知らない小説に転生したけどスキルを使って危険を回避してみせる!

家紋武範

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第2話 クラス、逃げ出した後

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 学校到着……。なにやら貴族学校らしいわね。クラス編成は緑の制服がC~Eクラスで男爵家と豪商。青の制服がBクラスで伯爵家と子爵家。赤の制服がAクラスで王室と公爵家、侯爵家。格差エグい。
 まぁ小説の設定ね。この作者がなにをしたいかわからないから、どう展開されるんだろう。

 私は伯爵家の娘だからBクラスね。
 教室に行ってみると、20名ほどの男女が。貴族の令息、令嬢たちね!
 青い制服はいわゆるブレザーだわ。私も10年前は学生だったから懐かしい!
 私の友達はいるのかしら。わからないからキョロキョロしちゃう。

「ごきげんようキティ」
「ステキな朝ですわね」
「本日も見目麗しいお姿ですわ」

 ひゃー。話しかけてくれたのはありがたいけど……誰?
 いや友達よね! 分かってる。


彼女たちのタグ……。

『モブ』『脇役』『貴族の娘』『ギャラリー』『ガヤ』

 なんてこと。分かりやす!
 この子達が頭角を現して主役級になることがないとはじめから分かったはいいけど、なんか哀れだわ~。しかも『ガヤ』。何かあったら騒ぎ立てる役ってことだわ。笑える。
 でも私キティのお友達なのよね。それはありがたい。早速お話をしてこの世界の情報を集めましょう。

「それより聞きまして?」
「なにかしら?」

「ウィンゼル先生ったら法学院中退だったんですってよ~」
「「「まぁほんとですの?」」」

「それよりうちの使用人。私が見てない間に、私のドレスに袖を通してましたの」
「まぁヒドい」

「即刻首にしました」
「まぁ~」

「はぁ~、昨日はあまり眠れずもう疲れましたわ」
「あら美容によくないですわよ」

 ……いやいや、つまんねぇ~。なにこの貴族の会話。って貴族か。ゴシップと愚痴ばっかり。こりゃ聞いてて疲れるぞ? もっと色恋でキャーキャー言ってるのかと思ってた。

「やぁおはようキティ」

 なに!? 男の声だと!? そして気安いぞ?

 振り返ると我々と同じ制服を着たキラキラな美丈夫! なにこのイケメンは! 短い金髪に輝く碧眼。目鼻立ちが整っており、体格も完璧!
 うーん。キャスリンの過去が分からないからどういう関係者か分からない。すいませんけど情報を見させていただきますね~。

『伯爵令息』『美男』『いとこ』『さわやか』『文武両道』

 おうっふ。なんて優良物件。しかも血縁かぁ。父方か母方かしらんけど。気安さから幼い頃から面識があると見た。
 しかも小さくフヨフヨ浮いてるタグがある。文字がよく見えん。もっと目をこらさないと……。

『意中の人』

 でたぁ! これが! この人が! キティの意中の人なのね! そりゃ~ここまでカッコよかったら惚れるでしょ。まだ名前も知らんけど。

「ロベルトさまぁ」
「ん? なんだい、アリア嬢」

 お。うちのガヤのお陰でこのイケメンの名前が分かったぞ。何やらつまらなそうな天気の話をしている。さすがモブ。でも顔つきからロベルト君に気があることが分かるわね。
 おやおや。ロベルト君の背中にまだ見てないタグが浮いておる。なになに?

『エロ』

 『エロ』かよ! でもまー男子だもんね。こんなイケメンに抱かれるんならいいのかな。意中の人だもんね。ロベルト君も私のこと憎からず思ってくれてるのかな? その辺は出てこないのね。後から出るとかそんな感じかな?



 ロベルト君の気持ちも分からぬまま始業のチャイムが鳴る。それと同時に茶色のスーツを着た先生らしき人が入ってきた。

「それじゃ席に着きたまえ。出席をとるぞ~。エリザベス嬢。エリザベス嬢~」

 返事がない。エリザベス嬢は休みかぁ。その時、またもやうちのガヤの声。

「先生ェー。エリザベス嬢はAクラスです」
「ん? あ、しまった。本当だな。スマンが日直はこれをAクラスに届けてくれんか?」

 日直。そんなシステムがあるのね~。私たちは貴族のお金持ちなんだから、そんなことは使用人にやらせなさいよ。

「先生!」

 お。ガヤAちゃん。なにやら挙手なさっております。

「今日の日直はキティです」
「おお、ウェンガオルトか。スマンが頼む」

 えええーーー! わたくしめがでございますか? つか私の名前、キャスリン・ウェンガオルトっていうのね! 初めて知りました~。

 仕方なく私は出席簿を受け取り、大貴族だけの教室であるAクラスへ向かった。
 なんかこちらは始業のチャイムが鳴ったのに、みんなでお話してるわ。先生がまだなのかしら?

「失礼しまぁ~す」

 恐る恐る中に入ってみると、皆さんの目がこちらに。その中でも一人だけ制服を着ないでピンク色のドレスを着たご令嬢が叫んだ。

「そなた、Bクラスのものであろう! 控えよ! 頭が高い!」

 うぇぇぇえええ!? 水戸黄門? そんなに爵位が上だと、こんな扱いをして来るの?
 私は恐れて頭を下げると、頭の上で声がする。先ほどのご令嬢が、近づいてきたようだった。

禽獣きんじゅうの如きそなたらがこのエリザベス・ゴルデニアバラグ大公爵令嬢がおられるAクラスに何用か? 本日は無礼を許す。恐れ入って申すがよい!」

 うごご! 怖い! エリザベス嬢はそういうお人だったのね? でもお母様も始めは怖い人かと思ったけど実は優しかった。ひょっとしたらエリザベス嬢も?
 しかし私のこの能力! 顔を見ないと発動できないんだ。しかも文字だから一瞬では見れてせいぜい一つだわ。

 ええいままよ! 申し上げるついでに顔を上げて彼女の一つ二つのタグを見てやれ。

「申し上げます。実はわたくしめの担任の先生が間違えてAクラスの出席簿を持ってきてしまったようでしたので、わたくしめはその出席簿の返還に参りました」

 と言いながら出席簿を両手で出して彼女の顔をご拝見。

『WARNING』『危険度MAX』『悪役令嬢』『公爵令嬢』

 !!!!!

 勢い余って四つも見ちゃったわ! 他にもたくさんあったけどもう無理。逃げなくては!

「これ出席簿です! 失礼しました!」
「む! わらわに手渡しとは無礼であろう!」

 いやもう聞いてられない。私はピューと音がするほどダッシュで逃げた。おそらく下半身は渦巻きになっていただろう。


 ドシン!


 痛たたたた! 何かにぶつかって尻餅をついちゃったわ。あばばばばば。

 顔を正面に向けてみると、同じく尻餅をついて顔をこちらに向けている男性!

 ま! なんてカッコいい! ネイビーブルーの髪に緑色の目。目鼻立ちはモロ好み! パーフェクト! まさにパーフェクトだわぁ。赤い制服だからAクラスね! Aクラスにはロベルト君以上のイケメンがおるとわ!
 こりゃ恋のイベントにご登場するに違いないわ!

 うーん、ロベルト君もカッコいい。実際のキティの意中の人だしね。でも私としては面識もないし、このイケメンがラブストーリーに参戦するならどうなるか分からないわ。

 でも、でもでもでも~。私には全てが見えるのよ。早速彼のタグを見せてもらいます!

 えーと『王太子』『第一王子』『イケメン』『筋肉質』『文才』『青髪』『優しい』『国民の信頼多』──。

 すげぇ。こりゃメインキャラ間違いなしだわ。王子ですと!? ひゃー!

 ん? でもまだタグがあるぞ?

『婚約破棄』

 うぼあー! 婚約破棄ですって? こんな優しくてカッコいいのに婚約破棄をしやがんのか、コイツ。

 ヤバい。もしもコイツに婚約されたら、私は婚約破棄の憂き目に会う。いいえそれだけじゃないわ。昨今の婚約破棄にはそれ相応の罰が付き物。

 身ぐるみはがされ国外追放が確変ワンセット。こんなやつに見初められたら大変だわ。

 でももうひとつタグがあるわね。肩の奥に見え隠れしてるあれは……?

『むっつりドエロ』

 クソかよ! こんな虫も殺さねぇような可愛らしい顔しておきながら『むっつりドエロ』とわ! やっぱ男なんてみんなそうなんだな!

 こんなやつに見初められたら、陵辱された挙げ句に婚約破棄。ないない。さよならー。

 私はBクラスに逃げ帰った。
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