84 / 111
第84話 発見しました!
しおりを挟む
鷹也と鈴も目的地に到着していた。町中の駐車場に車を止め、車から降りた鷹也は鈴をベビーバギーへ乗せ、帽子を被せて、腰から下に毛布を掛けた。
手慣れたものだ。鈴も楽しそうにベビーバギーの上で体を揺すった。
「しゅっぱつしんこー」
「おーう!」
ベビーバギーを押しながらめぼしい思い出の場所を巡る。
一緒に暮らしたアパート。
元のバイト先。
良く行ったコンビニ。図書館。
「ママいないねぇ」
「そーだな……」
もとより承知の上だ。彩はそう簡単に見つかるわけはない。
鷹也とて、希望はあったものの見つかるとは思っていなかった。
そして鈴にも思いを託していた。
子どもの感は鋭い。
それが彩の元へ導いてくれるのではないかという思いもあり、鈴に彩探しの旅へと連れてきたのだった。
「まだ旅行が楽しいのかも知れないなぁ」
「そうでちねぇ。スズたんも行きたかったなぁ」
「こらぁスズ。言ったろう? ママはずっとおうちを守るお仕事をしていたんだ。パパが上げたお休みなんだ。ホントはそっとしてやりたいんだぞ?」
「うん。そうでち」
「でも早く帰ってきて欲しいしなぁ」
「うん!」
しばらく街の中にある良く行った飲食店をベビーバギーを押しながら捜した。
昼食時になる頃、鈴が体を揺さぶっておりたがったので、鷹也は安全ベルトを外して鈴をその場に降ろした。
毛布をたたみ、ベビーバギーをたたんでいると、鈴が光線銃を鳴らして前進し始めた。
そして人をかき分けて進んでいく。
鷹也は驚いた。その場にたたみかけたベビーバギーを追いて鈴が飛び出さないよう走って追いかけた。
そして希望!
鈴が彩を見つけたのだと!
鈴は女性の後ろ姿に向けて光線銃を打ち鳴らした。
その女性は驚いて振り向く。
「す、スズちゃん?」
鷹也がその場所に駆け寄ると、笑顔で光線銃を鳴らす鈴。そこには驚いた顔の近野と立花が立っていた。
「えへへ。おねいたんとおにいたん見つけたでち~」
「おー! 近野くんと立花くんじゃないか! どうして、こんなところに? ははーん」
鷹也と鈴は妖しく笑う。
二人は恋人同士なんであろうという笑み。
近野は血相を変えて手を振って否定した。
最悪にも一番見られたくない相手に見られてしまったのだ。
何とか弁解するしか無かった。
「全然そんなんじゃ無いんです。立花くんに美味しいパンケーキのお店があるって言われて連れてこられてしまって……。私としては不本意なんです」
「いやいや、そんなに否定するとますます怪しいなぁ。はっはっはっ」
「ちょっと課長、勘弁して下さい」
「分かった。分かった。立花くんなら、そう言うのもありそうだしなぁ。おい立花。私から近野くんを奪わないでくれよ。はは。じゃ、週末を楽しんでくれ」
鷹也は鈴と手を繋いで行ってしまった。
もちろん“私から近野くんを”の意味は立花と近野が結婚して仕事のパートナーである彼女を家庭に入れないでくれという冗談だ。
別にそんな風になってしまっても仕方がないことだが、それくらい近野を重要なパートナーだと言う意志も伝えたかったのだ。
立花もそう言う意味だと思ったが、一人だけ別な意味に受け取ってしまった者がいた。
「私の近野くん……私の近野くん……」
赤い顔をして、去っていく鷹也の姿を目で追いかけている。
立花は少し面白くなかった。全否定され、自分がここに居るにも関わらず、別な方を見ている近野のことを。
手慣れたものだ。鈴も楽しそうにベビーバギーの上で体を揺すった。
「しゅっぱつしんこー」
「おーう!」
ベビーバギーを押しながらめぼしい思い出の場所を巡る。
一緒に暮らしたアパート。
元のバイト先。
良く行ったコンビニ。図書館。
「ママいないねぇ」
「そーだな……」
もとより承知の上だ。彩はそう簡単に見つかるわけはない。
鷹也とて、希望はあったものの見つかるとは思っていなかった。
そして鈴にも思いを託していた。
子どもの感は鋭い。
それが彩の元へ導いてくれるのではないかという思いもあり、鈴に彩探しの旅へと連れてきたのだった。
「まだ旅行が楽しいのかも知れないなぁ」
「そうでちねぇ。スズたんも行きたかったなぁ」
「こらぁスズ。言ったろう? ママはずっとおうちを守るお仕事をしていたんだ。パパが上げたお休みなんだ。ホントはそっとしてやりたいんだぞ?」
「うん。そうでち」
「でも早く帰ってきて欲しいしなぁ」
「うん!」
しばらく街の中にある良く行った飲食店をベビーバギーを押しながら捜した。
昼食時になる頃、鈴が体を揺さぶっておりたがったので、鷹也は安全ベルトを外して鈴をその場に降ろした。
毛布をたたみ、ベビーバギーをたたんでいると、鈴が光線銃を鳴らして前進し始めた。
そして人をかき分けて進んでいく。
鷹也は驚いた。その場にたたみかけたベビーバギーを追いて鈴が飛び出さないよう走って追いかけた。
そして希望!
鈴が彩を見つけたのだと!
鈴は女性の後ろ姿に向けて光線銃を打ち鳴らした。
その女性は驚いて振り向く。
「す、スズちゃん?」
鷹也がその場所に駆け寄ると、笑顔で光線銃を鳴らす鈴。そこには驚いた顔の近野と立花が立っていた。
「えへへ。おねいたんとおにいたん見つけたでち~」
「おー! 近野くんと立花くんじゃないか! どうして、こんなところに? ははーん」
鷹也と鈴は妖しく笑う。
二人は恋人同士なんであろうという笑み。
近野は血相を変えて手を振って否定した。
最悪にも一番見られたくない相手に見られてしまったのだ。
何とか弁解するしか無かった。
「全然そんなんじゃ無いんです。立花くんに美味しいパンケーキのお店があるって言われて連れてこられてしまって……。私としては不本意なんです」
「いやいや、そんなに否定するとますます怪しいなぁ。はっはっはっ」
「ちょっと課長、勘弁して下さい」
「分かった。分かった。立花くんなら、そう言うのもありそうだしなぁ。おい立花。私から近野くんを奪わないでくれよ。はは。じゃ、週末を楽しんでくれ」
鷹也は鈴と手を繋いで行ってしまった。
もちろん“私から近野くんを”の意味は立花と近野が結婚して仕事のパートナーである彼女を家庭に入れないでくれという冗談だ。
別にそんな風になってしまっても仕方がないことだが、それくらい近野を重要なパートナーだと言う意志も伝えたかったのだ。
立花もそう言う意味だと思ったが、一人だけ別な意味に受け取ってしまった者がいた。
「私の近野くん……私の近野くん……」
赤い顔をして、去っていく鷹也の姿を目で追いかけている。
立花は少し面白くなかった。全否定され、自分がここに居るにも関わらず、別な方を見ている近野のことを。
0
お気に入りに追加
129
あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。



ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる