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第25話 復讐の鬼
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そこは小さいアパートだった。
自分たちの貸家よりも汚い。なぜこんなものに惚れる要素があったのか鷹也には不思議でならない。
鷹也は、ドアの影に隠れ、彩に呼び鈴を押すように指示した。
ピン ポン
呼び鈴の音で、ドンドンドンと足を踏みならす音が聞こえる。
ドアが開いた。開いたところにいる彩の顔を見て、浮気男は、
「なんだ。アヤか。やっぱり忘れられねぇんじゃん。言った通りだったろ?」
呼び捨て。鷹也は更に逆上し、グイッとドアを引き顔を覗かせて浮気男の顔を拝む。
見てくれは少しばかりイイ男かも知れないが平日の今の時間に家にいる。
本当にクズのような男だと冷たい視線を矢のように放った。
浮気男はそれに驚いて
「誰だ? アンタ」
それが言い終わらない内に
「アヤの夫だ」
浮気男は何とも言えない圧力に屈服し、床を背にして無様に倒れ込んだ。
伏した格好で鷹也を見上げるしかない。
鷹也はポケットに手を突っ込んで銀色に輝く、ボイスレコーダーを取り出した。会社で客との話の内容を録音しておくために使っていたものだ。こんな時にも役に立つとは思わなかった。
「ずいぶん妻が世話になったようだな。いいか? 録音している。正直に話せ。ウソを言ったら裁判になったとき不利になるのでそのつもりでいろ。君は妻から金を借りたらしいな。しかしその金は夫の許可無く不本意に貸与されたものだ。近日中に返して貰う。それから妻を幸せにすると言ったらしいな。くれてやってもいいが、不倫で離婚するのだ。財産分与はない。逆に二人に慰謝料を課すことができる。そして娘はやれない。だから二人には養育費を払って貰う。月に10万だ。アンタにそれが出来るか?」
彩も驚いた顔をして泣き出した。
離婚の意思。鈴と離し追い出す意思。
今の鷹也は鬼だ。復讐の鬼。
優しい鷹也はどこにもいない。だが自分が鬼に変えてしまった。
彩はどうにもならなくて泣くしかなかったのだ。
浮気男は怯えて首を振るだけ。
「妻を幸せにするのか? どうなんだ!」
「で、できません……」
「なら適当な言葉で人を騙すな! 詐欺師め!」
「は、はい。スイマセン……」
「謝ってもすまない。口八丁で妻から引き出した200万円。慰謝料に100万だ。それで示談にする。ダメなら裁判だ」
「しかし、そんな金は」
「人様の金借りたんだろ? 利子を取られないだけありがたく思え。金はどこにやった」
「あの……風俗とかキャバクラで……」
彩もそれに声を荒げる。
「ウソ! 投資のビジネスをしてるって! 割り増しにして返すって!」
鷹也は彩の世間知らずさにまたもや腹がたった。
「妻はそう言ってるがどうなんだ? 株でもやってるのか? 為替か?」
「いえ……」
「アヤ。そういう事だ。オマエはこれに惚れた。バカにはお似合いだ」
彩は何も言えずにまた泣き出す。
鷹也はしゃがんで浮気男に凄んだ。
「妻と不貞行為をしたな?」
「いえ……」
「してないというのか?」
「はい……」
「妻はしたと言ってるが?」
「いえ……してません」
「キミは自分の性器が痛くないのか?」
「はい?」
「クラミジアだ。キミは妻にうつし、妻はオレにうつした。言い逃れは出来ない。ウソをつくなといったぞ!」
浮気男には逃げ場は無かった。
ただ頷くしか出来ない。
「やったな?」
「は、はい」
「ならウソをつくな!」
「は、はい。す、スイマセン!」
鷹也は今までの音声を巻き戻して二人に聞かせた。
完全に録音されていた。
自分たちの貸家よりも汚い。なぜこんなものに惚れる要素があったのか鷹也には不思議でならない。
鷹也は、ドアの影に隠れ、彩に呼び鈴を押すように指示した。
ピン ポン
呼び鈴の音で、ドンドンドンと足を踏みならす音が聞こえる。
ドアが開いた。開いたところにいる彩の顔を見て、浮気男は、
「なんだ。アヤか。やっぱり忘れられねぇんじゃん。言った通りだったろ?」
呼び捨て。鷹也は更に逆上し、グイッとドアを引き顔を覗かせて浮気男の顔を拝む。
見てくれは少しばかりイイ男かも知れないが平日の今の時間に家にいる。
本当にクズのような男だと冷たい視線を矢のように放った。
浮気男はそれに驚いて
「誰だ? アンタ」
それが言い終わらない内に
「アヤの夫だ」
浮気男は何とも言えない圧力に屈服し、床を背にして無様に倒れ込んだ。
伏した格好で鷹也を見上げるしかない。
鷹也はポケットに手を突っ込んで銀色に輝く、ボイスレコーダーを取り出した。会社で客との話の内容を録音しておくために使っていたものだ。こんな時にも役に立つとは思わなかった。
「ずいぶん妻が世話になったようだな。いいか? 録音している。正直に話せ。ウソを言ったら裁判になったとき不利になるのでそのつもりでいろ。君は妻から金を借りたらしいな。しかしその金は夫の許可無く不本意に貸与されたものだ。近日中に返して貰う。それから妻を幸せにすると言ったらしいな。くれてやってもいいが、不倫で離婚するのだ。財産分与はない。逆に二人に慰謝料を課すことができる。そして娘はやれない。だから二人には養育費を払って貰う。月に10万だ。アンタにそれが出来るか?」
彩も驚いた顔をして泣き出した。
離婚の意思。鈴と離し追い出す意思。
今の鷹也は鬼だ。復讐の鬼。
優しい鷹也はどこにもいない。だが自分が鬼に変えてしまった。
彩はどうにもならなくて泣くしかなかったのだ。
浮気男は怯えて首を振るだけ。
「妻を幸せにするのか? どうなんだ!」
「で、できません……」
「なら適当な言葉で人を騙すな! 詐欺師め!」
「は、はい。スイマセン……」
「謝ってもすまない。口八丁で妻から引き出した200万円。慰謝料に100万だ。それで示談にする。ダメなら裁判だ」
「しかし、そんな金は」
「人様の金借りたんだろ? 利子を取られないだけありがたく思え。金はどこにやった」
「あの……風俗とかキャバクラで……」
彩もそれに声を荒げる。
「ウソ! 投資のビジネスをしてるって! 割り増しにして返すって!」
鷹也は彩の世間知らずさにまたもや腹がたった。
「妻はそう言ってるがどうなんだ? 株でもやってるのか? 為替か?」
「いえ……」
「アヤ。そういう事だ。オマエはこれに惚れた。バカにはお似合いだ」
彩は何も言えずにまた泣き出す。
鷹也はしゃがんで浮気男に凄んだ。
「妻と不貞行為をしたな?」
「いえ……」
「してないというのか?」
「はい……」
「妻はしたと言ってるが?」
「いえ……してません」
「キミは自分の性器が痛くないのか?」
「はい?」
「クラミジアだ。キミは妻にうつし、妻はオレにうつした。言い逃れは出来ない。ウソをつくなといったぞ!」
浮気男には逃げ場は無かった。
ただ頷くしか出来ない。
「やったな?」
「は、はい」
「ならウソをつくな!」
「は、はい。す、スイマセン!」
鷹也は今までの音声を巻き戻して二人に聞かせた。
完全に録音されていた。
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