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第95話 一緒に行かないか?
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「君はチームで活動していたろ? 君はいつも課員を褒めていたな。君が育てた人材は本社にも有益だが、次の土地に行く際に、何人か連れて行ってもかまわん」
「え? 社長。そんな前例にないことを……。しかし、行きたいものがいるかどうか」
「うん。そういうのはあるだろう。田舎だしな。チームで話し合って決めて欲しい。行くものは給料も上がるし、役も上がる」
「え? 本当ですか?」
「まぁ、出来るだけ良い人材で開拓したいからな。君が行けば利益もあがるだろうし。会社だって人材を育てるのに費用はおしまんぞ。いや、惜しいかな?」
「どっちですか。どっちですか」
「さぁ、課に戻ってチームに今の話をして来たまえ。いないのであれば、会社からいい人材をくっつけてやるぞ」
「いやぁ。社長。歳上の方ばかりでしょう?」
「まぁ、そうだろうな」
「却って扱いにくいような」
「家族にもちゃんと伝えたまえよ」
ピタリ。鷹也の動きが止まった。
先ほど彩とあんな話をしたばかり。
彼は重い口を開けた。
「実は、妻と離婚する事になりまして……」
「はぁ?」
「はい……」
「そうか。深くは詮索するまい。だが君は私にとって息子のようなやつだ。私も胸が痛いよ」
「すいません。失礼します」
思いがぶり返してしまった。
だが、凹んでもいられない。
ソファから立ち上がり、自分の課へと戻って行った。
近野は落ち込んでいる風の鷹也を心配して、戻って来た鷹也に近づいた。
「近野くん。みんなを集めてくれ」
「は、はい」
課員たちは鷹也の回りに集まった。
鷹也は一同をぐるりと見渡すと、例の話を始めた。
「春から私は次長へと昇格する」
『おお!』と課員たちはそれぞれガッツポーズをとった。
自分たちの働きもあり、鷹也は昇進するのだろう。
新しく課員も増員され、自分たちも上司へと昇格するかも知れない。
給料も上がるかも知れないと言う期待もあった。
それぞれが盛り上がったが、それを鷹也は片手を上げ制した。
「本社の次長だが、実は他県にある吸収合併した会社の支社長も兼務しなくてはならない。当面はあちら側の会社へ赴任することになるだろう」
途端、課員たちのテンションも下がってしまった。
鷹也がいるからこの課は盛り上がっているのだ。
それがチームが残るとは言え、他県に行ってしまうとなると行動が制約されるであろう。
「社長はこう言われた。私はチームで活躍していた。であるから、チーム員を引っ張って行ってもいいということだった。あちらに行けば役も給料も上がる。希望者がいれば連れて行きたい。どうだ?」
しかし、近野を含んだ全員が黙ってしまった。
本社にいると言う事はそれなりのステイタスがある。
中央から離れた他県に給料が上がると言っても行きたくはなかった。
「……まぁ、そうなるよな。何も今考えろとは言わん。少し考えてみてくれ。そして希望者は私に言ってはくれないか? 何にしろ今週末の金曜日に私はあちらを視察に出張してくる。希望者が早く出れば一緒に連れては行くが、今のところ一人でいくつもりだ」
鷹也はそう言って課員たちを解散させた。
みんなそれぞれ、思うところがあった。
鷹也と仕事はしたいものの、田舎の県に無理していく必要があるのか考えることにした。
「え? 社長。そんな前例にないことを……。しかし、行きたいものがいるかどうか」
「うん。そういうのはあるだろう。田舎だしな。チームで話し合って決めて欲しい。行くものは給料も上がるし、役も上がる」
「え? 本当ですか?」
「まぁ、出来るだけ良い人材で開拓したいからな。君が行けば利益もあがるだろうし。会社だって人材を育てるのに費用はおしまんぞ。いや、惜しいかな?」
「どっちですか。どっちですか」
「さぁ、課に戻ってチームに今の話をして来たまえ。いないのであれば、会社からいい人材をくっつけてやるぞ」
「いやぁ。社長。歳上の方ばかりでしょう?」
「まぁ、そうだろうな」
「却って扱いにくいような」
「家族にもちゃんと伝えたまえよ」
ピタリ。鷹也の動きが止まった。
先ほど彩とあんな話をしたばかり。
彼は重い口を開けた。
「実は、妻と離婚する事になりまして……」
「はぁ?」
「はい……」
「そうか。深くは詮索するまい。だが君は私にとって息子のようなやつだ。私も胸が痛いよ」
「すいません。失礼します」
思いがぶり返してしまった。
だが、凹んでもいられない。
ソファから立ち上がり、自分の課へと戻って行った。
近野は落ち込んでいる風の鷹也を心配して、戻って来た鷹也に近づいた。
「近野くん。みんなを集めてくれ」
「は、はい」
課員たちは鷹也の回りに集まった。
鷹也は一同をぐるりと見渡すと、例の話を始めた。
「春から私は次長へと昇格する」
『おお!』と課員たちはそれぞれガッツポーズをとった。
自分たちの働きもあり、鷹也は昇進するのだろう。
新しく課員も増員され、自分たちも上司へと昇格するかも知れない。
給料も上がるかも知れないと言う期待もあった。
それぞれが盛り上がったが、それを鷹也は片手を上げ制した。
「本社の次長だが、実は他県にある吸収合併した会社の支社長も兼務しなくてはならない。当面はあちら側の会社へ赴任することになるだろう」
途端、課員たちのテンションも下がってしまった。
鷹也がいるからこの課は盛り上がっているのだ。
それがチームが残るとは言え、他県に行ってしまうとなると行動が制約されるであろう。
「社長はこう言われた。私はチームで活躍していた。であるから、チーム員を引っ張って行ってもいいということだった。あちらに行けば役も給料も上がる。希望者がいれば連れて行きたい。どうだ?」
しかし、近野を含んだ全員が黙ってしまった。
本社にいると言う事はそれなりのステイタスがある。
中央から離れた他県に給料が上がると言っても行きたくはなかった。
「……まぁ、そうなるよな。何も今考えろとは言わん。少し考えてみてくれ。そして希望者は私に言ってはくれないか? 何にしろ今週末の金曜日に私はあちらを視察に出張してくる。希望者が早く出れば一緒に連れては行くが、今のところ一人でいくつもりだ」
鷹也はそう言って課員たちを解散させた。
みんなそれぞれ、思うところがあった。
鷹也と仕事はしたいものの、田舎の県に無理していく必要があるのか考えることにした。
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