36 / 111
第36話 母の教育
しおりを挟む
鷹也が自宅を出て実家に着くまでそう時間を要さなかった。
他県ではあるのだが、午前中には到着した。
三年ぶりの風景が懐かしい。
実家に着くと、両親が二人を出迎えた。
母親が鷹也を睨みつけて開口一番こう言った。
「来たな。親不孝もの」
「何でだよ」
「ずっとアヤに任せっきりでお盆にも来ないで、連絡も無し。アヤなんてスズを見せにふた月に一度は来てくれたのに。そして、昨日急に来るってかい。どういう心境の変化だい」
そう言いながら孫を抱きしめ抱擁した。
「それで? 私のカワイイ娘はどうして今日は来ないの?」
「ああ。もう来ないよ」
「……え……?」
鷹也は鈴に家に入るように促した。
鈴は祖父である鷹也の父親に手を引かれ、喜んで家の中にかけて行く。
「どういうこと?」
「あいつ、浮気してたんだよ。不倫。だから離婚する。今日家を出る約束なんだ」
「ウソでしょ?」
「ホントだよ。だから母ちゃんにスズの面倒を頼もうと思って」
「ちょっと待ってよ。アヤがホントにそんなことしたの?」
「そうだよ。証拠だってある。浮気した男に性病うつされてオレにもそれをうつした。思い出すと腹が立って来る」
母親はギリリと歯ぎしりをすると大きくなった息子に背伸びをして、思い切り拳をふりおろした。
「いって! なにしやがんだよ!」
「あ~。育て方を誤った」
さすがに鷹也も憤慨した。
「……どういう意味だよ……」
「あんたは、家庭を顧みないほど働いた。そりゃご立派よ! お金をたくさん稼いで出世して?」
「そうだよ。金があったほうが幸せだろうが!」
「そう? 帰らない夫でも」
「…………」
「あんたは幸せを勘違いしてたんだよ。そしてせっせと幸せの準備だけをしてただけ。アヤはちっとも幸せじゃなかった。スズに愛情を与え、ウチに気を使って。自分の幸せをアンタの分までスズに与え続けて気がつきゃ空っぽ。アヤの幸せの器は空っぽになっちゃったんじゃないの? 違う? 違うと言い切れる?」
「ちが……」
「あっそう。幸せだったんだ。じゃぁ悪い女だね。離婚して正解よ!」
そう言いながら母親は肩を怒らせながら孫を追いかけて家の中に入って行った。
他県ではあるのだが、午前中には到着した。
三年ぶりの風景が懐かしい。
実家に着くと、両親が二人を出迎えた。
母親が鷹也を睨みつけて開口一番こう言った。
「来たな。親不孝もの」
「何でだよ」
「ずっとアヤに任せっきりでお盆にも来ないで、連絡も無し。アヤなんてスズを見せにふた月に一度は来てくれたのに。そして、昨日急に来るってかい。どういう心境の変化だい」
そう言いながら孫を抱きしめ抱擁した。
「それで? 私のカワイイ娘はどうして今日は来ないの?」
「ああ。もう来ないよ」
「……え……?」
鷹也は鈴に家に入るように促した。
鈴は祖父である鷹也の父親に手を引かれ、喜んで家の中にかけて行く。
「どういうこと?」
「あいつ、浮気してたんだよ。不倫。だから離婚する。今日家を出る約束なんだ」
「ウソでしょ?」
「ホントだよ。だから母ちゃんにスズの面倒を頼もうと思って」
「ちょっと待ってよ。アヤがホントにそんなことしたの?」
「そうだよ。証拠だってある。浮気した男に性病うつされてオレにもそれをうつした。思い出すと腹が立って来る」
母親はギリリと歯ぎしりをすると大きくなった息子に背伸びをして、思い切り拳をふりおろした。
「いって! なにしやがんだよ!」
「あ~。育て方を誤った」
さすがに鷹也も憤慨した。
「……どういう意味だよ……」
「あんたは、家庭を顧みないほど働いた。そりゃご立派よ! お金をたくさん稼いで出世して?」
「そうだよ。金があったほうが幸せだろうが!」
「そう? 帰らない夫でも」
「…………」
「あんたは幸せを勘違いしてたんだよ。そしてせっせと幸せの準備だけをしてただけ。アヤはちっとも幸せじゃなかった。スズに愛情を与え、ウチに気を使って。自分の幸せをアンタの分までスズに与え続けて気がつきゃ空っぽ。アヤの幸せの器は空っぽになっちゃったんじゃないの? 違う? 違うと言い切れる?」
「ちが……」
「あっそう。幸せだったんだ。じゃぁ悪い女だね。離婚して正解よ!」
そう言いながら母親は肩を怒らせながら孫を追いかけて家の中に入って行った。
0
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
不倫した挙句に離婚、借金抱えた嬢にまでなってしまった私、だけど人生あきらめません!
越路遼介
大衆娯楽
山形県米沢市で夫と娘、家族3人で仲良く暮らしていた乾彩希29歳。しかし同窓会で初恋の男性と再会し、不倫関係となってしまう。それが露見して離婚、愛する娘とも離れ離れに。かつ多額の慰謝料を背負うことになった彩希は東京渋谷でデリヘル嬢へと。2年経ち、31歳となった彼女を週に何度も指名してくるタワマンに住む男、水原。彼との出会いが彩希の運命を好転させていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる