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転生の章 決戦篇

第30話 援軍到着

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ボクは自分の幕舎に戻ると、もう叔父がいないことを思ってベッドに突っ伏してまた泣いた。
コノハはそんなボクの体をずっとなで続けてくれた。
幾分心も落ち着き、やがてそのまま子供のように寝てしまった。
そして夜中目を覚まし、他の妻たちにも会いたくなって義父のシルバーに向けて書面を送った。

「叔父ゴールドが乱心して自害しました。これでは軍をまとめるのも難しく思います。そこで義父シルバー様にもご出馬いただきたく思います。しかし、私はあまりに悲しく一度国に帰りたく思いますがいかがでしょうか?」

とのようにしたためた。
その頃、義父シルバーはゴブリンの兵士500名を率いて道中を進んでいた。
初戦のゴブリン兵を失った知らせを受けて、増員の兵を自ら率いてきていたのだ。
その道すがら書簡を受け取り、中を検めた。

「なるほど。団長もゴールドの死がよほど心痛なのであろう。しかし今は戦の真っ最中だ。私が行くまで帰還の儀、暫時お待ちくださいと伝えたまえ」

使者はその返事を持ち帰り、ボクに伝えてきた。


その次の日、義父シルバーが率いる軍勢が入って来た。
ボクはそれを喜んで迎えると、義父シルバーは開口一番、

「では、ゴールドに会いに行きましょうか。案内してくだされ」
「あ、は、はい……」

挨拶もそぞろに叔父の墓へ案内した。
彼は墓の前で崩れ落ち、墓石を抱いて「おう! おう!」と大声で泣いて落涙した。
ボクも叔父を思い出して一緒になって泣いてしまった。義父は自分のマントを脱いで墓にかけた。

「ゴールド。寒かろう。なぜ先に逝った……。まだチャブチは将軍になっていないではないか。その行く末を見ながら将来ともに老人になって……ウグ……。酒を呑もうと誓ったのに……」

義父はしばらくそのままだった。
戦友である叔父に対し余りの哀しみだったのであろう。
叔父は名将だ。コボルド族にとって重大な損失。
あまりの無念であったに違いなかった。
やがて義父は立ち上がり、ボクに向かって手を出してきた。

「ゴールドは遺書を残しておりませなんだか?」
「う、うん。乱心だったから……」

義父にあの諫状を見せたら何を言われるか分からない。
ボクは見せるつもりは無かったが、義父は全て見通していた。

「まさか。そもそも乱心と言うのがおかしい。あやつは人間の計略にかかり、落石の計で巨石に腕をはさまれましたが、冷静に自分の刀で己の腕を切り取った男ですぞ? チビ、クロ、ポチ。なにか知らんか?」

今度はボクの後ろに控えている三人の方に尋ねると、ポチがモジモジしながら小さい声で答えた。

「だ、団長が……」

そのひと言で充分に義父に伝わったが、クロもその後に続いた。

女性にょしょうを陣中に入れまして」

義父シルバーは眉を吊り上げて、なおも手を出した。
狼顔の義父だ。怒った顔がものすごく恐ろしい。
仕方なくボクは胸に手を突っ込んで叔父の遺書を出した。
義父はそれを一読した途端、ボクの横面を殴りつけてきた。

「ぬぬぬぬぬ! いい加減にせんか! この獣!」

ボクは殴られた頬をおさえながら叫んだ。

「な、なに!? け、獣だと?」

功績あるボクに対し、義父と言えどもあんまりだ。
少しばかり団長の趣味を理解して貰いたい。
年寄りたちは何でもかんでもボクに押し付け、挙げ句の果てに獣とは言い過ぎだと思った。

「自分の快楽のために叔父を殺したか! この大罪人!」

義父は、なおも罵った。
このままでは大ゲンカになると、ポチとチビは義父の体を押さえた。

「ふ、副団長。どうか、落ち着いてください」
「そうです。今は戦の真っ最中。参謀長が亡くなって、団長と副団長が不和とあっては、敵に利するばかりです」

二人はそう言ったが、クロだけはジッとボクを睨んでいた。
ボクは義父にもクロの友情のなさにもムカついて墓を出て近くにあったゴブリンのテントを蹴り壊した。

「ま、待たんか! チャブチ!」

義父の声が背中を追いかけてきたが無視して自分の幕舎に戻った。
そして、左右の警護のゴブリンに命令した。

「体調が思わしくない。気分が優れぬ。参謀長の死が響いておる。例え副団長でも入れるでない」

そう言うと、ゴブリン達は敬礼した。
ボクは幕舎の入り口を閉じ、中に引っ込んでコノハを抱いて癒しを求めた。


コノハはピュアだ。とても純粋な少女。
ボクだけに心を許している。ボクは彼女に言葉を教えた。
彼女の理解力は高くあっというまに会話できるまでになっていた。

「チャブチ。一緒に山に行くか?」
「いやぁ。山には行かないよ。昔は山で暮らしてたけどね」

「そうなのか?」
「逆にコノハ。街で一緒に暮らそう。街は楽しいぞ?」

「そうか? じゃぁ、そうしよう。」

ボクは完全にコノハに骨抜きにされてしまった。最初は遊びのつもりで、戦が終わったら山に帰してしまおうと思っていたが彼女なしの生活が考えられなくなってしまった。
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