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転生の章 決戦篇
第37話 母への手紙
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深夜にたいまつをつけた黒い馬車が砦を出て行った。
妻を……。ピンクを乗せた馬車が……。
ボクはそれを砦の壁の上から見送ることしかできなかった。
自分のテントに戻り、力を失ってドッカリと寝台に音を立てて座った。
そこに、コノハがボクの肩によじ登って絡みついて来たが、ボクは下を向いてふさぎ込むことしかできなかった。
ボクに反応がないので、彼女はボクの腰に絡みついて性器を触り始めた。
すぐにボクはその気になってまた交わってしまい、情事を終え平静になると、またやってしまったと反省した。
このままではピンクに完全に嫌われてしまう。
ボクはもうどうしようもなくなって、母ユキに執り成してもらおうと正直に手紙をしたためることにした。
「お母さん、久しぶりに書をいたすことをお許しください。ボクは今戦場に出ています。そこで女を拾いました。それを叔父に咎められ、悪びれないでいたら、叔父は自殺してしまいました。そして、今日ピンクに女のことが露見してしまい、彼女を怒らせてしまいました。彼女は離縁するといいました。ボクはどうすればよいのでしょう? 昔、お母さんに叱られたときに素直に聞いておけば叔父も死なず、ピンクもこんなことを言わなかったのでしょう。ボクはピンクさえいればそれでいいのです。側室も家に帰してもいいです。しかし、もう子供もいますし、おそらくここにいる拾った女もすでに懐妊していると思います。ボクの身持ちの悪さです。ですが子供たちには罪はありませんのでどうにもなりません。どうか、お母さん、ピンクに離縁を考え直すように言っていただけませんか?」
その手紙を早馬で飛ばすと、次の日には母ユキの元に届いていた。
母は手紙を見て天を仰いで嘆息した。
「彼のために一族が隆盛し、彼のために一族がダメになっていく……」
母は手紙をたたみ、ボクの屋敷に向かった。
外には黒い馬車が止められすでにピンクは帰ってきているようだった。
母を見ると、子どもたちが寄ってきて抱き着いて来た。
母は孫たちの頭をそれぞれ撫でてやって、家の中に入って行った。
ピンクはイスに座ってボウっとしていたが、母に気付いて立ち上がって一礼した。
「お義母さま。気付きませんで……。申し訳ありません」
母はその横に進んでピンクの手を握ると共に座って握った手を自分の膝の上においた。
二人はしばらくそのまま。
ピンクはうつむいて、ボクとのことを母に相談したのだ。
「私……。チャブチにひどいことを言ってしまって……。そんな気持ちないくせに離縁なんて……」
だが母は愉快そうに笑った。
ピンクは何が面白いのか分からなかったようだった。
「あら、いいじゃない離縁」
ピンクは驚いて「え?」と言った。
自分の不手際だ。義母に嫌われても仕方がないとも思ったが、母の言葉はその逆だった。
母はピンクにボクからの書簡を見せた。
「ごめんね。息子の教育が悪過ぎたわ。でもあなたのことは大好きみたいね。こらしめるために孫も、ジュンも、キャラも連れてワタクシのお屋敷にいらっしゃいな。貴女たちを全員収容するくらいわけないわよ。もうあの英雄をみんなで見限っちゃいましょう。うふふふふふ」
ピンクは母の真意がわかり、二人は顔を見合わせてイタズラっぽく笑った。
それからボクは母からの返信がないことでイライラしていた。
コボルドの副団長を呼んで動きが機敏で優秀なスパイを三人も借りた。
「閣下は人間の城にこやつらを忍び込ませようと言うのですな。なるほど。見つかれば大騒ぎですが、彼らならやってくれるでしょう」
「いや、違う……」
「……と、おっしゃいますと?」
「母だ。母ユキが何をしているのか? 手紙の返事が返ってこない。病気なら病気と返信してくるだろうがそれも無い。悪いが母、そして正妻のピンクが何をしているか探ってきてくれ。もしも、ピンクに男の影があったらそれも教えてくれ!」
スパイたちはすぐに国元に走って探り始めた。
彼らが見たものは、まるで貴婦人の旅行のように、楽しそうに荷車に家財を積んで、先のコボルド将軍夫人の家に家移りしている様子だった。
彼らはそれをボクに伝えてきた。
みんなボクを見限って出て行ってしまい、屋敷の中にはいないと言うことを。
そしてどうやら母の家にいるらしい。
もう、どうすることも出来ない。為す術無しだ。
妻たちも母も、もうボクが嫌いになってしまったのだ。
ボクはひとりぼっちだ!
やきもきして、戦でもかなり熱が入ってしまい、敵の重騎兵に単騎で斬り込みを敢行し大こん棒で数十騎殴り倒した。
ホブゴブリンたちはボクの勇猛さに拍手を送ってくれたが、一番認めて欲しいはずの義父は、またも眉毛を吊り上げて叱ってきた。
「そんなもの、大将がする戦じゃありません!」
もうどうすりゃいいのか?
父を失い、叔父を失い、ピンクや側室たちに嫌われ、義父だってピンクがそんな様子だったらボクのことを放り投げるに違いない。
一族の中に居場所がなくなり、自信がどんどん失われていってしまうことを感じた。
妻を……。ピンクを乗せた馬車が……。
ボクはそれを砦の壁の上から見送ることしかできなかった。
自分のテントに戻り、力を失ってドッカリと寝台に音を立てて座った。
そこに、コノハがボクの肩によじ登って絡みついて来たが、ボクは下を向いてふさぎ込むことしかできなかった。
ボクに反応がないので、彼女はボクの腰に絡みついて性器を触り始めた。
すぐにボクはその気になってまた交わってしまい、情事を終え平静になると、またやってしまったと反省した。
このままではピンクに完全に嫌われてしまう。
ボクはもうどうしようもなくなって、母ユキに執り成してもらおうと正直に手紙をしたためることにした。
「お母さん、久しぶりに書をいたすことをお許しください。ボクは今戦場に出ています。そこで女を拾いました。それを叔父に咎められ、悪びれないでいたら、叔父は自殺してしまいました。そして、今日ピンクに女のことが露見してしまい、彼女を怒らせてしまいました。彼女は離縁するといいました。ボクはどうすればよいのでしょう? 昔、お母さんに叱られたときに素直に聞いておけば叔父も死なず、ピンクもこんなことを言わなかったのでしょう。ボクはピンクさえいればそれでいいのです。側室も家に帰してもいいです。しかし、もう子供もいますし、おそらくここにいる拾った女もすでに懐妊していると思います。ボクの身持ちの悪さです。ですが子供たちには罪はありませんのでどうにもなりません。どうか、お母さん、ピンクに離縁を考え直すように言っていただけませんか?」
その手紙を早馬で飛ばすと、次の日には母ユキの元に届いていた。
母は手紙を見て天を仰いで嘆息した。
「彼のために一族が隆盛し、彼のために一族がダメになっていく……」
母は手紙をたたみ、ボクの屋敷に向かった。
外には黒い馬車が止められすでにピンクは帰ってきているようだった。
母を見ると、子どもたちが寄ってきて抱き着いて来た。
母は孫たちの頭をそれぞれ撫でてやって、家の中に入って行った。
ピンクはイスに座ってボウっとしていたが、母に気付いて立ち上がって一礼した。
「お義母さま。気付きませんで……。申し訳ありません」
母はその横に進んでピンクの手を握ると共に座って握った手を自分の膝の上においた。
二人はしばらくそのまま。
ピンクはうつむいて、ボクとのことを母に相談したのだ。
「私……。チャブチにひどいことを言ってしまって……。そんな気持ちないくせに離縁なんて……」
だが母は愉快そうに笑った。
ピンクは何が面白いのか分からなかったようだった。
「あら、いいじゃない離縁」
ピンクは驚いて「え?」と言った。
自分の不手際だ。義母に嫌われても仕方がないとも思ったが、母の言葉はその逆だった。
母はピンクにボクからの書簡を見せた。
「ごめんね。息子の教育が悪過ぎたわ。でもあなたのことは大好きみたいね。こらしめるために孫も、ジュンも、キャラも連れてワタクシのお屋敷にいらっしゃいな。貴女たちを全員収容するくらいわけないわよ。もうあの英雄をみんなで見限っちゃいましょう。うふふふふふ」
ピンクは母の真意がわかり、二人は顔を見合わせてイタズラっぽく笑った。
それからボクは母からの返信がないことでイライラしていた。
コボルドの副団長を呼んで動きが機敏で優秀なスパイを三人も借りた。
「閣下は人間の城にこやつらを忍び込ませようと言うのですな。なるほど。見つかれば大騒ぎですが、彼らならやってくれるでしょう」
「いや、違う……」
「……と、おっしゃいますと?」
「母だ。母ユキが何をしているのか? 手紙の返事が返ってこない。病気なら病気と返信してくるだろうがそれも無い。悪いが母、そして正妻のピンクが何をしているか探ってきてくれ。もしも、ピンクに男の影があったらそれも教えてくれ!」
スパイたちはすぐに国元に走って探り始めた。
彼らが見たものは、まるで貴婦人の旅行のように、楽しそうに荷車に家財を積んで、先のコボルド将軍夫人の家に家移りしている様子だった。
彼らはそれをボクに伝えてきた。
みんなボクを見限って出て行ってしまい、屋敷の中にはいないと言うことを。
そしてどうやら母の家にいるらしい。
もう、どうすることも出来ない。為す術無しだ。
妻たちも母も、もうボクが嫌いになってしまったのだ。
ボクはひとりぼっちだ!
やきもきして、戦でもかなり熱が入ってしまい、敵の重騎兵に単騎で斬り込みを敢行し大こん棒で数十騎殴り倒した。
ホブゴブリンたちはボクの勇猛さに拍手を送ってくれたが、一番認めて欲しいはずの義父は、またも眉毛を吊り上げて叱ってきた。
「そんなもの、大将がする戦じゃありません!」
もうどうすりゃいいのか?
父を失い、叔父を失い、ピンクや側室たちに嫌われ、義父だってピンクがそんな様子だったらボクのことを放り投げるに違いない。
一族の中に居場所がなくなり、自信がどんどん失われていってしまうことを感じた。
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