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第109話 新しい命
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西丘の一件が片付いたが、鷹也には重い荷物があった。
もし、生まれてくる子どもが鷹也の子どもでなかったら、彩は出て行ってしまうという言葉。
それが約束。
彩のけじめ。
鷹也は気にしない振りをしてはいたが、内心は重かった。
なぜ愛し合う二人が離れなくてはいけないのか?
しかし自分でも気にせず鈴と同じく愛せるのか?
今は愛せると心から言える。
だが成長するにつれ、自分と似ていない顔を見続けることができるのか?
彩の判断が正しいのかも知れない。
わずかながらにそう思うこともあった。
それから鈴を連れ三人で、鷹也の職場付近の家探しをした。
最初はアパートに住んで、家を建ててもいいかもしれない。
運良く、シゲルの独身寮の近くに貸家が見つかり、そこで三人の生活を始めることにした。
彩は職場復帰と言うか、シゲルの手伝いを再開した。
シゲルも急に出来たひ孫に右往左往。
鈴もすばしっこく、1階の食堂にあるイスの下をくぐって遊び、シゲルを困らせた。
二人で話し合い、鷹也も週に5日は東京に小さいアパートを借り、そこで過ごし、週末は家族で新しい住まいで過ごす。
転勤までのわずかな時間だ。
それ以降はずっといれる。
三月の最後の週をもって、鷹也は新天地に移って来た。
最初は大忙しだったが、昔のように家に帰らないことはない。
0時を回っての帰宅となっても必ず家族のそばで眠った。
やがて時が満ち、子供が産まれた。
男児であった。
鷹也は、「鷲(しゅう)也(や)」と名付けた。
彩に「書き辛いんじゃない?」と笑われたが、自分の子だからきっと書けると言い切った。
生後しばらく立ち、鷹也は鷲也と自分の頬の粘膜を綿棒で軽くこすり、DNAの鑑定先に送った。
結果が来るまで落ち着かなかった。
鷲也が生まれてくるのと同じくらい落ち着かなかった。
そして結果が来た。
それを彩が開き、鷹也に手渡す。
結果は。
結果は……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【三年後】
結婚式場の控え室。
そこに鷹也が立っている。
椅子に座っているのはウェディングドレスを着た近野だった。
近野は鷹也の方を向いて尋ねる。
「私、綺麗ですか?」
鷹也は照れながらだが答えた。
「ああ。キレイだよ」
「よかった……」
そこでドアがノックされ、扉は開かれた。
そこにいたのは立花。
立花は鷹也がいたことに驚いて足を揃え、丁寧に頭を下げた。
「多村夫妻、この度はおめでとうございます」
もし、生まれてくる子どもが鷹也の子どもでなかったら、彩は出て行ってしまうという言葉。
それが約束。
彩のけじめ。
鷹也は気にしない振りをしてはいたが、内心は重かった。
なぜ愛し合う二人が離れなくてはいけないのか?
しかし自分でも気にせず鈴と同じく愛せるのか?
今は愛せると心から言える。
だが成長するにつれ、自分と似ていない顔を見続けることができるのか?
彩の判断が正しいのかも知れない。
わずかながらにそう思うこともあった。
それから鈴を連れ三人で、鷹也の職場付近の家探しをした。
最初はアパートに住んで、家を建ててもいいかもしれない。
運良く、シゲルの独身寮の近くに貸家が見つかり、そこで三人の生活を始めることにした。
彩は職場復帰と言うか、シゲルの手伝いを再開した。
シゲルも急に出来たひ孫に右往左往。
鈴もすばしっこく、1階の食堂にあるイスの下をくぐって遊び、シゲルを困らせた。
二人で話し合い、鷹也も週に5日は東京に小さいアパートを借り、そこで過ごし、週末は家族で新しい住まいで過ごす。
転勤までのわずかな時間だ。
それ以降はずっといれる。
三月の最後の週をもって、鷹也は新天地に移って来た。
最初は大忙しだったが、昔のように家に帰らないことはない。
0時を回っての帰宅となっても必ず家族のそばで眠った。
やがて時が満ち、子供が産まれた。
男児であった。
鷹也は、「鷲(しゅう)也(や)」と名付けた。
彩に「書き辛いんじゃない?」と笑われたが、自分の子だからきっと書けると言い切った。
生後しばらく立ち、鷹也は鷲也と自分の頬の粘膜を綿棒で軽くこすり、DNAの鑑定先に送った。
結果が来るまで落ち着かなかった。
鷲也が生まれてくるのと同じくらい落ち着かなかった。
そして結果が来た。
それを彩が開き、鷹也に手渡す。
結果は。
結果は……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【三年後】
結婚式場の控え室。
そこに鷹也が立っている。
椅子に座っているのはウェディングドレスを着た近野だった。
近野は鷹也の方を向いて尋ねる。
「私、綺麗ですか?」
鷹也は照れながらだが答えた。
「ああ。キレイだよ」
「よかった……」
そこでドアがノックされ、扉は開かれた。
そこにいたのは立花。
立花は鷹也がいたことに驚いて足を揃え、丁寧に頭を下げた。
「多村夫妻、この度はおめでとうございます」
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