42 / 47
転生の章 チャブチ篇
第41話 妻への赤心
しおりを挟む
それから数ヶ月、戦後処理が大変だった。
まず人間の捕虜をどうするか。
食料も配給出来ないし、殺してしまおうと言う意見が大半だった。
しかしチャブチは違った。
捕虜に食料も財産も持たせず解放する。と言った。
これはチャブチの意識に他ならない。
ボクが元人間だからではなかった。
義父のシルバーが「どうして?」と尋ねると、チャブチの作戦はこうだった。
「シルバー副団長、これだけの難民を食べさせるのは人間の方でも大変でしょう。受けれた側は職も与えなくてはなりません。相当混乱して自滅しますよ」
そこに居合わせた者は『なるほど!』と唸った。
さすがは英雄の息子だ。
人間の服をはぎ取り、裸にして恥辱を与え荒野に放した。
だが王族には王家を示す宝だけは持たせてやった。
これを取り戻しに攻められたら厄介ごとが増えるとの考えだった。
しかも、人間側も王族を受け入れるというのは混乱を招くだろう。
チャブチの肉体のコントロールが徐々に彼に奪われ、ボクはただの意識だけの存在となって行った。
つまりこう言うことだろう。
チャブチの肉体にはチャブチとボクの二つの魂が宿ってしまったのだ。だが、もともとのチャブチの魂が肉体の主導権を持っていた。
しかし人間奇襲でチャブチは意識を失い、そのスキにボクの魂は肉体の主導権を奪った。彼の魂は途中で意識を取り戻したのかも知れないが、一度奪われた主導権をなかなか取り戻せず、あの一騎討ちでようやく主導権を奪い始め、コントロールしはじめたのであろう。
彼は、コノハを引き取ったが寝食を共にせず、ただ遊び相手といった感じにしかしなかった。ボールを放り投げてやったり、帯を揺らしてじゃらしてやったりするだけだ。
コノハは彼の性器に触れようとしたが、それを強く叩くと、もう触ろうとはしなくなった。
まるで動物を躾けるようだった。
そんに中、チャブチは国元の母に手紙を書いた。
「お母さん、任務は成功し我々は巨大な城と領土を手に入れました。この要衝の地を一度見に来ませんか? 子供たちもここで生活させ将来の勉強にさせたく思います。私は遠慮申し上げたのですが義父上が人間の邸宅で一番大きいものを下さいました。ここで共に暮らしませんか? 実は私、父上の仇を討ち果たしました。彼は父の首を持っていましたので、母上立会いの元、埋葬式もしたいと思います。甚だ勝手な話しですが、これに免じて今までの無礼、親不孝に目をつぶって頂きたく思います」
この手紙に母ユキの心も雪解けし、すぐにピンクやボクが集めた側室たちにドレスを着せ、子供たちに正装をさせて城に向かって馬車を走らせた。
彼女たちの馬車が付き、一家全員彼の前に並ぶと、チャブチは母の前に跪きその大きな体を低くして母の顔よりも首を下に下げた。
「今までの親不孝お許し下さい」
母ユキは息子が改心したと思ったのであろう。目に涙をためて彼の肩に触れた。
「親子じゃないの……」
許された彼は立ち上がって母に微笑みかけ、そして妻達の方を見た。
……いや、ピンクだけ見つめていた。
そして人目をはばからず彼女に抱きついた。
「もう、またはじまった……」
とピンクは言ったがずっと強く抱きしめた。
その内に彼からは鼻をすする音が聞こえた。
「……チャブチ??」
「……グズ。……ピンク」
「本当にチャブチなの?」
「ああ」
一声だけだった。
もしもボクなら「キミの情けない夫だよ」とか、「今でもキミに夢中なんだ」とか言ったのかもしれない。
ただ、チャブチは違った。「ああ」の一言で彼女に全て伝わると信じていたのだ。
彼女はそう言われてチャブチの背中に手を回した。
チャブチはピンクの手を引いて大きな屋敷にはピンクと、ピンクの生んだ子だけ入れ、ジュンやキャラ、コノハには敷地内に並ぶ小さい屋敷にそれぞれ案内しそれを与えた。
子供たちにも順列をつけ、ピンクの生んだ子供以外とはなかなか会おうとしなかった。
チャブチはピンクに言った。
「なぁ、ピンク。ボクが間違っていた。離縁してくれないか? キミだけじゃない。側室たちもみんな家に帰すつもりなんだ。でないと一族に示しがつかん。コボルド族始まって以来の離縁したものだ。ボクは歴史に悪名を残すだろう。バカな僕にはちょうどいい」
ピンクはチャブチに抱きついた。
「そんな! あなたを嫌いと言ったのはウソなの! そんな気はないの。だって愛してるんだもの。どんなあなたでも!」
しかし、チャブチはピンクの肩を掴んで自分の身から離した。
「いや、言ったではないか。一族に示すためだ。ボクを見限って実家に帰ってくれ」
そう言って、彼女と子供たちを義父シルバーの家に帰した。
一家暮らしたのは僅かに二日ばかり。
チャブチがなぜそんな行動に出たのか、ボクばかりかピンクすら分からなかったであろう。
次にチャブチは側室たちを集めた。
「君たちにヒマをとらせたい。実家に帰ってくれたまえ。ボクは一族の長だ。ようやく気付いた愚かな男だ。長が側室をとるなどありえない話なのだ。しかし、この与えた屋敷にいたければいてもいい。だがもう君たちを抱こうとはしないだろう」
と伝えた。コノハは女児を生みチャブチが変わってしまったことを嘆いてそれを抱いて山に帰った。
キャラもまだ若く未来があったので子供を連れて実家に帰りやがて再婚した。
ただ、ジュンだけはピンクの妹のように過ごした数年間。これからも同じようにしたいと言うことで邸内の小さい屋敷に残ることに決めた。
チャブチは出て行った妻に多額の慰謝料を払ったがコノハの行方は分からずじまいだった。
そして、国中に自分は離縁したと公表した。自分が間違っていたと大々的に伝えたのだ。
これにてチャブチの女性問題は完全に片付いてしまった。
チャブチは独身となって団長職をもくもくとこなしたのだった。
さすがはブラウン将軍の息子。見事な裁きだった。
ボクはこの問題を解決しようと考えたが、人道的問題とかいろいろ考えてしまい、無理だった。
だがそもそもハーレム自体が人道的でない。
彼がしたことも正しいとは言えないが、一族のためにはこの方法が最善だったのこも知れない。
全くボクの数年はいったいなんだったんだろう?
チャブチの意識がハッキリしてれば叔父も死ぬことなかったんだろう。
やっぱりボクは「のび犬」なのかなぁ……。
まず人間の捕虜をどうするか。
食料も配給出来ないし、殺してしまおうと言う意見が大半だった。
しかしチャブチは違った。
捕虜に食料も財産も持たせず解放する。と言った。
これはチャブチの意識に他ならない。
ボクが元人間だからではなかった。
義父のシルバーが「どうして?」と尋ねると、チャブチの作戦はこうだった。
「シルバー副団長、これだけの難民を食べさせるのは人間の方でも大変でしょう。受けれた側は職も与えなくてはなりません。相当混乱して自滅しますよ」
そこに居合わせた者は『なるほど!』と唸った。
さすがは英雄の息子だ。
人間の服をはぎ取り、裸にして恥辱を与え荒野に放した。
だが王族には王家を示す宝だけは持たせてやった。
これを取り戻しに攻められたら厄介ごとが増えるとの考えだった。
しかも、人間側も王族を受け入れるというのは混乱を招くだろう。
チャブチの肉体のコントロールが徐々に彼に奪われ、ボクはただの意識だけの存在となって行った。
つまりこう言うことだろう。
チャブチの肉体にはチャブチとボクの二つの魂が宿ってしまったのだ。だが、もともとのチャブチの魂が肉体の主導権を持っていた。
しかし人間奇襲でチャブチは意識を失い、そのスキにボクの魂は肉体の主導権を奪った。彼の魂は途中で意識を取り戻したのかも知れないが、一度奪われた主導権をなかなか取り戻せず、あの一騎討ちでようやく主導権を奪い始め、コントロールしはじめたのであろう。
彼は、コノハを引き取ったが寝食を共にせず、ただ遊び相手といった感じにしかしなかった。ボールを放り投げてやったり、帯を揺らしてじゃらしてやったりするだけだ。
コノハは彼の性器に触れようとしたが、それを強く叩くと、もう触ろうとはしなくなった。
まるで動物を躾けるようだった。
そんに中、チャブチは国元の母に手紙を書いた。
「お母さん、任務は成功し我々は巨大な城と領土を手に入れました。この要衝の地を一度見に来ませんか? 子供たちもここで生活させ将来の勉強にさせたく思います。私は遠慮申し上げたのですが義父上が人間の邸宅で一番大きいものを下さいました。ここで共に暮らしませんか? 実は私、父上の仇を討ち果たしました。彼は父の首を持っていましたので、母上立会いの元、埋葬式もしたいと思います。甚だ勝手な話しですが、これに免じて今までの無礼、親不孝に目をつぶって頂きたく思います」
この手紙に母ユキの心も雪解けし、すぐにピンクやボクが集めた側室たちにドレスを着せ、子供たちに正装をさせて城に向かって馬車を走らせた。
彼女たちの馬車が付き、一家全員彼の前に並ぶと、チャブチは母の前に跪きその大きな体を低くして母の顔よりも首を下に下げた。
「今までの親不孝お許し下さい」
母ユキは息子が改心したと思ったのであろう。目に涙をためて彼の肩に触れた。
「親子じゃないの……」
許された彼は立ち上がって母に微笑みかけ、そして妻達の方を見た。
……いや、ピンクだけ見つめていた。
そして人目をはばからず彼女に抱きついた。
「もう、またはじまった……」
とピンクは言ったがずっと強く抱きしめた。
その内に彼からは鼻をすする音が聞こえた。
「……チャブチ??」
「……グズ。……ピンク」
「本当にチャブチなの?」
「ああ」
一声だけだった。
もしもボクなら「キミの情けない夫だよ」とか、「今でもキミに夢中なんだ」とか言ったのかもしれない。
ただ、チャブチは違った。「ああ」の一言で彼女に全て伝わると信じていたのだ。
彼女はそう言われてチャブチの背中に手を回した。
チャブチはピンクの手を引いて大きな屋敷にはピンクと、ピンクの生んだ子だけ入れ、ジュンやキャラ、コノハには敷地内に並ぶ小さい屋敷にそれぞれ案内しそれを与えた。
子供たちにも順列をつけ、ピンクの生んだ子供以外とはなかなか会おうとしなかった。
チャブチはピンクに言った。
「なぁ、ピンク。ボクが間違っていた。離縁してくれないか? キミだけじゃない。側室たちもみんな家に帰すつもりなんだ。でないと一族に示しがつかん。コボルド族始まって以来の離縁したものだ。ボクは歴史に悪名を残すだろう。バカな僕にはちょうどいい」
ピンクはチャブチに抱きついた。
「そんな! あなたを嫌いと言ったのはウソなの! そんな気はないの。だって愛してるんだもの。どんなあなたでも!」
しかし、チャブチはピンクの肩を掴んで自分の身から離した。
「いや、言ったではないか。一族に示すためだ。ボクを見限って実家に帰ってくれ」
そう言って、彼女と子供たちを義父シルバーの家に帰した。
一家暮らしたのは僅かに二日ばかり。
チャブチがなぜそんな行動に出たのか、ボクばかりかピンクすら分からなかったであろう。
次にチャブチは側室たちを集めた。
「君たちにヒマをとらせたい。実家に帰ってくれたまえ。ボクは一族の長だ。ようやく気付いた愚かな男だ。長が側室をとるなどありえない話なのだ。しかし、この与えた屋敷にいたければいてもいい。だがもう君たちを抱こうとはしないだろう」
と伝えた。コノハは女児を生みチャブチが変わってしまったことを嘆いてそれを抱いて山に帰った。
キャラもまだ若く未来があったので子供を連れて実家に帰りやがて再婚した。
ただ、ジュンだけはピンクの妹のように過ごした数年間。これからも同じようにしたいと言うことで邸内の小さい屋敷に残ることに決めた。
チャブチは出て行った妻に多額の慰謝料を払ったがコノハの行方は分からずじまいだった。
そして、国中に自分は離縁したと公表した。自分が間違っていたと大々的に伝えたのだ。
これにてチャブチの女性問題は完全に片付いてしまった。
チャブチは独身となって団長職をもくもくとこなしたのだった。
さすがはブラウン将軍の息子。見事な裁きだった。
ボクはこの問題を解決しようと考えたが、人道的問題とかいろいろ考えてしまい、無理だった。
だがそもそもハーレム自体が人道的でない。
彼がしたことも正しいとは言えないが、一族のためにはこの方法が最善だったのこも知れない。
全くボクの数年はいったいなんだったんだろう?
チャブチの意識がハッキリしてれば叔父も死ぬことなかったんだろう。
やっぱりボクは「のび犬」なのかなぁ……。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる