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第22話 スマホ契約

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ベッドを買った。ダブルベッド。
ちょっと予算オーバーだったけど、店員に巧いよう言いくるめられた感。まぁ、結婚後も使えるってのが気に入った。
搬入されたベッドに麗もかなり喜んで、端から端へ転げ回った。

「なーなーなーん」
「気持ちよさそうだなぁ」

「実際気持ちいいよ。タイちゃんもやってみな」
「よーし」

麗の真似をして両手を上げてベッドの上を回転。

「にゃーにゃーにゃー……」

酔った。気持ち悪い。ふっわふわのマットレスにもやられた。
そこに頭を抱えて寝転んだ。

「気持ち悪いの?」
「うーん。酔った」

「大丈夫?」
「うぇー。気持ち悪ィー。声出すのもつらい」

「じゃ、気持ちよくしてあげよっか?」
「……お願いします」

出ました。麗の蕩ける術。
何故そうなるのと聞かないでくれ。麗はそう言う子なんだ。
気分悪いのに、麗の方に集中してたら、目まいも晴れて行く。

「声出てたし」
「うるせー。あー」

存分蕩けた。麗はオレの胸に抱き付く。
その頭を抱き抱えた。

「レイちゃんあーりがとう!」
「どういたしまして」

机の上にはバーゲンで買ったバッグが二つ。財布が一つ。
そして、ワンピースや帽子も買った。
着替えさせると可愛らしくて仕方ない。
スマホのカメラで何枚も写真撮影。

麗が来てからというもの、麗フォルダにはたくさんの写真が入っている。
笑ってる麗。
ぼーとしてる麗。
食べてる麗。
変顔の麗。
裸の麗。
どれも好きだ。ニヤニヤしてしまう。

「はい。レイ撮るよー。笑って笑って」
「にぃ……」

「うーん。これもかわいい。待ち受けにしよう」
「やだ。恥ずかしいなー。誰かに見られたらどうするの?」

「全然オレは問題ないよ」
「もー」

スマホ。麗にスマホも持たせなくちゃ。
今までは必要ないって言うもんだから契約してなかったけど、オレが連絡したい。

「一番安いのでいいよ。どうせ使わないし」
「そんな。オレの写真も撮ってくれよ」

「ホント?」
「え?」

「タイちゃんの一番男らしいとこ撮っちゃうよ~」
「はい撮って」

オレは下を脱いで尻を麗の方に向けポーズをとった。

「やっぱいいや」
「なんだよそれ」

「タイちゃん、危なすぎるもん」
「そう? 危険な香り。カッコいい?」

「カッコいい。けど」
「けどがつくんかい」



二人で携帯電話の新規契約に行く。
電話屋は待ち時間が長い。麗と一緒だから楽しいけど、エロネタが言えねぇのが辛い。イチャイチャはしてるけど。

「坂間野」

うえ!
誰? イチャイチャしてるところ見られた。
顔を上げてみると、谷元さんだった。
テンションが一気に下がる。

「な、なんすか?」
「タイちゃん、お友だち?」

「ちげー。会社のデザイナーの先輩」
「え? 先輩にゃん?」

麗は立ち上がると、深々とお辞儀をした。
その姿も可愛い。長い髪が床に届きそう。

「いつもタイちゃんがお世話になってます!」
「お、おう」

谷元さんは、真っ赤な顔をして口数がますます減った。
麗の可愛さという毒に当たったんだ。ざまあみろだ。

「谷元さんはプラン更新か何かですか?」
「ん。ああ」

マジ口数が少ねぇ。何しにきたんだ。
どーせイヤミでも言いに来たんだろ。言いたいことないならとっとと自分の席に戻りやがれ。

「じゃ、じゃーな。また会社で」

……ホントに何なんだ。
そんな危険性のない谷元さんなんて谷元さんじゃない。
まさか、谷元モドキかなにか?

知り合いがいようといまいと、麗には関係なかった。
思い切りオレの腕に胸を当て、飽きてくると肩に寄りかかる。
だいたい放映してる番組がつまらん。
渓流釣りって、誰得?

「あ。ヤマメ。美味しそうだね。タイちゃん」

お前かよ。ヤマメなんて食ったことねぇ。食えるもんなの?

「ヤマメは悪食だから、蛇でも桜の花びらでも食べちゃうんだよ」

多分その知識、一生使わねぇ。
やっぱり魚のこと詳しいんだなぁ。

肩により掛かりながら渓流釣りの番組を楽しそうに見てる。
麗の趣味は、こうしてオレとまったりすること。
俺がいないときは、こうやってテレビ見ながら掃除と洗濯して、快適に寝れるところを探すんだ。
まるで猫のように。

「126番さーん。126番さーん」
「あ、オレたちだ。ほれ。レイ。行くぞ」

「ああん。イワナが釣れそうなのに~」

無事に安いプランに加入。
今月はマジ、毎日カツオ節だこりゃ。
興味なさそうな麗に、無料通話とメッセージのアプリを入れてやった。あと、動画アプリ。
猫動画が気に入ったらしい。

「あ~ん。子猫超かわいー」
「オレの子猫も可愛がってくれよ」

「やーん。可愛くないもん」
「ちょっとだけだよ凶暴なのは」

「…………」
「ねぇねぇ、レイちゃーん」

「これ見終わってからねー」
「……娯楽を与えるんじゃなかったなぁ」

いつもとは逆に、オレが麗の胸に寄りかかっていた。
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