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第74話 籠絡
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鷹也が自分を探している。
どういうことだろう。
鈴に何かあったのだろうか?
よりを戻したいと言うことかも知れない。
だがそんな甘いことは無いだろう。
一体なんだ。
一体なんだ。
考えても全く理由が分からなかった。
西丘は彩をお社の横の方へ連れて行くと、そこからは歩道が見えなくなった。つまり、歩道からも二人の姿は見えないと言うことだ。
そこで西丘は話し出した。
彩を都合のいい女にするための計略を。
「実は私、探偵でしてね」
「た、探偵さん?」
「あなたの元旦那さま。多村鷹也さまにご依頼を受けて、あなたを探していたんですよ」
「タカちゃんが、ど、ど、ど、どうして?」
「実は鷹也さま、再婚することが決まりまして、その奥さまとなられる方が少しうるさい方のようで」
「え? タカちゃんが再婚?」
話の途中で、ガックリと肩を落とした。
絶望だ。分かっていたことだが。
鷹也は鈴はまだ小さいので母親が入れ代わっても気付かないと言っていた。
鈴のために再婚して新しい母親を迎えるのであろう。
自分以外の母親。
見知らぬ鈴と血のつながりのない女。
鈴は小さいので母親が入れ替われば記憶が塗り変わってしまうかも知れない。
24時一緒にいるだけで気持ちは動くだろう。
一週間も仲良くすれば、大きく動くだろう。
ひと月も共に生活すれば母親だと思ってしまうかも知れない。
彩は自分が犯した罪を再度後悔し、西丘の前で涙を流した。
西丘はますます興奮した。
泣いている姿もとても良い。
もっともっと泣き叫ぶ姿が見たいと思ったのだ。
「それで、新しい奥様は慰謝料も養育費もとらずに離婚したことに不服でして。あなたにそれらと、連絡がつかなくなったことも含め、探偵料まで請求しようというお考えなんです」
「そ、そんな。タカちゃんはいいって言ったのに……」
「そうでしょうねぇ。しかし法律上、請求出来るらしいんですよ。慰謝料に300万、養育費を月々10万、探偵料を100万円請求するそうです」
「そ、そんなお金……」
そう言って彩は顔を伏せてまた泣いた。
愛している鷹也。
だが、彼は新しい妻を得て、自分を敵とみなしたことが哀しかったのだ。
そんな彩へ西丘は近づいて肩を抱いた。
「あッ……」
「ですがね、彩さん。私にかかってますよ。私が探せなかったと言えばこの話は消えてしまうでしょう。そんなことしなくてもいいというのなら別です。明日にも先方の敏腕弁護士が来て大金を請求するでしょう」
そして、肩の手を胸へと伸ばす。
「魚心あれば水心ですよ。あなたの対応次第で私も考えましょう」
そして、二度ほど胸に置いた手を動かすと、彩は身をよじって西丘から体を離した。
「あれあれあれ? いいんですか? 今言ったばかりですよ?」
「……あなたは、言わない代わりに、私に身を差し出せと言うんですか?」
「いやぁ。そう言ったら話がおかしくなる。先方に言わない代わりにお礼が欲しい。ただそれだけのことです」
彩は怒りでブルブルと震えた。
顔を赤くして涙を流す。
どうにもならない怒りなんだろう。西丘は勝ちを確信した。
「さぁアヤ。こっちへこい。そしてオレにキスをしろ。お前はそうしなきゃいけないんだ。今からオレとホテルに行くんだ」
彩がうなだれると、神社の玉砂利に涙の雫が落ち、濡れた石の色が変わった。
どういうことだろう。
鈴に何かあったのだろうか?
よりを戻したいと言うことかも知れない。
だがそんな甘いことは無いだろう。
一体なんだ。
一体なんだ。
考えても全く理由が分からなかった。
西丘は彩をお社の横の方へ連れて行くと、そこからは歩道が見えなくなった。つまり、歩道からも二人の姿は見えないと言うことだ。
そこで西丘は話し出した。
彩を都合のいい女にするための計略を。
「実は私、探偵でしてね」
「た、探偵さん?」
「あなたの元旦那さま。多村鷹也さまにご依頼を受けて、あなたを探していたんですよ」
「タカちゃんが、ど、ど、ど、どうして?」
「実は鷹也さま、再婚することが決まりまして、その奥さまとなられる方が少しうるさい方のようで」
「え? タカちゃんが再婚?」
話の途中で、ガックリと肩を落とした。
絶望だ。分かっていたことだが。
鷹也は鈴はまだ小さいので母親が入れ代わっても気付かないと言っていた。
鈴のために再婚して新しい母親を迎えるのであろう。
自分以外の母親。
見知らぬ鈴と血のつながりのない女。
鈴は小さいので母親が入れ替われば記憶が塗り変わってしまうかも知れない。
24時一緒にいるだけで気持ちは動くだろう。
一週間も仲良くすれば、大きく動くだろう。
ひと月も共に生活すれば母親だと思ってしまうかも知れない。
彩は自分が犯した罪を再度後悔し、西丘の前で涙を流した。
西丘はますます興奮した。
泣いている姿もとても良い。
もっともっと泣き叫ぶ姿が見たいと思ったのだ。
「それで、新しい奥様は慰謝料も養育費もとらずに離婚したことに不服でして。あなたにそれらと、連絡がつかなくなったことも含め、探偵料まで請求しようというお考えなんです」
「そ、そんな。タカちゃんはいいって言ったのに……」
「そうでしょうねぇ。しかし法律上、請求出来るらしいんですよ。慰謝料に300万、養育費を月々10万、探偵料を100万円請求するそうです」
「そ、そんなお金……」
そう言って彩は顔を伏せてまた泣いた。
愛している鷹也。
だが、彼は新しい妻を得て、自分を敵とみなしたことが哀しかったのだ。
そんな彩へ西丘は近づいて肩を抱いた。
「あッ……」
「ですがね、彩さん。私にかかってますよ。私が探せなかったと言えばこの話は消えてしまうでしょう。そんなことしなくてもいいというのなら別です。明日にも先方の敏腕弁護士が来て大金を請求するでしょう」
そして、肩の手を胸へと伸ばす。
「魚心あれば水心ですよ。あなたの対応次第で私も考えましょう」
そして、二度ほど胸に置いた手を動かすと、彩は身をよじって西丘から体を離した。
「あれあれあれ? いいんですか? 今言ったばかりですよ?」
「……あなたは、言わない代わりに、私に身を差し出せと言うんですか?」
「いやぁ。そう言ったら話がおかしくなる。先方に言わない代わりにお礼が欲しい。ただそれだけのことです」
彩は怒りでブルブルと震えた。
顔を赤くして涙を流す。
どうにもならない怒りなんだろう。西丘は勝ちを確信した。
「さぁアヤ。こっちへこい。そしてオレにキスをしろ。お前はそうしなきゃいけないんだ。今からオレとホテルに行くんだ」
彩がうなだれると、神社の玉砂利に涙の雫が落ち、濡れた石の色が変わった。
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