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第9話 我が家
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近野は後部座席の窓から鷹也のその姿を消えるまでずっと見ていた。
「お客さん。どちらまで?」
「ああ。そこ右で……」
「はい」
車は夜の街を走り抜けて行く。
街灯の黄色い灯りがリズムよく近野の顔を照らす。
近野は輝くネオンの光を窓から眺めていた。
「出会うのが少し遅かったくらいで……。悔しいなぁ」
小さいその声は運転手にすら聞こえなかった。
その頃鷹也は別なタクシーを捕まえて家に向かっていた。
家に帰ると、すでに寝静まっている。
男に少しいたずら心が湧いた。
まだ、妻の彩に今日帰ることもひと月休みのことも言っていない。
そっと彩の部屋を覗くと子供と眠っていた。
鷹也には先ほど感じた近野の膝の温もりが残っていた。
それが近野の温もりだとは分かっていなかったが体の奥からムラムラという欲求が沸き上がっていたのだ。
すぐさまシャワーを浴び急いで体を洗って、眠っている妻の後ろに入り込んで背中に抱きついた。
「……キャ!」
「オレだ。おとなしくしろ」
「やだ……。タカちゃん……?」
「そう。ビックリさせようと思って帰って来た。いいだろ?」
そう言って彩の胸に手を伸ばす。
「ダメダメ。眠いのぉ」
「いーじゃん。いーじゃん」
鷹也は強引に彩に身を重ねようとしたが、彩は平手で男の膝を打った。
「ダメ。スズが起きるでしょ」
そう言って立ち上がりトイレに向かって行った。
鷹也は叩かれた場所を押さえて呆然としていたが、それもそうだと思った。
今まで普通に彩に自分の体を合わせていたが、今は子供がいる。
そう考えると、今までどれほどブランクがあったのか?
子供ができたと控えていた。
子供が生まれたと控えていた。
仕事が忙しくて控えていた。
考えてみると彩と行為はおろか身を密着させたのも久しぶりのことだった。
トイレの水流の音が聞こえる。彩が戻って来たのだ。
「なによぉ。いきなり。いつも連絡くれるのに」
「ゴメン。急に飲み会になったんだ」
「そっか。じゃぁ仕方ないね」
そう言いながら彩は布団の中に滑り込んだ。
「……ごめん。スズも起きるかもしれないし、一日中スズの相手で疲れてるの。寝ていい?」
「あ、ああ」
そう言うと、彼女は布団をかけて鷹也に背を向けた。
子供の方を見ながらもう一度、二度目の睡眠をとるためだ。
鷹也は久しぶりに愛しい妻の顔を見てさらに欲求が募ったがせめてとばかり、唇を顔に近づけた。
「ん……」
彩はそれでも顔を向けようとしなかった。
仕方なく鷹也は彩の耳に口づけをし、自室に戻って布団を敷いて寝た。
「お客さん。どちらまで?」
「ああ。そこ右で……」
「はい」
車は夜の街を走り抜けて行く。
街灯の黄色い灯りがリズムよく近野の顔を照らす。
近野は輝くネオンの光を窓から眺めていた。
「出会うのが少し遅かったくらいで……。悔しいなぁ」
小さいその声は運転手にすら聞こえなかった。
その頃鷹也は別なタクシーを捕まえて家に向かっていた。
家に帰ると、すでに寝静まっている。
男に少しいたずら心が湧いた。
まだ、妻の彩に今日帰ることもひと月休みのことも言っていない。
そっと彩の部屋を覗くと子供と眠っていた。
鷹也には先ほど感じた近野の膝の温もりが残っていた。
それが近野の温もりだとは分かっていなかったが体の奥からムラムラという欲求が沸き上がっていたのだ。
すぐさまシャワーを浴び急いで体を洗って、眠っている妻の後ろに入り込んで背中に抱きついた。
「……キャ!」
「オレだ。おとなしくしろ」
「やだ……。タカちゃん……?」
「そう。ビックリさせようと思って帰って来た。いいだろ?」
そう言って彩の胸に手を伸ばす。
「ダメダメ。眠いのぉ」
「いーじゃん。いーじゃん」
鷹也は強引に彩に身を重ねようとしたが、彩は平手で男の膝を打った。
「ダメ。スズが起きるでしょ」
そう言って立ち上がりトイレに向かって行った。
鷹也は叩かれた場所を押さえて呆然としていたが、それもそうだと思った。
今まで普通に彩に自分の体を合わせていたが、今は子供がいる。
そう考えると、今までどれほどブランクがあったのか?
子供ができたと控えていた。
子供が生まれたと控えていた。
仕事が忙しくて控えていた。
考えてみると彩と行為はおろか身を密着させたのも久しぶりのことだった。
トイレの水流の音が聞こえる。彩が戻って来たのだ。
「なによぉ。いきなり。いつも連絡くれるのに」
「ゴメン。急に飲み会になったんだ」
「そっか。じゃぁ仕方ないね」
そう言いながら彩は布団の中に滑り込んだ。
「……ごめん。スズも起きるかもしれないし、一日中スズの相手で疲れてるの。寝ていい?」
「あ、ああ」
そう言うと、彼女は布団をかけて鷹也に背を向けた。
子供の方を見ながらもう一度、二度目の睡眠をとるためだ。
鷹也は久しぶりに愛しい妻の顔を見てさらに欲求が募ったがせめてとばかり、唇を顔に近づけた。
「ん……」
彩はそれでも顔を向けようとしなかった。
仕方なく鷹也は彩の耳に口づけをし、自室に戻って布団を敷いて寝た。
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