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第 八 話
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オレたちは急いで懐中電灯をそちらに向ける。
そこには気持ちよさそうによだれを垂らした目の抜けた南条先輩の顔。驚いて灯りがぶれる。
「わっ!」
もう一度、懐中電灯の灯りを向けると、南条先輩の腰から下がない。しかし、痛いとも苦しいとも言わない。
西森さんが叫ぶ。
「おいおい、何かいるぞ!」
──何か。
それが何なのか分からない。
しかし、目を抜き、足を食ってしまうような猛獣。
そんなものが脳裏に浮かぶ。
大型のネコ科の猛獣や、ワニ。
ペットだったものが捨てられて、南条先輩に危害を加えた?
そう考えるのが妥当。
オレたちは南条先輩の近くを懐中電灯で照らしたがそこにはやはり何もない。
草の動きも聞こえない。
ただ、南条先輩の笑い声が不気味に響くだけだ。
東先輩が叫ぶ。
「誰かススムを助けてやってよ!」
しかしオレたちは恐怖で動けなかった。
西森さんも猛獣を探すのでやっきだ。
オレと翠里と中瀬さんは近くに寄ってかたまり合っていた。
「もういいわよ! 頼まない! ススム!」
東先輩が叫んで南条先輩に近づく。
懐中電灯を持っているオレと西森さんは辺りを警戒して懐中電灯の灯りを振り回していた。
車のヘッドライトから東先輩が離れたところで東先輩の声。
「あれ? 見えない。見えない。見えにゃい。見えにゃい」
何が起きた?
オレと西森さんの懐中電灯の灯りがそちらを照らす。
そこには目の抜けた東先輩の顔。
楽しそうに笑っている。
「わ! わーー!」
「キャ! キャーーー!」
オレたちは叫ぶことしか出来ない。
先ほどの南条先輩と一緒だ。
東先輩の目は完全に抜けてしまった。
「えひゃひゃひゃひゃ。えひゃ。えひゃ。えひゃ……」
東先輩の笑い声が徐々に小さくなる。
南条先輩の声はすでに聞こえない。
オレたちは恐怖で震えながら懐中電灯の灯りをそこに向けた。
そこには、神社の入り口に並んでいる地蔵と同じようなものが二つ転がっているだけ。
しかし、顔は南条先輩と東先輩に間違いない。
二人は、地蔵のようなものになってしまったのだ。
残されたオレたち四人の震えは止まらない。
全員声も出せなかった。
じっとりとした気持ちの悪い汗が噴き出ている。
何が起こった?
何が起きた?
これがシカガネ様のタタリ。
声には出さないが、みんなそう思って息を飲んだ。
「か、か、カメラに何か写っているのかも」
中瀬さんがそう言いながら、カメラ付属の小さいモニタに撮っていた動画を再生した。
それを車のボンネットの上に置いて四人で仲間を確認する。
「もういいわよ! 頼まない! ススム!」
数分前の東先輩が写っている。
彼女は、南条先輩に向けて走り出していた。
そして、ヘッドライトから外れると急ぎ足がゆっくりとなる。
「あれ? 見えない。見えない。見えにゃい。見えにゃい」
足取りが陽気そのものだ。千鳥足のようにフラついてはいるものの、しっかりしている。
そしてこちらを向く。目の抜けた顔。
そこには目を奪うような生き物は写っていなかった。
「ひ!」
全員で悲鳴をあげた。東先輩の目の抜けた顔なんてもう一度見たくはなかった。
背中が怖い。振り返りたくない。
そこには気持ちよさそうによだれを垂らした目の抜けた南条先輩の顔。驚いて灯りがぶれる。
「わっ!」
もう一度、懐中電灯の灯りを向けると、南条先輩の腰から下がない。しかし、痛いとも苦しいとも言わない。
西森さんが叫ぶ。
「おいおい、何かいるぞ!」
──何か。
それが何なのか分からない。
しかし、目を抜き、足を食ってしまうような猛獣。
そんなものが脳裏に浮かぶ。
大型のネコ科の猛獣や、ワニ。
ペットだったものが捨てられて、南条先輩に危害を加えた?
そう考えるのが妥当。
オレたちは南条先輩の近くを懐中電灯で照らしたがそこにはやはり何もない。
草の動きも聞こえない。
ただ、南条先輩の笑い声が不気味に響くだけだ。
東先輩が叫ぶ。
「誰かススムを助けてやってよ!」
しかしオレたちは恐怖で動けなかった。
西森さんも猛獣を探すのでやっきだ。
オレと翠里と中瀬さんは近くに寄ってかたまり合っていた。
「もういいわよ! 頼まない! ススム!」
東先輩が叫んで南条先輩に近づく。
懐中電灯を持っているオレと西森さんは辺りを警戒して懐中電灯の灯りを振り回していた。
車のヘッドライトから東先輩が離れたところで東先輩の声。
「あれ? 見えない。見えない。見えにゃい。見えにゃい」
何が起きた?
オレと西森さんの懐中電灯の灯りがそちらを照らす。
そこには目の抜けた東先輩の顔。
楽しそうに笑っている。
「わ! わーー!」
「キャ! キャーーー!」
オレたちは叫ぶことしか出来ない。
先ほどの南条先輩と一緒だ。
東先輩の目は完全に抜けてしまった。
「えひゃひゃひゃひゃ。えひゃ。えひゃ。えひゃ……」
東先輩の笑い声が徐々に小さくなる。
南条先輩の声はすでに聞こえない。
オレたちは恐怖で震えながら懐中電灯の灯りをそこに向けた。
そこには、神社の入り口に並んでいる地蔵と同じようなものが二つ転がっているだけ。
しかし、顔は南条先輩と東先輩に間違いない。
二人は、地蔵のようなものになってしまったのだ。
残されたオレたち四人の震えは止まらない。
全員声も出せなかった。
じっとりとした気持ちの悪い汗が噴き出ている。
何が起こった?
何が起きた?
これがシカガネ様のタタリ。
声には出さないが、みんなそう思って息を飲んだ。
「か、か、カメラに何か写っているのかも」
中瀬さんがそう言いながら、カメラ付属の小さいモニタに撮っていた動画を再生した。
それを車のボンネットの上に置いて四人で仲間を確認する。
「もういいわよ! 頼まない! ススム!」
数分前の東先輩が写っている。
彼女は、南条先輩に向けて走り出していた。
そして、ヘッドライトから外れると急ぎ足がゆっくりとなる。
「あれ? 見えない。見えない。見えにゃい。見えにゃい」
足取りが陽気そのものだ。千鳥足のようにフラついてはいるものの、しっかりしている。
そしてこちらを向く。目の抜けた顔。
そこには目を奪うような生き物は写っていなかった。
「ひ!」
全員で悲鳴をあげた。東先輩の目の抜けた顔なんてもう一度見たくはなかった。
背中が怖い。振り返りたくない。
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