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第53話 無邪気な一言
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次の日起きると、鷹也の横に鈴の姿はなかった。
女性の課員達を風呂に案内してタオルなどが入っている場所を教えていた。
鈴の行動に鷹也はホッとした。女性に気を使えない自分腹が立った。
リビングにいくと、課員達が寝癖一杯でヒゲを生やし、窓をあけて空気の入れ替えをしていた。
「課長。タバコは外っすかぁ~?」
「ああ。灰皿あるぞ? 出すか?」
「いやぁ、スズちゃんいるのに家の中で吸えないっしょ~」
そう言いながら課員達が出て行くので、自分も一緒になって出て行ったが、すぐに戻って来た。
「こ、近野くん!」
「あ。はーい」
リビングから出て来た近野は玄関に慌てながら立っている鷹也を見た。
一体なんであろうと思った時だった。
「た、タバコ一本くれ」
「え? あ。はーい」
タバコを切らしてしまったのだ。近野のタバコは鷹也と同じメーカー品。
それを受け取ると、鷹也は嬉しそうに外にいる二人の元に戻って行った。
朝日を浴びながら三人で紫煙を吹かす。
「係長、奥さんみたいですね」
と義岡が冷やかす。
「おいおい、なんてこと言うんだよ。それはそうと昨日はすまんな。助かったよ」
「あ~。全然大丈夫っすよ~」
「スズちゃん可愛いっすね~。お義父さん」
「オイ、ヤメろ」
立花にそう言いながら、三人で笑い合った。
貴重な休日を自分の為に使ってくれた課員達に改めて感謝した。
女性の課員達が朝食も用意してくれた。鈴は立花と近野の間に入り込んで食事をした。
とても気に入ったらしい。
だが、朝食が済むと近野以外は全て帰宅の路についた。
鷹也はタクシー代を出して、玄関先で課員達を送った。
その間、近野は洗い物を済ませ、そこに鷹也が頭を下げてきた。
「すまんな。近野くん。貴重な休日を」
「いえ。いつも仕事仕事で、たまにこういう主婦も楽しいです」
と、笑顔を見せた。そして、リビングに飾った飾りつけのオーナメントをとろうとすると、鈴が足にすがりついた。
「おねいたん。キラキラとっちゃだめでち」
「え? だっていつまでもつけておけないでしょ~」
「だめでち。だめでち」
「そう? パパに聞いてみたら」
「だめでち~」
そう言って、そこで足踏みをした。
よほどこの楽しい飾りつけが気に入ったのであろう。
近野も伸ばした手を引っ込めた。
「また付けたらいいと思うよ? スズちゃん、一緒に飾りつけとろうか?」
鈴はしばらく考えたが、ダダをこねるのも格好が悪いと思ったのか小さく頷いた。
近野は鈴の体を持ち上げて高いところの飾り物をとらせた。
鈴はそれをニコニコ笑いながら取り外した。
「あ~あ。おねいたんがおウチの人ならいいのに~」
「え?」
「そしたら、ずっと一緒にいれるのにねぇ」
「……そーだねぇ」
それを鷹也は近くで聞いていてドキリとした。
無邪気な子供の物言いであろう言葉。
ふと近野と目が合う。近野は恥ずかしがってうつむくと同時に鷹也はその目を飾りつけの方に移して逸らした。
女性の課員達を風呂に案内してタオルなどが入っている場所を教えていた。
鈴の行動に鷹也はホッとした。女性に気を使えない自分腹が立った。
リビングにいくと、課員達が寝癖一杯でヒゲを生やし、窓をあけて空気の入れ替えをしていた。
「課長。タバコは外っすかぁ~?」
「ああ。灰皿あるぞ? 出すか?」
「いやぁ、スズちゃんいるのに家の中で吸えないっしょ~」
そう言いながら課員達が出て行くので、自分も一緒になって出て行ったが、すぐに戻って来た。
「こ、近野くん!」
「あ。はーい」
リビングから出て来た近野は玄関に慌てながら立っている鷹也を見た。
一体なんであろうと思った時だった。
「た、タバコ一本くれ」
「え? あ。はーい」
タバコを切らしてしまったのだ。近野のタバコは鷹也と同じメーカー品。
それを受け取ると、鷹也は嬉しそうに外にいる二人の元に戻って行った。
朝日を浴びながら三人で紫煙を吹かす。
「係長、奥さんみたいですね」
と義岡が冷やかす。
「おいおい、なんてこと言うんだよ。それはそうと昨日はすまんな。助かったよ」
「あ~。全然大丈夫っすよ~」
「スズちゃん可愛いっすね~。お義父さん」
「オイ、ヤメろ」
立花にそう言いながら、三人で笑い合った。
貴重な休日を自分の為に使ってくれた課員達に改めて感謝した。
女性の課員達が朝食も用意してくれた。鈴は立花と近野の間に入り込んで食事をした。
とても気に入ったらしい。
だが、朝食が済むと近野以外は全て帰宅の路についた。
鷹也はタクシー代を出して、玄関先で課員達を送った。
その間、近野は洗い物を済ませ、そこに鷹也が頭を下げてきた。
「すまんな。近野くん。貴重な休日を」
「いえ。いつも仕事仕事で、たまにこういう主婦も楽しいです」
と、笑顔を見せた。そして、リビングに飾った飾りつけのオーナメントをとろうとすると、鈴が足にすがりついた。
「おねいたん。キラキラとっちゃだめでち」
「え? だっていつまでもつけておけないでしょ~」
「だめでち。だめでち」
「そう? パパに聞いてみたら」
「だめでち~」
そう言って、そこで足踏みをした。
よほどこの楽しい飾りつけが気に入ったのであろう。
近野も伸ばした手を引っ込めた。
「また付けたらいいと思うよ? スズちゃん、一緒に飾りつけとろうか?」
鈴はしばらく考えたが、ダダをこねるのも格好が悪いと思ったのか小さく頷いた。
近野は鈴の体を持ち上げて高いところの飾り物をとらせた。
鈴はそれをニコニコ笑いながら取り外した。
「あ~あ。おねいたんがおウチの人ならいいのに~」
「え?」
「そしたら、ずっと一緒にいれるのにねぇ」
「……そーだねぇ」
それを鷹也は近くで聞いていてドキリとした。
無邪気な子供の物言いであろう言葉。
ふと近野と目が合う。近野は恥ずかしがってうつむくと同時に鷹也はその目を飾りつけの方に移して逸らした。
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