ずっと君のこと ──妻の不倫

家紋武範

文字の大きさ
上 下
24 / 111

第24話 怒りの化身

しおりを挟む
その夜の二人はとうとう眠れず。
しかし、それを知らない鈴は元気に跳ね起きる。

鷹也も彩もそんな話をしたことなどおくびにも出さない。

「スズ。今日は保育園で遊んでこいな」

と鷹也が言うと、鈴は楽しそうな顔をして

「パパ、ママとデートでちか」
「ああ。そんなところだ」

と返した。
軽自動車に三人で乗り、鈴を保育園に預けた。鈴が走り去る姿をにこやかに二人で見送ると鷹也は静かながら凄んだ声で言った。

「これからオマエを泌尿器科に連れて行く」
「ハイ……」

彩を診療所に連れて行った。検査の間は待合室で待っていたが医師の話をする時に鷹也は診療室に入り一緒に検査の内容を聞くことにした。
医師ははばかって全容を語るようなことはしなかったが、鷹也がふと目を落としたカルテ。
鷹也にはドイツ語はわからない。しかし、人型の図が書いてある。そこには局部に赤い印と、喉に赤い印が書いてあったのだ。

鷹也はまた頭の中が真っ白になった。

咽頭クラミジアだ。

鷹也は昨日、自分の症状を聞かされてすぐさまネットで調べた。その際にクラミジアのカテゴリにあったのだ。
口淫によって感染する。

彩にはそれだけはありえないと思った。
というのも、同棲時代に鷹也はそれに興味を持ち、当時の恋人である彩に持ちかけたことがあったのだ。
しかし彩はこう言った。「変態行為」だと。自分にはする気がないと言った。

それ以来、鷹也は彩に遠慮して言葉に出したことさえもなかった。
だが、その浮気男には許した。
浮気男の味をその口は覚えたのだ。

鷹也は自分が許されなかった行為をたった四度の逢瀬で許したことに怒りをますます募らせた。
考えたくもないのに想像してしまう。彩が浮気男の局部に愛おしく顔を埋めているさま。
極度のストレスで吐き気をもよおす。
恋人同士が性に快楽を求め楽しむ行為。自分には許さなかったのにその浮気男には……。
鷹也は爪が食い込むほど拳を固く握った。

彩が薬をもらい、ともに車に乗り込んだ瞬間に鷹也は怒気を放った。

「そいつのを口で受けたのか?」

彩は驚いた。

「ど、どうして?」
「とぼけるな。カルテに喉にもクラミジアがあると書いてあった」

「……あの……無理やりだったの……」
「だったら嚙み千切れ!」

今更だ。そんな言葉は今更。
だが男の怒りは治まらない。

「……あの……でも……」
「今からそいつの家に行く。教えろ」

「え……ダメだよ……」

鷹也は喉が裂けんばかりに怒鳴った。

「かばうのかよ! そいつの方が大事ならその家に置いて来てやるよ!」
「……ちが! ……違う……言うよ……」

「一人暮らしか」
「……ウン……」

「そこで抱かれたのか?」
「……ウン……」

「じゃぁ、二人の愛の巣を見せてもらいましょうかねぇ」

鷹也は車を走り出した。
怒りの化身だ。鷹也の口からギリギリと奥歯を噛み締める音が彩の耳には聞こえる。

彩は仕方なく少ない言葉で行き先を案内するしかなかった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

処理中です...