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第三話 デートしよう
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「そんなに泣くなって。現に俺は無事だったんだから。忘れよう。それにまだ殺したいかい?」
彼女は大きく首を横に振って顔を伏せた。
「ごめんなさい。光朗さん。ごめんなさいぃぃぃ」
どうやら、悪いと思ってるみたいだな。細腕の奥さんだし、今は武器も持ってない。何かあっても反撃は出来るぞ。
俺は彼女の隣へと腰を下ろした。少しだけ体が密着する。
「もう泣かなくてもいいよ。何もなかった。何もなかったんだ」
「でも、でも、でも──」
泣きじゃくる彼女を抱き締めた。もうこうするしかない。
「大丈夫だよ。大丈夫──」
しばらくそのまま。
そのうちに彼女はすがるように抱き返してきた。彼女の温もりが伝わる。押し倒したい。いやダメだろ。
俺は彼女に微笑んで見せた。すると彼女も僅かだが口角をあげる。俺は彼女の口角を人差し指でさらに押し上げた。
「ほら。もっと笑って笑って」
「ぷっ」
彼女は吹き出して僅かに笑った。ようやく落ち着いたようでよかった。
「光朗さんがそんな冗談するなんて……」
「おいおい。お前の中で俺はどんなイメージなんだよ」
彼女はぴたっと笑いを留めて、暗い表情を見せる。
うーん、どうやら彼は家庭の中では暴君だったのかもしれないぞ。それで彼女は思い詰めて彼を殺害したのかもしれないな。
「よし!」
「え?」
「明日は予定なんてキャンセルして思い切ってデートしよう。二人でどこかに出掛けるんだ」
「で、でも光朗さんは明日ゴルフなんじゃ……」
「ゴルフぅ? そんなのお前に比べりゃ全然優先度低いに決まってるっしょ」
彼女はまたまた吹き出す。俺もようやく楽しくなってきた。
「今日の光朗さんはホントに楽しいです」
「そうかー? こんなの全然普通ですよ。じゃ明日の七時半。リビングで待ち合わせな」
「待ち合わせ? うふふ。おかしい」
「デートなんだから、待ち合わせするに決まってるっしょ~」
おお。雰囲気いいぞ。ゴルフってことは会社も休みなんだよな。よし。明日が楽しみだ。
◇
次の日。僅かばかりの睡眠をとって起き上がり、日之出氏のクローゼットを開ける。
高そうな服がいっぱいだ。おしゃれさんだな。これとこれを合わせればカジュアルっしょ。
髪を整えて、リビングの階段を降りるとそこには白いワンピース姿の奥さん。可愛い。思わずニヤける。
「よぉーう。おはようー」
そう言うと彼女は微笑んだ。
「やっぱり。光朗さん、昨日のままだわ。今日はやはりゴルフにするぞって言ったらどうしようかと……」
「なーに言っちゃってんの~。約束はちゃんと守りますよ。じゃあどこ行く?」
「どこって……?」
「そうだなー、海を見に行ったり、水族館に行ったり。映画を見たり、ショッピングモールで買い物したり。どこでもいいよ。お前の好きなところ」
「すごい──」
「どうして?」
「結婚して四年、そんなデートしたことなかった。有希は有希で好きにしろっていつも仰有ってたし……」
日之出氏よ。どうなってるんだ。四年の結婚生活が冷め切ってる。
つか、やっぱり有希っていうんだ~。有希ちゃあん。
「いや、そのぅ。反省したんだ。有希に寂しい思いさせてるんじゃないかと思って。昨日のはある意味きっかけだな。でもいろいろ忘れてしまって。ちょっとおかしなことを聞くことがあるだろうけどいいかな?」
有希は不思議そうな顔をしていたがすぐに笑顔になって頷いた。
「じゃ行こうかぁ」
俺は玄関に向けて歩き出す。
「光朗さん」
「なに?」
「玄関はこっち……」
しまった。自分のアパートの部屋はキッチンのほうだったのでそっちに体を向けてた。
「じょ、冗談だろぉ~。でもいいぞ有希ィ~。ナイス突っ込みィ~」
彼女の額をコツンと突くと、有希はまたまた笑顔になった。
今度こそ玄関に向かう。日之出氏の部屋に車の鍵とサイフがあった。サイフには五万円とカード。さすが宝くじを当てただけのことはある。それを持って外に出た。
ガレージには、高級なハイブリッドカー。一千万はするやつだ。このガレージ付きの家といい、高級車といい。宝くじの三億円は神様の話だと残ってるんだよな。てことは、日之出氏は元々が稼ぎのいいヤツなんだ。
俺は金持ちらしく、気取ってキーホルダーを指でクルクル回しながら車に近付くと、それは勢い余って手から飛び出し、車にカツリと当たってしまった。
「あ!」
「だ、大丈夫ですか?」
俺と有希は車をチェック。うっすらキズがついてる。青い顔をする有希だが俺は彼女の肩を叩いた。
「なーに。かすり傷だよ。後で修理して貰おう」
「え。いいんですか?」
「いーよー。それよりまだ店も開いてないから海までドライブでもするか」
「は、はい!」
いいぞ。楽しくなってきた。
車に乗り込んでナビを立ち上げる。知ってる土地ならいいけどと思い、現在地を見て驚いた。
ここは、元の自分が生活してい場所とほぼ近い。住所も前は六丁目だったが、ここは二丁目。そんなに近い場所だったのか。
彼女は大きく首を横に振って顔を伏せた。
「ごめんなさい。光朗さん。ごめんなさいぃぃぃ」
どうやら、悪いと思ってるみたいだな。細腕の奥さんだし、今は武器も持ってない。何かあっても反撃は出来るぞ。
俺は彼女の隣へと腰を下ろした。少しだけ体が密着する。
「もう泣かなくてもいいよ。何もなかった。何もなかったんだ」
「でも、でも、でも──」
泣きじゃくる彼女を抱き締めた。もうこうするしかない。
「大丈夫だよ。大丈夫──」
しばらくそのまま。
そのうちに彼女はすがるように抱き返してきた。彼女の温もりが伝わる。押し倒したい。いやダメだろ。
俺は彼女に微笑んで見せた。すると彼女も僅かだが口角をあげる。俺は彼女の口角を人差し指でさらに押し上げた。
「ほら。もっと笑って笑って」
「ぷっ」
彼女は吹き出して僅かに笑った。ようやく落ち着いたようでよかった。
「光朗さんがそんな冗談するなんて……」
「おいおい。お前の中で俺はどんなイメージなんだよ」
彼女はぴたっと笑いを留めて、暗い表情を見せる。
うーん、どうやら彼は家庭の中では暴君だったのかもしれないぞ。それで彼女は思い詰めて彼を殺害したのかもしれないな。
「よし!」
「え?」
「明日は予定なんてキャンセルして思い切ってデートしよう。二人でどこかに出掛けるんだ」
「で、でも光朗さんは明日ゴルフなんじゃ……」
「ゴルフぅ? そんなのお前に比べりゃ全然優先度低いに決まってるっしょ」
彼女はまたまた吹き出す。俺もようやく楽しくなってきた。
「今日の光朗さんはホントに楽しいです」
「そうかー? こんなの全然普通ですよ。じゃ明日の七時半。リビングで待ち合わせな」
「待ち合わせ? うふふ。おかしい」
「デートなんだから、待ち合わせするに決まってるっしょ~」
おお。雰囲気いいぞ。ゴルフってことは会社も休みなんだよな。よし。明日が楽しみだ。
◇
次の日。僅かばかりの睡眠をとって起き上がり、日之出氏のクローゼットを開ける。
高そうな服がいっぱいだ。おしゃれさんだな。これとこれを合わせればカジュアルっしょ。
髪を整えて、リビングの階段を降りるとそこには白いワンピース姿の奥さん。可愛い。思わずニヤける。
「よぉーう。おはようー」
そう言うと彼女は微笑んだ。
「やっぱり。光朗さん、昨日のままだわ。今日はやはりゴルフにするぞって言ったらどうしようかと……」
「なーに言っちゃってんの~。約束はちゃんと守りますよ。じゃあどこ行く?」
「どこって……?」
「そうだなー、海を見に行ったり、水族館に行ったり。映画を見たり、ショッピングモールで買い物したり。どこでもいいよ。お前の好きなところ」
「すごい──」
「どうして?」
「結婚して四年、そんなデートしたことなかった。有希は有希で好きにしろっていつも仰有ってたし……」
日之出氏よ。どうなってるんだ。四年の結婚生活が冷め切ってる。
つか、やっぱり有希っていうんだ~。有希ちゃあん。
「いや、そのぅ。反省したんだ。有希に寂しい思いさせてるんじゃないかと思って。昨日のはある意味きっかけだな。でもいろいろ忘れてしまって。ちょっとおかしなことを聞くことがあるだろうけどいいかな?」
有希は不思議そうな顔をしていたがすぐに笑顔になって頷いた。
「じゃ行こうかぁ」
俺は玄関に向けて歩き出す。
「光朗さん」
「なに?」
「玄関はこっち……」
しまった。自分のアパートの部屋はキッチンのほうだったのでそっちに体を向けてた。
「じょ、冗談だろぉ~。でもいいぞ有希ィ~。ナイス突っ込みィ~」
彼女の額をコツンと突くと、有希はまたまた笑顔になった。
今度こそ玄関に向かう。日之出氏の部屋に車の鍵とサイフがあった。サイフには五万円とカード。さすが宝くじを当てただけのことはある。それを持って外に出た。
ガレージには、高級なハイブリッドカー。一千万はするやつだ。このガレージ付きの家といい、高級車といい。宝くじの三億円は神様の話だと残ってるんだよな。てことは、日之出氏は元々が稼ぎのいいヤツなんだ。
俺は金持ちらしく、気取ってキーホルダーを指でクルクル回しながら車に近付くと、それは勢い余って手から飛び出し、車にカツリと当たってしまった。
「あ!」
「だ、大丈夫ですか?」
俺と有希は車をチェック。うっすらキズがついてる。青い顔をする有希だが俺は彼女の肩を叩いた。
「なーに。かすり傷だよ。後で修理して貰おう」
「え。いいんですか?」
「いーよー。それよりまだ店も開いてないから海までドライブでもするか」
「は、はい!」
いいぞ。楽しくなってきた。
車に乗り込んでナビを立ち上げる。知ってる土地ならいいけどと思い、現在地を見て驚いた。
ここは、元の自分が生活してい場所とほぼ近い。住所も前は六丁目だったが、ここは二丁目。そんなに近い場所だったのか。
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