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第17話 最悪の予知

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オレがたまり場から出てくると淳は心配そうな顔をして待っていた。

「うわ! 淳。どうしたの?」
「ううん。なんでもない。椎太クン戻ってくるの遅かったから」

「遅かったかなぁ」
「ふふ」

笑いながら伸ばしてくる淳の手。
ミスコンが終って、淳は素の風貌のまま。
だけど少しだけ女子の友達ができたみたいだ。
それでも休み時間は二人でいる。

『椎太クン、怖くなかったのかな。吉井クン、怖い顔してたけど』

やっぱり心配してたんだな。
ちゃんと心配を無くしてやらないと。

「吉井がさ、淳が雛川だってこと言わなかったの怒っててさ。でも久保田が、みんなを一喝してくれたんだよ。照場はオレが面倒みるって。文句があるならオレに文句があるってことだってさ」
「へぇ! 久保田クン、最初は強引だったけど、すっごい男らしい人だよね」

「うん。そうだね。そう。そうなんだよ」

いつまでも人に頼ってちゃダメだけど、久保田の男気。
ありがたいよな。
ホント。もっとちゃんと友達になりたい。


放課後、オレと淳は淳の部屋でまったり。
話をしてキスをして、食事をして手をつなぎ合って昼寝をした。
昼寝という時間じゃないから、仮眠っていったほうがいいかも知れないけど。



その時、夢を見た。やけに鮮明な夢。
猛スピードで走るワゴン車に淳は乗せられている。周りには四人の男。一度見たことある連中。
あの時の──。
昼間の峠。車は山を登って行く。
淳は怯えている。そりゃそうだ。この男たちに今から何をされるんだろう。

淳は拘束されて身動きがとれない。
しかし、身をよじり縄がほどけた瞬間、ワゴン車の後部座席のドアをあける。
ちょうどその時、開けたドア側に海が見える。

男たちは淳に手を伸ばすが、淳は車の床を思い切り蹴って海に向かって飛び上がる。
だが飛距離が短い。
淳は車のスピード、それから落下するスピードで岩に叩き付けられてしまった。

衝撃と激痛がモロに伝わる。
そして意識がなくなり真っ暗に。

「「わぁっ!!」」

オレは飛び起きた。隣りの淳も。息荒く、しばらくお互いの顔を見ていた。
泣きながら淳はオレに抱きついて来た。
オレは彼女の背中に手を伸ばし、抱きしめる。

「大丈夫。もう大丈夫だよ」
「──うん」

ん?
なにが『大丈夫』。なにが『うん』なんだ?
また二人で同じ夢を見ていたということか。
予知夢を見る淳の夢を、テレパシーで感じて同じものを見ていたということか。

「怖い夢を見たの」
「そうか……」

「でも、もう大丈夫。椎太クンがいるもん」

そう言う彼女の笑顔は少し無理をしているように見えた。第一心の声。

『もうすぐ、私、こうなるんだわ。怖い。椎太クン。助けて!』

予知。これから起こる未来。
淳は誰かに拉致されてしまう。
彼女を守りたい!
起きることなら、これから起きることなら。
それを止められる。
どうすればいい? 考えろ。考えろ。

クソ! 思い出すのは峠の景色とその間の海だけ。
その景色。あの景色。どこだ。どこだ?
見たことある。

あれは、オレたちの住む市から沿岸部に進み、北側の地方へ進む線だ。昔はあそこが主要道だったが、今ではバイパスも出来て不便な山道のあそこは車通りも少ない。
ウチの親戚の家に行く時に前によく利用してた。
でもいつだ。拉致はいつ行われる?

ああ、淳と同じ夢を見たって言ったっておかしな話だぞ。
そしたらオレもエスパーだと言うことを打ち明けなくちゃならない。
それには、今まで心を読んでいたことも伝えないと……。それはマズいぞ?

ああ、どうすりゃいいんだ!
こんなことなら付き合い当初にオレはエスパーなんだって言っておけば良かったぁ。
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