月夜の晩、猫のような彼女を拾った ──突然始まる同棲生活!!

家紋武範

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第13話 タブー

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麗は余り部屋を出たがらない。
買い物は一緒。オレが会社の間は掃除と洗濯、そしてテレビを見てお昼寝。
そんな生活だ。
麗のたった一つの持参品だったポーチには、化粧品しか入ってない。だが物欲は全くなかった。
ただ、オレと一緒にいたいだけ。
出来るだけそばにいたいだけ。
麗の過去が知りたい。
どこから来たのか、何をしてきたのか。
しかしそれを聞くと麗は不機嫌になる。

「別に……どうでもよくない?」
「でもさ。こんなに可愛い人を預かるんだから、ご両親に挨拶しておかないと」

麗はスマホを持ってない。この部屋には置き電話はないし、外に出ない麗は誰にも連絡してないだろう。

「親はもういないの。連絡する人はいない。レイにはタイちゃんだけだよ」
「いない? ご両親とも?」

「そうだよ。しつこい」

麗は立ち上がり寝室からでてリビングのソファーに寝転んでしまう。たった一部屋の移動。
それが麗の行動範囲。
一日中、猫のように快適な場所を探して寝る。
過去の質問は麗にとってタブーなのだ。
オレは麗をソファーまで迎えに行き謝る。

「ごめんなレイ。もっとレイのこと知りたくて」
「……レイはタイちゃんのものだよ。でも過去のこと詮索しないで……。レイの過去はもうないの」

「うん。分かったよ」
「きっと話せるときが来ると思うから……」

「そうだな」
「今、とっても幸せよ。なーん」

ベッドの上──。
彼女は、オレだけを満足させてにこやかに微笑む。

「なーん」
「あー……。レイ、あーりがとーう」

「もう一回?」
「……いや、ちょっと休憩」

「なーん」
「レイ、ごめんな」

「なー」
「しつこく聞いて」

「いいの。怒ってゴメンね。タイちゃん」
「いや、オレが悪かった」

「なーん。タイちゃん愛してる」
「オレも、レイのこと愛してる」

愛してる──。
本当だろうか?
陳腐な言葉。レイのことよく知らないのに。

愛してる──。
レイは本心だろう。本当なんだろう。
だけどオレはどうなんだろう。
これからレイとやっていけるのだろうか?
心配だ。

愛してる──。
この言葉を出すことによって、自分に言い聞かせているのかも知れない。
快楽に身を委ね、それに負けてしまっている。
不思議な彼女。
でも、この繋いだ手を離したくない。
離されたくない。

それって、好きってことなんだろう。
麗と一緒に未来に行きたいってことなんだろう。

「どうかした?」

なんて愛くるしい笑顔。
たまらなく愛おしい。

「どうもしてないよ」
「きゃん!」

そのまま麗を寝かせる。
そこに、自分の身を倒した。

「なーん」
「いいだろ? 猫同士じゃれ合おうよ」

「なーん」
「にゃーん」

そのまま激しく麗に体をぶつけた。
魂を。心を。愛の全てを。
麗はオレを愛してくれてる。
オレだって麗を愛している。
それでいいのだから。
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