上 下
6 / 47
転生の章 幼児篇

第5話 奇襲急襲

しおりを挟む
ブラウン将軍が就寝し、二時間ほど経ってからだった。

チン! チン! チン! チン!

鐘を叩く音だ。この鐘はコボルド族の伝統のものでコボルド族にしか音が聞こえない。ブラウン将軍はガバッと跳ね起きて大きなこん棒を手に取って櫓に駆けて行った。
このこん棒は木の中に鉄芯が埋め込まれて、先端の膨れたところには鉄の玉が十数個うずめられていた。

「何か見えたか!」
「はい! たいまつが見えます。東の斜面です!」
「20人ほどついてこい!」

戦士をまとめてブラウン将軍は火の光の方に向かって行った。
コボルド族の強みは足の裏にある肉球だ。犬とは違い爪もしまえる。
これで足音を立てないように進めるのだ。ブラウン将軍が東の斜面まで来て、たいまつの火をみると四人の戦士たちだった。チャブチが見た四人だ。彼らは正確に集落の方に向かってゆく。
ブラウンはそこに戦士たちの身を伏せるよう手で合図し、奇襲をかけることにした。

四人の戦士が斜面を登り切り、こちらの部隊に背中を向け集落への道を歩き始めた時だ。

「かかれ!」

おおおおーーーーー!!!
とコボルドの戦士たちが喚声を上げながら立ち上がった。四人の戦士はあっという間にパニックに陥った。
自分たちが奇襲を仕掛けようとしてかえって自分たちが奇襲をかけられたのだ。

「クソ! 向こうにも備えがあったぞ!」

しかし、細い道。急に態勢を変えられない。そこにダメ押しにブラウン将軍が

うぉーーーー!!

と両手を上げ吠えながら立ち上がった。普通のコボルドの二倍。さらに上げられた腕で星明かりが消えるほど。
こんなコボルド見たことがない!
四人の戦士は完全に面食らってしまった。
一人が負けを悟って滑るように斜面を下って行った。
それをブラウン将軍は棍棒で指して指示をした。

「三人であれを追え!」

そう言ったが早いか、三人の足の速い戦士たちが彼を追って行った。

ボグン!

という音が聞こえた。逃げたものの頭をこん棒でかち割ったようだった。

「な、なんだ! これがコボルドのブラウン将軍か!」

人間たちが月明かりを頼りに見て見ると自分たちの二倍の大きさ。しかも彼が率いる軍は統率がとれている。数も多い。
さらに地の利はコボルド側にある。どれを取っても勝ち目などない!

「どうするアブラム!」
「オレに捕まれ!」

一人は近くにいたので彼の手を握れたが、もう一人は遅れてしまった。
アブラムと言われた男は、素早く魔法を使って空へ飛びあがった。

「くそう。移動の魔法。逃がしたか……」

そう言いながら、残った一人に大こん棒を叩き下ろして殺した。

「しかし、向こうにはやはりこちらを攻める腹積もりがあるらしい。明日朝、集落を移動する。ゴールドがいる砦に合流しよう」

ブラウン将軍は戦士たちをまとめて凱旋した。

ブラウン将軍は先ほど倒したばかりの敵に今日の夜襲はもうないとふんだ。
しかし、それは誤算だった。

アブラムの使った移動魔法が降り立った場所は、山の下にあるキャンプだった。
そこには今日、ブラウンが攻め落とした砦の兵士たちがいた。アブラムもそこに人がいるとは思わなかったが訳を聞くとどうやらコボルドに砦を取られたらしい。
そこでアブラムはしめたと思った。彼らにくすぶるコボルトへの恨み。それなら説得は簡単だった。

「コボルドの集落を襲う! 今日はもう夜襲がないと思っているだろう。今なら集落を簡単につぶせる!」

そのキャンプには武器があった。いしゆみや油、槍に剣。
兵の数は100はいる。数でも勝てる!
彼らはすぐに火矢の準備を整え、今度はたいまつをつけず、月明かりを頼りにコボルドの集落に向かって行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

バスト105cm巨乳チアガール”妙子” 地獄の学園生活

アダルト小説家 迎夕紀
青春
 バスト105cmの美少女、妙子はチアリーディング部に所属する女の子。  彼女の通う聖マリエンヌ女学院では女の子達に売春を強要することで多額の利益を得ていた。  ダイエットのために部活でシゴかれ、いやらしい衣装を着てコンパニオンをさせられ、そしてボロボロの身体に鞭打って下半身接待もさせられる妙子の地獄の学園生活。  ---  主人公の女の子  名前:妙子  職業:女子学生  身長:163cm  体重:56kg  パスト:105cm  ウェスト:60cm  ヒップ:95cm  ---  ----  *こちらは表現を抑えた少ない話数の一般公開版です。大幅に加筆し、より過激な表現を含む全編32話(プロローグ1話、本編31話)を読みたい方は以下のURLをご参照下さい。  https://note.com/adult_mukaiyuki/m/m05341b80803d  ---

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生

花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。 女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感! イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡

【18禁】ゴブリンの凌辱子宮転生〜ママが変わる毎にクラスアップ!〜

くらげさん
ファンタジー
【18禁】あいうえおかきくけこ……考え中……考え中。 18歳未満の方は読まないでください。

朝起きたら女体化してました

たいが
恋愛
主人公の早乙女駿、朝起きると体が... ⚠誤字脱字等、めちゃくちゃあります

処理中です...