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第24話 プロポーズ

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麗と出会って六ヶ月。街はクリスマス一色に包まれてきた。
オレは麗を誘って、クリスマス前の日曜日、水族館に出掛けた。

「すごーい! すごーい! タイちゃん! レイ、水族館に来たかったの~! わぁ~お魚さんがいっぱーい! ……じゅるり」

最後のは聞かなかったことにして、喜んで貰って良かった。
大きな水槽の前で構える麗。
水槽の前に来た大きな魚を水槽ごしに捕まえている。
だが捕まえられるはずもなく、水槽に貼り付いて去ってゆく様をながめる麗。
そんな姿をカメラに収めた。
結婚式の時にスライドで流してやるんだ。

「ねね。タイちゃん。面白いね」
「ほんとだな」

「ホラ。タイがいる」
「へー。あれがタイかぁ」

「タイちゃん、タイも知らないの?」
「いやぁ、良くは見ないからね」

「あ、エイ」

オレの返答を待つことなく今度はエイにかじるついている。大きな水槽を指差しながらはしゃぐ麗。
その姿を微笑ましく見ていた。

「レイ」
「レイじゃないよ。エイ」

「分かってるよ。レイを呼んだの」
「そうなの? なに?」

などと言いながら水槽に貼り付いている。
普段こんなに活発なレイを見たことがない。
まぁ、エッチの時は凄いけど。

そんな麗の後ろに近づいて肩を抱いた。
麗は水槽を見ながら嬉しそうな顔をする。

「なーん」
「にゃーん」

人が見ているのにキスをしてしまった。人前でオレからするのは初めてだ。麗もそれに応じ、にこやかに笑った。

「レイ、愛してるよ」
「なーん。嬉しい」

「レイ、これ」
「なに?」

ポケットから取り出したのは指環の箱。
中には二つの指環が入っている。
一つはオレの。もう一つは麗のだ。

「レイ。結婚しようよ。これは約束の指環」

麗の手を取り、左手の薬指にそれを差し込んでやった。
細くて白い指に白銀の小さなダイヤがよく映える。
麗も水槽から目をそらして、その指輪の美しい輝きに見入っていた。
そして小さく震えながらにこやかに微笑む。

「……嬉しい」
「まだお金貯まらないけど、結婚式も上げて、少し大きなアパートかマンションに引っ越すんだ。レイは何も心配いらないよ。オレを信じて来てくれればいいんだ」

その言葉の最中からオレの指環を押し込む指が濡れる。泣きだした麗の涙。温かく濡れるそれに鼓動が高まってゆく。

過ぎゆく時間──。
オレたちだけ時が止まっているが周りは微笑ましい笑顔を浮かべながら通り過ぎる。

「ねぇ、レイの返事を聞かせてよ」
「タイちゃん。レイ、レイね、タイちゃんのそばにいれれば幸せなの。バカだし、バカなこともたくさんしてきた。そんなレイでもいいの?」

「いいとも。レイの手を放さない約束をしただろう?」
「うん」

彼女の絡みつく腕。この子を幸せにする。
例えどんなことがあろうとも。
麗はしばらく下を向いていたが、嬉しそうに顔を上げた。

「ねぇタイちゃん」
「なんだ?」

「おうちに帰ったら、久しぶりにロマンチックしようよゥ」
「ああ。ロマンチックかぁ。久しぶりだなぁ」

「あれ好き。二人でくっついて踊るの」
「そうだな。帰ったらやろう」

「その前に、お魚たくさん見るゥ」

そういいながらまた水槽に貼り付く。まるでコバンザメ。
麗の観て歩く速度は遅く、水族館にはマジ一日中居るクチの人。
ウロコ一枚一枚、エラの隙間も見逃すまいとじっくり見てる。
おかげで二人で見たかったアシカのショーが見れなかった。
麗は魚を見れれば良かったらしく、アシカはどうでも良かったらしい。



部屋に帰れば二人の空間。
さすがに歩き疲れたのか、麗はダブルベッドに身を倒してしまった。

「疲れたろ?」
「疲れたー」

「なんか食べ物買ってこようか?」
「待って。……一緒に行くもん」

「無理すんなよ」
「違う。タイちゃんと一緒にいたいだけ」

麗は疲れた体を持ち上げ、オレに寄りかかる。

「今日はレイちんマグロ」
「するんかい」

婚約したからと言って、疲れたオレたちはコンビニで高めのスィーツを買っただけだった。
そしてなぜか、アジフライ。
麗が急にアジが食べたくなったのだ。

部屋に帰って、アジフライとスィーツで乾杯。
その後、二人で仲良くシャワールーム。
そしてロマンチック。
洋楽のプレイリストからバラードを選択。
オレたちはダブルベッドの横に立ち、小さく踊る。

「これ好き」
「ベッドと机で狭くなったなぁ」

「でも、ロマンチックを踊るのには関係ないじゃん」
「そうだな。本格的なダンスじゃないし」

「うん。これがいい。すごく」
「オレも」

密着度大きく、互いの背中と尻に手を当てたまま。
曲の合間にキス。
でたらめなステップ。
ずっと一緒にいるのに飽きない。
このまま麗を自分の中に入れてしまいたい。
そしたらいつまでも一緒のままなのに。

麗を抱き抱えてベッドに置く。
服を脱ぎ散らして、近づくと彼女は両手を広げて迎え入れてくれた。
そのまま溶け合う。蕩け合う。
朝までこのままで……。
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