仲の良かった幼なじみが急によそよそしくなった

家紋武範

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第1話 彼の場合

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仲の良かった女友達がいた。
いわゆる幼なじみというやつだ。

家もごくごく近所で、親との交流もあり、兄弟同士も仲がいい。
小さい頃は互いの家で食事会なんかもした。
バーベキューでアイツが大事に焼いてる肉をかっさらって大ゲンカに発展したこともあった。
鍋では鍋の中でお互いの箸をつかみ合い、親に怒鳴られたこともあった。

そんなの日常茶飯事だ。
オレたちは兄姉のように遊んだ。
釣りに虫取り。かくれんぼ、缶蹴り。

ところが、小学校5年の半ば頃になってアイツが急によそよそしくなった。
学校に行くのに誘いに行っても母親に先に行ってもらうように促された。
そのうちに誘いに行かなくなった。

遊び友だちもだんだん変わって行った。
食事会もひと月に三ヶ月に一回になり、そのうちに風化して行った。

中学校に上がる頃にはまったく遊ばなくなってしまった。


中学では互いに部活に入っていたのだと思う。
アイツのことはよく分からなかった。

中二の時。一人で廊下を歩いていると、前に見覚えのある背中があった。

アイツだ!

オレの胸がなぜかトキンと高鳴った。

久しぶりだった。
少し背が伸びて髪型も変わったアイツがひどく大人に感じた。

「まぁ~てぇ~。どこへ行く~」

ふざけた。軽いノリだった。
少しばかりアイツの背中がピクリと揺れたが振り向きもしない。
足のスピードも変わらずにただスタスタと進んで行く……。

「シカトかよ! おいおい無視すんな!」

……なんて言えなかった。なんか雰囲気が違っていた。
しかもしばらくぶりだったので、そんな軽いノリが通用しないのかもしれないと思った。

テンションだだ下がりだ。
友人達とバカ話していても

「ああ」
「あ、そう」
「ふうん」

と返答するだけ。
テンション低いと笑われたが、どうしても上がらなかった。

家に帰ってもその調子でなかなかスイッチが入らない。
ベッドに寝転んでただ一点を見つめていた。

アイツの顔を思い出しながら。

どんな顔をしていたっけ?
思い出すのは日に焼けた茶色い頬。
プンプン怒っている姿。
かくれんぼで不意打ちで見つかって慌てた表情。

そして笑っているあの顔。

そんなことを思い出してニヤけては、今日の態度を思い出してクヨクヨするしかなかった。
自分の中に新しく芽生えた感情を恋とは気づかなかった。

ただ、シカトしたアイツに対して自分の中で消化しきれなかった。
あんなに仲がよかったのに……。

向こうがオレを嫌いなら仕方ない。
こっちだって嫌おう。シカトしてやる。
フン。フン。フン。

と、幼稚だがそういう考えにまとまった。


次の日。学校へ行こうと玄関のドアを開けると、目の前をアイツが通り過ぎた。
オレの足は固まって顔が真っ赤になってしまった。
アイツはオレを一瞥すると、スッと肘くらいまで手を挙げて、口元が少しばかり上を向いたような気がした。

たったそれだけでオレのハートはドンコドンコと音を立てた。
そして、すぐにテンションはマックスになった。
踊りたい気持ちだ。

嫌われてないんじゃないか?

そう思った。
アイツの後ろについて歩き出した。
なにも、声をかけて一緒にあるけばいい。そう思うだろ?
しかし、そうもいかない。そこまでには何故か境界線があるような感じだったんだ。

そしてアイツは少し速度を上げた。
早足になったと思ったら10歩くらい走ったりしていた。
最初は手を伸ばせば届くような距離だったのに、あっという間に電信柱二本分くらい差をつけられていた。

やっぱ嫌われてんのかな?

そう思いながら教室の机につっぷした。
なんか授業も聞く気がねぇ……。
いや、それはいつものことだけど……。

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