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第46話 母の役割
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電車に揺られて45分。駅から歩いて10分。家に着く頃には20時過ぎだ。
鈴は鷹也の顔を見るなり
「パパだ~」
と飛びついて来た。鷹也はそれを抱きかかえる。
しかし、リビングには小さなウサギのお人形と、積み木が散乱していた。
「なんだスズ~。うさぎさんとパンダさん、ケンカでもしたのかぁ?」
「うん! うさぎさんが勝ったんだよ!」
「でもお片付けはちゃんとしないとなぁ」
「うん。スズたんできるよ。おねえちゃんだもん」
そういいながら、鈴は鷹也の腕からおりて自分のおもちゃを片付け始めた。
母親はテレビのリモコンを片手にソファで寝転んでいた。
「ああ、しんどい。スズの体力には勝てんわ~」
と愚痴をこぼす。
彩がいるころ部屋がきれいだったのは、彩はキチンとしていたんだなぁと思い知らされた。
母も孫に言って嫌われたくないのでそのままなんだろうと察知した。
自分が教えなくてはいけない。
風呂が沸いているので鈴と先に入るように母親に促され、鷹也は鈴をかかえて風呂に入った。
休暇中には何度もこなした仕事だ。
いい加減になれた。鈴も多少大きいので手がかからない。
シャンプーは鷹也がやってやらないとダメだが、体くらいは自分で洗う。そして、鷹也が体を洗っている時にはお風呂のおもちゃで遊んでいた。
ジョウロから水を蛇口にかけながら
「ママ今、どの辺にいるんだろうね~」
と、まだ旅行だと思っている。
「お土産ほちいなぁ~」
そう楽し気に言っていた。
鷹也は、早く妻を見つけなければいけないと思うものの、どうしていいのか分からなかった。手がかりがないのだ。かと言ってここで待っているわけにもいけない。
風呂から上がり、鈴を寝かしつけながらそう思った。
そして、いつの間にか鈴の横で眠りついていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
家では優しい父。会社では頼りになる課長。
鷹也はその日も自分の机に向かって仕事に取り組んでいた。
その横に近野が立つ。
「課長……」
「どうした? 近野係長」
「少しお話があります」
「ここじゃダメかね?」
「はい……」
近野に連れられ、小さい喫煙室に入った。
二人がやっとだ。中央に腰ほどの高さの灰皿がある。
満室の場合は、他の喫煙者は別の喫煙所に行くのがこの会社のルールだ。
二人は互いに電子タバコを取り出した。
近野は会社に入ってから、鷹也を真似て同じメーカーの電子タバコを買っていた。
鷹也のタバコが切れている場合は一本渡せる。自分が無い場合は一本貰える。
コミュニケーションを一つでも多くしようと言うわけだ。
二人は一服しながら話を始めた。
「土曜日に食事会って……課長、料理できるんですか?」
「いや出来ないけど……焼き肉でいいだろ?」
「ダメですよ……お子さん小さいんでしょ? 鉄板に手を伸ばしたりしたら……」
「……あ! そうか。実は女性たちに料理を頼もうとは思っていたのだ……。何か良い考えはないかね?」
近野は微笑んだ。まるで自分の思い通りになったと言わんばかりだ。
「じゃ私、少し早めに行きます。一緒に買い物しましょうよ。お子さんの好きなものは?」
「あ、えっと」
彩からの言葉を思い出す。
「お好み焼きだ」
「あ、ふーん。なるほど。子供だから紅しょうがとかダメですよね?」
「うん。そう」
「鉄板を出さないで、調理場で作りますよ。焼き肉も焼いたものをそこからなら出せるし。良いですかね?」
鷹也は近野のプランに飛びついた。
「ああ。いいとも! 助かるよ」
こうして土曜日のプランは決まった。
時間も昼頃に集合し、駅で待ち合わせて車で迎えに行くという形をとった。
鈴は鷹也の顔を見るなり
「パパだ~」
と飛びついて来た。鷹也はそれを抱きかかえる。
しかし、リビングには小さなウサギのお人形と、積み木が散乱していた。
「なんだスズ~。うさぎさんとパンダさん、ケンカでもしたのかぁ?」
「うん! うさぎさんが勝ったんだよ!」
「でもお片付けはちゃんとしないとなぁ」
「うん。スズたんできるよ。おねえちゃんだもん」
そういいながら、鈴は鷹也の腕からおりて自分のおもちゃを片付け始めた。
母親はテレビのリモコンを片手にソファで寝転んでいた。
「ああ、しんどい。スズの体力には勝てんわ~」
と愚痴をこぼす。
彩がいるころ部屋がきれいだったのは、彩はキチンとしていたんだなぁと思い知らされた。
母も孫に言って嫌われたくないのでそのままなんだろうと察知した。
自分が教えなくてはいけない。
風呂が沸いているので鈴と先に入るように母親に促され、鷹也は鈴をかかえて風呂に入った。
休暇中には何度もこなした仕事だ。
いい加減になれた。鈴も多少大きいので手がかからない。
シャンプーは鷹也がやってやらないとダメだが、体くらいは自分で洗う。そして、鷹也が体を洗っている時にはお風呂のおもちゃで遊んでいた。
ジョウロから水を蛇口にかけながら
「ママ今、どの辺にいるんだろうね~」
と、まだ旅行だと思っている。
「お土産ほちいなぁ~」
そう楽し気に言っていた。
鷹也は、早く妻を見つけなければいけないと思うものの、どうしていいのか分からなかった。手がかりがないのだ。かと言ってここで待っているわけにもいけない。
風呂から上がり、鈴を寝かしつけながらそう思った。
そして、いつの間にか鈴の横で眠りついていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
家では優しい父。会社では頼りになる課長。
鷹也はその日も自分の机に向かって仕事に取り組んでいた。
その横に近野が立つ。
「課長……」
「どうした? 近野係長」
「少しお話があります」
「ここじゃダメかね?」
「はい……」
近野に連れられ、小さい喫煙室に入った。
二人がやっとだ。中央に腰ほどの高さの灰皿がある。
満室の場合は、他の喫煙者は別の喫煙所に行くのがこの会社のルールだ。
二人は互いに電子タバコを取り出した。
近野は会社に入ってから、鷹也を真似て同じメーカーの電子タバコを買っていた。
鷹也のタバコが切れている場合は一本渡せる。自分が無い場合は一本貰える。
コミュニケーションを一つでも多くしようと言うわけだ。
二人は一服しながら話を始めた。
「土曜日に食事会って……課長、料理できるんですか?」
「いや出来ないけど……焼き肉でいいだろ?」
「ダメですよ……お子さん小さいんでしょ? 鉄板に手を伸ばしたりしたら……」
「……あ! そうか。実は女性たちに料理を頼もうとは思っていたのだ……。何か良い考えはないかね?」
近野は微笑んだ。まるで自分の思い通りになったと言わんばかりだ。
「じゃ私、少し早めに行きます。一緒に買い物しましょうよ。お子さんの好きなものは?」
「あ、えっと」
彩からの言葉を思い出す。
「お好み焼きだ」
「あ、ふーん。なるほど。子供だから紅しょうがとかダメですよね?」
「うん。そう」
「鉄板を出さないで、調理場で作りますよ。焼き肉も焼いたものをそこからなら出せるし。良いですかね?」
鷹也は近野のプランに飛びついた。
「ああ。いいとも! 助かるよ」
こうして土曜日のプランは決まった。
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