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第55話 探し物はなんですか?
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鷹也は看板にあった探偵事務所の駐車場に車を止めていた。
寝ている鈴を抱きかかえて事務所に入ると、清潔な雰囲気で白い床と壁に、少し大きめの観葉植物の緑色がさらに落ち着きを払っていた。
若い女性の事務員がソファにバスタオルを敷いて鈴を寝かせるように笑顔で言った。
その内に、所長と担当が話を聞くと言うことで、事務員が鈴を預り鷹也は一人、小さい応接室に入って行った。
「どうも、所長の丹高です」
「ニダカさん……。タンタカ探偵事務所じゃなかったんですね」
「はっはっは。よく言われますよ。こっちの若いのは西丘といいます」
「西丘です。よろしくお願いします」
所長がそう言うと、自分と同年ほどの若い男は頭をペコリと下げた。
「あの……妻が家出をしてしまいまして」
促されて座った後に鷹也はすぐさま切り出した。
鷹也は事情や妻の名前、旧姓、出て行ったときの服装。だが行くあてはないことを話した。
「奥様は旦那様に浮気を叱られて失意のうちに家でなされたのですね。写真などございますか?」
「え。ああ。これです」
鷹也はスマートフォンに画像をだし、担当の西丘宛にメール送信した。西丘はそれを見てお手の物だと自信満々に請け負った。
「ああ良かった。ではお願い致します」
鷹也が応接室を出る頃、鈴は目を覚まし、事務の女性と手と開いたり閉じたりする遊びをしていた。
そして安心している鷹也の顔を見て、自分も笑顔をこぼした。
何もなくただ彩を待つだけの日々だけじゃない。
出て行って数週間。
きっとまだ家族のことを忘れてなんていない。
それを探偵が探し出してくれる。
鷹也の気持ちは、彩の浮気告白以来ようやく安らいだ気持ちとなった。
思えばおかしいものだ。
自分が追い出した彩を捜してくれる業者を見つけて安心するなどと。
最初から許していればこんな思いになどならずにすんだのに。
だがそれは結果論だ。
彩が見つかれば良い。
見つかれば良い。
優秀であろう探偵の力を信じて待つことにした。
鷹也が事務所を出るのを、所長の丹高と担当の西丘は見送った。
鷹也の軽自動車が走り去るのを見ながら所長は西丘の方を叩いた。
「じゃ、西丘くん頼むぞ」
「お任せ下さい」
所長が事務所に入って行く。西丘は駐車場でもう一度、依頼人鷹也の妻の写真を見た。
「良い女じゃん。すぐに男に堕ちるチョロい女か。へへ」
とニヤ付きながら事務所に入って行った。
寝ている鈴を抱きかかえて事務所に入ると、清潔な雰囲気で白い床と壁に、少し大きめの観葉植物の緑色がさらに落ち着きを払っていた。
若い女性の事務員がソファにバスタオルを敷いて鈴を寝かせるように笑顔で言った。
その内に、所長と担当が話を聞くと言うことで、事務員が鈴を預り鷹也は一人、小さい応接室に入って行った。
「どうも、所長の丹高です」
「ニダカさん……。タンタカ探偵事務所じゃなかったんですね」
「はっはっは。よく言われますよ。こっちの若いのは西丘といいます」
「西丘です。よろしくお願いします」
所長がそう言うと、自分と同年ほどの若い男は頭をペコリと下げた。
「あの……妻が家出をしてしまいまして」
促されて座った後に鷹也はすぐさま切り出した。
鷹也は事情や妻の名前、旧姓、出て行ったときの服装。だが行くあてはないことを話した。
「奥様は旦那様に浮気を叱られて失意のうちに家でなされたのですね。写真などございますか?」
「え。ああ。これです」
鷹也はスマートフォンに画像をだし、担当の西丘宛にメール送信した。西丘はそれを見てお手の物だと自信満々に請け負った。
「ああ良かった。ではお願い致します」
鷹也が応接室を出る頃、鈴は目を覚まし、事務の女性と手と開いたり閉じたりする遊びをしていた。
そして安心している鷹也の顔を見て、自分も笑顔をこぼした。
何もなくただ彩を待つだけの日々だけじゃない。
出て行って数週間。
きっとまだ家族のことを忘れてなんていない。
それを探偵が探し出してくれる。
鷹也の気持ちは、彩の浮気告白以来ようやく安らいだ気持ちとなった。
思えばおかしいものだ。
自分が追い出した彩を捜してくれる業者を見つけて安心するなどと。
最初から許していればこんな思いになどならずにすんだのに。
だがそれは結果論だ。
彩が見つかれば良い。
見つかれば良い。
優秀であろう探偵の力を信じて待つことにした。
鷹也が事務所を出るのを、所長の丹高と担当の西丘は見送った。
鷹也の軽自動車が走り去るのを見ながら所長は西丘の方を叩いた。
「じゃ、西丘くん頼むぞ」
「お任せ下さい」
所長が事務所に入って行く。西丘は駐車場でもう一度、依頼人鷹也の妻の写真を見た。
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とニヤ付きながら事務所に入って行った。
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