仲の良かった幼なじみが急によそよそしくなった

家紋武範

文字の大きさ
上 下
2 / 3

第2話 彼女の場合

しおりを挟む
仲の良い男友達がいた。
いわゆる幼なじみ。

なんてことない、乱暴なヤツ。
すぐにギャーギャー騒ぐし子供っぽい。
私はお姉さんの気分だった。

でも、クラスの中では結構人気があるらしくて、そんなアイツと友人だってのが誇らしかった。
私の友達でもアイツを好きだってのが現れた。

それを聞いて初めて男を意識してしまったんだ。

言われてみれば、男らしいし、優しいし、面白い。
一緒にいてとても楽しい。
結局、いつの間にか気持ちを持って行かれていた。

好きになっていたんだ。

でも、今まで友達だったのに

「好きです!」
「オレも!」
「ハッピー!」

なんてことになるわけない。
意識すればするほど、アイツの顔が見れなくなってしまっていた。
そんな小学時代高学年。

五年生の時に初めてバレンタインチョコを手作りで作った。

「義理だから。照れくさいからここで食べちゃってよ」

セリフまで用意してた。そしてアイツの家の玄関のところまで行った。

……だけど……。

とてもじゃないけど、渡せるわけがなかった。
それ以前に最近全然話してない。
私の中ではすでに天使長クラスのきらびやかで直視すると目が焼ける存在になっていたんだ。

六年生の時もバレンタインチョコを作った。
親には友チョコだといいはった。
そして、天使長の玄関まで行く……。

でも天使長に渡せるわけもなく、一人電柱に隠れてチョコを食べた。
天使長の部屋の灯りがつくのを見ながら。

楽しい思い出。
小学校の四年生の時、二家族で山のロッジを借りてキャンプに行ったっけ。
アイツの弟妹三人とウチの弟とあわせて5人でアスレチックで遊んだ。
ワーワーいいながら……。
バーベキューでは肉の奪い合い。
夜は手持ち花火をみんなでクルクル回して遊んだ。キレイだった。

夜、一緒に布団を並べて寝た。体の大きい順って、アイツから順番にその次は私……。
その頃は好きって気持ちはなかったけど、夜中話をしてたのを覚えている。


どうしても、話せない。顔も見れない。
どうして? 中身は変わっていないのに……。

私の気持ちとは裏腹にどんどんと疎遠になって行くのがわかる。

ホントは前みたいにいっぱいおしゃべりしたいのに……。

中学校に入っても、いつも目でアイツを追っていた。
体育で校庭で走るアイツ。
廊下を友達と笑いながら通り過ぎて行くアイツ。
部活で汗を輝かせて頑張っているアイツ……。

ついつい間があくとアイツのことを考えてしまう。



「まぁ~てぇ~。どこへ行く~」


……ヤバ。とうとう幻聴まで聞こえるようになって来た。
こんなのありえない。
どうしてぇ~?

どうしてこんなに好きになっちゃったのぉ~?

家に帰って、ベッドの上にゴロリと横になった。
小学校の卒業アルバムを引っ張りだしてアイツの写真を眺めるっていういつもの日課……。
でも、もう何年も話してない。
普通の人よりもアイツと話してない。

昔は幼なじみっていう特権があったのに……。

明日こそ。

明日こそ、ちょっとでもいいから話してみようかな?
アイツが家を出る時間に合わせて、一緒に登校する!


次の日。学校に行こうと歩き出した。
いつも見ているアイツの家の玄関。
出て……来ないよね……。

ドキドキする。
も、もしも、今ドアが開いたら心臓止まっちゃうかも!

いやぁ、ダメ。
今日はちゃんと話をするんだから。

そう思っていたら、ドアが開いた。

開いちゃった。

それでアイツが出て来た!

た、立ち止まれ。足!

……でも……。止まらない。
無理。そもそも天使長を直視するなんて許されないのだ。

目が焼ける。
体が焦げる。

私は、少しだけ勇気を振り絞って、手を挙げてニッコリ微笑んだ。

でも、アイツはただ私を見つめているだけ……。

無理。

もう無理。

通り過ぎるしかなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

果たされなかった約束

家紋武範
恋愛
 子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。  しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。  このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。  怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。 ※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。

あなたに贈るチョコレート【短編集】

天野蒼空
恋愛
バレンタインに向けた短編集。 チョコレートみたいに甘かったり、ちょっぴり苦かったり。色んな味がございます。お好きな味もあるかも。 等身大の女の子達をお楽しみください。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

聖夜交錯恋愛模様

神谷 愛
恋愛
仲のいい友達同士でクリスマスにラブホ女子会を敢行した二人の結末。 恋人の欲しい同士の二人でラブホ女子会を行うことにする。二人は初めて入ったラブホを楽しんでいる内に場の空気に呑まれていく。 ノクターンとかにもある ☆とブックマークと応援をしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

チョコレートに込めた想い

ねむたん
恋愛
8人家族の長女として忙しい日々を送るさくら。ひそかに憧れる想い人、拓海にバレンタインデーに渡すために心を込めて手作りのフォンダンショコラを準備するが、家族に食べられてしまう。

処理中です...