立を考えた。
冬子といつものお茶会。
恵子が秀樹との睦み事の話しをすると、冬子は頭を抱えて激高した。
「もう、知らん。なんなの!? その最低男!」
「やめてよ。泣きそう」
「あたしだって泣きそうだよ。もう、ホント体大事にしなよ」
「トーコ、ごめん」
「もうさ、安心させてよぉ~。あんたのこと考えると仕事も進まなかったりすんだよ?」
「そっか」
「もう。……ハァ」
「…………」
「……ホント最低!」
冬子がまた席を蹴って帰りそうな雰囲気になった。
恵子は、また秀樹の評価が下がってしまう。本当は優しくて大人な人なのに、たった一つで評価が下がるなんて、自分の言い方が悪いんだろうな。と思い、必死に違う話題を考えた。
「そ、そいえばさ。ウチの部署の新人君。かくかくしかじか──」
その話題になると冬子の目の色が変わった。
「へー! いいじゃん」
「いいって~。ホンキかどうかわかんないよ?」
「ホンキ。じゃない?」
「髪の色も、テゴマスのまっすーみたいだったのにさぁ~」
「すごいねぇ。愛の力を感じるじゃない」
「そぉーかなー?」
「自分のポリシー捨ててんでしょ? ましてや、アンタのその彼氏が入社以来言ってたのを聞かないで、アンタが言ったとたん聞くなんてさー」
ポリシーと聞いてハッとした。
そしてなるほどと思った。
秀樹に言われても止めなかったことを、自分が言ったら止めた。
「うーん。そうだよねー」
「いずれにしろ、今の男よりずっとず~っといいわ」
「んー。だよね~」
「でも踏ん切りはつきません。っと」
「だってすっごい軽すぎんだよ? 女の子もモノ扱いするし」
「聞きましょう。」
冬子はコーヒーを置いて前のめりになりマジメに聞く姿勢をとった。
「今まで付き合った人は0なんだって。でも、友達とも最後までいっちゃう感じ」
「まぁー、そういう人もいるよね?」
「話し方もすっごい軽いの。まだ10代って感じだよ。あんなんでいいのかなぁ?」
「ハイハイ」
「絶対、あたしだけじゃなく、他の人にだって言ってるって。そんでモノにした後は付き合ってませんでしたっていうつもりなのよ」
「そーでしょーかねー?」
「もう、大嫌いなタイプ。ガキすぎて。多分ヤリ目」
「つまり、エッチしたいだけっていう? そんなんで、そこまで変えるか??」
「なんにしろ、今の若者は怖い」
「いくつ違うの?」
「え? ふたつ」
「2コ下かい! もっと違うのかと思ってれば」
「でも、体感的にはもっと下!」
「知らん。そんなの!」
「ふふ」
「ふ。はは」
冬子も笑いながら恵子の顔を見た。
「あのさー。無理やり悪いとこ探してない?」
「え?」
「ケイコは彼氏と継続しようと良いとこしか探してない。後輩君のは、恋に落ちないように悪いとこしか探してない。どう? 違う? 告白されてんでしょ? 気持ちはちょっとピクッとしてんじゃない? それに、ヤリ目っつったら、アンタの彼氏だって変わんないと思う。今までの話しからすると」
「……ア。ウン。……かも」
「それが問題よ。第三者の目で見て見りゃいいじゃん」
話がまとまり、その日のお茶会は終わった。
恵子は家に帰ってその話を思い出し、冷静に考えることにした。
「ホント、冬子の言う通り。図星。良いとこと悪いとこか。杉沢クンはホントにいい男だと思う。格好もいいし、男前。体格だっていい。身長なんて、びよーんて見上げる感じだもんね。トークも上手。黙ってても女の子は寄っていくと思う。一生懸命だし、誰からも好かれる。ヒデちゃんは……。すぐスネる。スネると長い。性欲が異常。独占欲が強い。優しいし、大人……。抱きしめられるとあったかい。……好き。……愛してる。奥さんと別れてくれるっていった。それなら待っていたい。ヒデちゃんと一緒に未来を歩きたい」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
次の日。会社。
秀樹は休み中は家族と過ごさなくではいけない。
休み明けで、はじめて秀樹と会う。
普通の挨拶をして、席に着く。
月曜なので、みんなぞろぞろと営業に出ていった。
課長は会議。
たまたまアポの時間が午後な恵子と秀樹で二人っきりとなっていた。
内線が ポポポ となる。
ディスプレイにうつる内線は「佐藤係長」。
秀樹だった。
恵子は何食わぬ顔で受話器をとった。
「はい。営業一課です」
受話器と隣りから声がする。
「この前は無理やりでゴメン。反省してる」
「いえ、大丈夫です」
「今でも痛い?」
「……少しだけ」
「今日も行ってもいいかな?」
「はい。ですが、まだ例の件が終わってません」
「あ、生理? いいよ。行くだけでいいんだ」
「そうですか。わかりました」
「この前のつぐない。ね?」
「了解です。では、よろしくお願いします」
カチャ。
二人して受話器を置いた。
「ふふ」
「隣なのに内線?」
「まぁね」
「楽しみ」
「そっか」
「もうやめてよ?」
「はーい」
「んふふ」
「ゴメン。ゴメン」
「許してあげます!」
「やった!」
恵子の胸の内は小躍りしたいくらいだった。
イレギュラーな間髪入れずの訪問だ!
今日は、夕食の献立を考えた。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
バツイチ夫が最近少し怪しい
家紋武範
恋愛
バツイチで慰謝料を払って離婚された男と結婚した主人公。
しかしその夫の行動が怪しく感じ、友人に相談すると『浮気した人は再度浮気する』という話。
そう言われると何もかもが怪しく感じる。
主人公は夫を調べることにした。
抱きたい・・・急に意欲的になる旦那をベッドの上で指導していたのは親友だった!?裏切りには裏切りを
白崎アイド
大衆娯楽
旦那の抱き方がいまいち下手で困っていると、親友に打ち明けた。
「そのうちうまくなるよ」と、親友が親身に悩みを聞いてくれたことで、私の気持ちは軽くなった。
しかし、その後の裏切り行為に怒りがこみ上げてきた私は、裏切りで仕返しをすることに。
あたし、妊娠してるの!夫の浮気相手から衝撃告白された私は事実を調べて伝えてやると驚きの結末が・・・
白崎アイド
大衆娯楽
夫の子供を妊娠していると浮気相手の女性から突然電話がかかってきた。
衝撃的な告白に私はパニックになるが、夫と話し合いをしてほしいと伝える。
しかし、浮気相手はお金を払えと催促してきて・・・
好青年で社内1のイケメン夫と子供を作って幸せな私だったが・・・浮気をしていると電話がかかってきて
白崎アイド
大衆娯楽
社内で1番のイケメン夫の心をつかみ、晴れて結婚した私。
そんな夫が浮気しているとの電話がかかってきた。
浮気相手の女性の名前を聞いた私は、失意のどん底に落とされる。
浮気した婚約者を地下室に閉じ込めました。愛人とずっと一緒にいられて幸せだね。
Hibah
恋愛
イブリンには婚約者のベンジャミンがいた。イブリンはベンジャミンを愛していたが、ある日ベンジャミンはイブリンを呼び出し「結婚後は愛人のガーネットと一緒に住む。君とは夜も寝ないし、形式的な結婚だ」と告げる。ショックを受けたもののイブリンは愛人ガーネットの存在を容認することとし、ベンジャミンの恋を応援しようと決意する。イブリンのベンジャミンへの愛は、ベンジャミンとガーネットを地下室に閉じ込めるという行為に結実する。イブリンは二人の恋を地下室で観察し続けるのだが、その観察は三年間に及ぶこととなる……。 ※少し過激な表現もあるため、R15に指定しました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
結婚式の日取りに変更はありません。
ひづき
恋愛
私の婚約者、ダニエル様。
私の専属侍女、リース。
2人が深い口付けをかわす姿を目撃した。
色々思うことはあるが、結婚式の日取りに変更はない。
2023/03/13 番外編追加
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる