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第6話 ロマンチック

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自分のものも脱ぎ洗濯槽に投げ入れ、裸のオレたちはそのままシャワールームへ。
二人でじゃれ合いながらの洗いっこ。19回目。
もうすぐ二人が出会って24時間という時間帯。
それなのにおさまることを知らない。

麗はスッキリしたオレをイスにしゃがませ、頭を洗ってくれていた。

「んぉ~……。これはこれで気持ちいい」
「もう。タイちゃんはどこも感じるんだ?」

「いやぁ。全部でレイを感じていたい。」
「エッチだにゃ~」

「いや、そんなことないよ」
「そう?」

そう言いながらまた手を伸ばす。
背中に柔らかい感触。自分の中に入ってしまうようだ。

「なーん。反応がありません」
「だろ?」

威張って見せたがさすがにさっきの19回目からはすぐに回復しないだけ。しかもピリピリと長時間正座したように、男性自身が痺れている。血の巡りが良いのか悪いのか。しかし麗は容赦をしなかった。

「んぉ!」
「お。反応あり」

まただ。彼女の技。
小さい浴室に体を倒し、シャワーを身に浮け全身を伸ばして彼女の技を受けていた。足は壁に乗せ、背中は硬い床の上。
だがそんなのは気にならない。
洗いに来たのに、20回目のはずなのに勢いが良く、二人で汚れた。

「ターイちゃん」
「……もう、ダメ」

「起きてくださーい」
「もう、疲れた」

「ここで寝ちゃダメでしょ。ベッドに行こう」
「はい……。もう寝ます」

疲労が押し寄せる中、ゆっくりと立ち上がり軽くシャワーを浴びると口数少なくシャワールームを出た。互いに小さいタオルで水滴を拭き、フラフラになりながらリビングへ。

互いに裸だが、もう麗を見ないようにしていた。これ以上は体力が持たない。肩で息をしながら最後の力を振り絞り、彼女の下着と部屋着のタグを切って渡す。
彼女は嬉しそうにそれを着替えた。

オレも収納ケースから自分の下着を出して素早く着替える。
これで今日の仕事は終わり。
大きくため息をつきながらソファーに倒れてエアコンの風を受けると、麗はその隣に座って体を密着させてきた。

「疲れた?」
「まーな」

「でも体力あるよ」
「童貞の初めてパワー。もうさすがに打ち止め」

「そう?」

彼女は面白がってまた手を伸ばすのを素早く阻止した。

「なーん」
「なーんじゃねぇ。これじゃ明日仕事にならん」

「じゃ仕事休めばいいと思うよ」
「そんなわけに行かないよ」

「そうか~」
「……あー。エッチって、もっと違うものかと思ってた」

「ん? 嫌だった?」
「いやぁ、逆」

「ふふ。なーん」
「でも、ロマンチックじゃないな」

「ふふ。ロマンチックぅ?」
「笑うなよ。童貞には夢のシチュエーションがあったんです」

「なーん。面白い」
「面白がるなよ。もう話さない」

拗ねて麗から目を逸らした。麗は素早く逸らした目の方に移動する。

「じゃ、やってみようよ。ロマンチック」
「はぁ?」

「タイちゃんの初めてのシチュエーションしてみよう」
「そっか? そうだな」

なぜかウキウキして、回復しないであろうものがまた反応する。
時計を見ると、麗とあった時間。
じゃあカウンターをゼロに戻せる。
昨日は20回した。今日は今日で頑張ろう。
そんな気持ちで、麗の手を引いて寝室に連れて行った。

「どう? オレの部屋」
「どうって、昨日も入ったにゃん」

「そうじゃないよ。もう始まってるの。ロマンチックは」
「あ、初めて部屋に入れたってこと?」

「そうだよ。アルバム見る?」
「ぷぷ。いかにもって感じ」

笑う麗をベッドに座らせ、クローゼットから子どもの頃のアルバムを取り出した。そして、スマホから洋楽のバラードを選択。
いい雰囲気づくり。
だが麗は笑っていた。
このありきたりなシチュエーションが楽しくて仕方がないらしい。

「あー。もうダメ。もうダメ」
「何がダメなんだ。ちゃんと見ろ。アルバム」

「ぷぷぷ。なーん可愛い~、って言えばいい?」
「バカ。真面目にやれよぉ」

「わー。これタイちゃん?」
「それは親戚のおじさんだろ」

「ちょっと面白すぎるよ、このロマンチック」
「そうかなぁ?」

しかしこのロマンチックには台本がある。
オレは麗の手を握り、そこに立たせた。
そして、体を密着させて彼女の腰に手を回す。
洋楽バラードのプレイリストにはまだ曲がある。
そのまま曲に合わせてゆっくりと踊った。
麗はまた楽しそうに笑う。

「なーん」
「愛してるよ。レイ」

「え?」
「愛してる」

麗から笑い声が止まる。
先ほどまでの嘲笑。それが止み、別な笑顔となっていた。
オレはそれに胸が打たれて心が奪われていく。

「ふわぁ……」
「なんだ?」

「……いいね。このロマンチック」
「そうか」

オレたちは互いの腰を抱いたまま、しばらく踊り続けた。
曲が止まる。見つめ合う二人。
微笑みながら熱いキス。
やがて次の曲が流れだしても、そのまま腰でリズムを取りながら唇を合わせ続ける。

愛してる──。
自分だけの台本にあったセリフ。
それを言っただけ。
だが、麗から回された腕に力が入ったのが分かった。

愛してる──。
陳腐な言葉。
この時、高校生の頃、好きだった子を思いだしていた。
あの時に何度もしたシミュレーション。

愛してる──。
昨日会ったばかりの麗に言うなんておかしいかも知れない。
麗のことは何も知らないのに。
可愛らしくて、エッチが上手だというだけ。

だが、今はこの子を本当に大切に思う。
彼女を抱く腕を少し強めた。

「嬉しい……」
「うん」

「レイもタイちゃんのことを愛してる」
「そうか……」

レイの腕にさらに力が入るのが分かる。
一日経った記念日のダンス。
一日中一緒にいたのにまだ飽きもせずに抱きしめ合っていた。

「ねぇ、タイちゃん」
「どうした?」

「レイのこと放さないで」
「放さないさ」

「ずっと抱きしめてて」
「ああ」

やがて曲が終わる。
次の曲は少しポップなスタートだった。
彼女は顔を上げ、ニコリと笑った。

「ねぇ、しようよ」
「そうだな」

オレたちはゆっくりと小さなシングルベッドに入った。
今までは麗に主導権を握られていたが今度のベッドは違った。
彼女は恥ずかしげに横たわり、指の動きに小さく嬌声をあげる。
未熟な技術でも感じてくれている。
彼女を腕の中に入れ優しく抱いた。
対等な終結。最後は合わせる腰の動き。
オレたちは激しく息を吐きながら、横に体を並べそのまま目を閉じた。
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