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第24話 怒りの化身
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その夜の二人はとうとう眠れず。
しかし、それを知らない鈴は元気に跳ね起きる。
鷹也も彩もそんな話をしたことなどおくびにも出さない。
「スズ。今日は保育園で遊んでこいな」
と鷹也が言うと、鈴は楽しそうな顔をして
「パパ、ママとデートでちか」
「ああ。そんなところだ」
と返した。
軽自動車に三人で乗り、鈴を保育園に預けた。鈴が走り去る姿をにこやかに二人で見送ると鷹也は静かながら凄んだ声で言った。
「これからオマエを泌尿器科に連れて行く」
「ハイ……」
彩を診療所に連れて行った。検査の間は待合室で待っていたが医師の話をする時に鷹也は診療室に入り一緒に検査の内容を聞くことにした。
医師ははばかって全容を語るようなことはしなかったが、鷹也がふと目を落としたカルテ。
鷹也にはドイツ語はわからない。しかし、人型の図が書いてある。そこには局部に赤い印と、喉に赤い印が書いてあったのだ。
鷹也はまた頭の中が真っ白になった。
咽頭クラミジアだ。
鷹也は昨日、自分の症状を聞かされてすぐさまネットで調べた。その際にクラミジアのカテゴリにあったのだ。
口淫によって感染する。
彩にはそれだけはありえないと思った。
というのも、同棲時代に鷹也はそれに興味を持ち、当時の恋人である彩に持ちかけたことがあったのだ。
しかし彩はこう言った。「変態行為」だと。自分にはする気がないと言った。
それ以来、鷹也は彩に遠慮して言葉に出したことさえもなかった。
だが、その浮気男には許した。
浮気男の味をその口は覚えたのだ。
鷹也は自分が許されなかった行為をたった四度の逢瀬で許したことに怒りをますます募らせた。
考えたくもないのに想像してしまう。彩が浮気男の局部に愛おしく顔を埋めているさま。
極度のストレスで吐き気をもよおす。
恋人同士が性に快楽を求め楽しむ行為。自分には許さなかったのにその浮気男には……。
鷹也は爪が食い込むほど拳を固く握った。
彩が薬をもらい、ともに車に乗り込んだ瞬間に鷹也は怒気を放った。
「そいつのを口で受けたのか?」
彩は驚いた。
「ど、どうして?」
「とぼけるな。カルテに喉にもクラミジアがあると書いてあった」
「……あの……無理やりだったの……」
「だったら嚙み千切れ!」
今更だ。そんな言葉は今更。
だが男の怒りは治まらない。
「……あの……でも……」
「今からそいつの家に行く。教えろ」
「え……ダメだよ……」
鷹也は喉が裂けんばかりに怒鳴った。
「かばうのかよ! そいつの方が大事ならその家に置いて来てやるよ!」
「……ちが! ……違う……言うよ……」
「一人暮らしか」
「……ウン……」
「そこで抱かれたのか?」
「……ウン……」
「じゃぁ、二人の愛の巣を見せてもらいましょうかねぇ」
鷹也は車を走り出した。
怒りの化身だ。鷹也の口からギリギリと奥歯を噛み締める音が彩の耳には聞こえる。
彩は仕方なく少ない言葉で行き先を案内するしかなかった。
しかし、それを知らない鈴は元気に跳ね起きる。
鷹也も彩もそんな話をしたことなどおくびにも出さない。
「スズ。今日は保育園で遊んでこいな」
と鷹也が言うと、鈴は楽しそうな顔をして
「パパ、ママとデートでちか」
「ああ。そんなところだ」
と返した。
軽自動車に三人で乗り、鈴を保育園に預けた。鈴が走り去る姿をにこやかに二人で見送ると鷹也は静かながら凄んだ声で言った。
「これからオマエを泌尿器科に連れて行く」
「ハイ……」
彩を診療所に連れて行った。検査の間は待合室で待っていたが医師の話をする時に鷹也は診療室に入り一緒に検査の内容を聞くことにした。
医師ははばかって全容を語るようなことはしなかったが、鷹也がふと目を落としたカルテ。
鷹也にはドイツ語はわからない。しかし、人型の図が書いてある。そこには局部に赤い印と、喉に赤い印が書いてあったのだ。
鷹也はまた頭の中が真っ白になった。
咽頭クラミジアだ。
鷹也は昨日、自分の症状を聞かされてすぐさまネットで調べた。その際にクラミジアのカテゴリにあったのだ。
口淫によって感染する。
彩にはそれだけはありえないと思った。
というのも、同棲時代に鷹也はそれに興味を持ち、当時の恋人である彩に持ちかけたことがあったのだ。
しかし彩はこう言った。「変態行為」だと。自分にはする気がないと言った。
それ以来、鷹也は彩に遠慮して言葉に出したことさえもなかった。
だが、その浮気男には許した。
浮気男の味をその口は覚えたのだ。
鷹也は自分が許されなかった行為をたった四度の逢瀬で許したことに怒りをますます募らせた。
考えたくもないのに想像してしまう。彩が浮気男の局部に愛おしく顔を埋めているさま。
極度のストレスで吐き気をもよおす。
恋人同士が性に快楽を求め楽しむ行為。自分には許さなかったのにその浮気男には……。
鷹也は爪が食い込むほど拳を固く握った。
彩が薬をもらい、ともに車に乗り込んだ瞬間に鷹也は怒気を放った。
「そいつのを口で受けたのか?」
彩は驚いた。
「ど、どうして?」
「とぼけるな。カルテに喉にもクラミジアがあると書いてあった」
「……あの……無理やりだったの……」
「だったら嚙み千切れ!」
今更だ。そんな言葉は今更。
だが男の怒りは治まらない。
「……あの……でも……」
「今からそいつの家に行く。教えろ」
「え……ダメだよ……」
鷹也は喉が裂けんばかりに怒鳴った。
「かばうのかよ! そいつの方が大事ならその家に置いて来てやるよ!」
「……ちが! ……違う……言うよ……」
「一人暮らしか」
「……ウン……」
「そこで抱かれたのか?」
「……ウン……」
「じゃぁ、二人の愛の巣を見せてもらいましょうかねぇ」
鷹也は車を走り出した。
怒りの化身だ。鷹也の口からギリギリと奥歯を噛み締める音が彩の耳には聞こえる。
彩は仕方なく少ない言葉で行き先を案内するしかなかった。
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