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第1章
その空に憧れる-side蓮-2
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「……あの。三井先輩とは、もう会ってないんですか?」
言いづらそうに白坂さんが切り出す。
「会ってないよ」
そう答えるものの、彼女の曇った表情は変わらない。
「そうですか……。最近も何度か一緒にいるところを見かけたから、てっきりまだ続いているのかと思って」
いつの間にか見られていたらしい。
バレンタインの日、白坂さんが真鳥という男と帰ろうとしていたのを見たとき。絡みついてきた三井の腕を、嫉妬のあまり振りほどかなかったことを思い出した。
自分でも子どもじみていたと思う。白坂さんに見せつけるかのような情けない行動……。
ふと、うつむいた彼女の肩にかかる緩い癖毛が柔らかそうで、触れてみたくなった。
そんな衝動をどうにか抑えながら、誤解をとくための言葉を探す。
高校に入り白坂さんをまた好きになったのは、あの日にチョコをもらったのがきっかけだった。
心の奥底ではずっと白坂さんの存在があった。
それに気づいた三井は自分から離れる決意をし、僕に別れを告げた。
それでも、白坂さんと進展しないのを見て、時々三井は近づいてくる。
白坂さんは目を伏せながら、ためらいがちに口を開いた。
「三井先輩にも悪いし……二人の邪魔になることはしたくないんです。だからあまり、私は柏木先輩のそばにいない方が」
――それは困る。
以前から遠慮深いとは思っていたけど、ここまでとは。
「僕は、戻るつもりはないんだよ。三井さんに対する気持ちは……もうないから」
チーズケーキをシェアしたときも思ったけど。僕のケーキを薄く欠片ほどにしか切らなくて。つい自分のフォークで食べさせようとしてしまったが、まさか白坂さんが素直に口を開けるとは思わなかった。
こちらが強引に行きすぎて、断れなかっただけかとも取れた。だから、今度からはもう少し慎重に行かないと。
「白坂さんといると癒されるんだ。たまにでいいから、こうして会ってくれたら嬉しいんだけど。……駄目かな?」
駄目じゃない、と言うように彼女は首を横に振った。
「私も……先輩と一緒にいると癒されます」
しっかりとこちらを見て、彼女は気持ちを伝えてくれる。
たまにではなくて、本当は毎日でも会いたかった。
でも……追いかけ過ぎて、逃げられてからでは遅い。
言いづらそうに白坂さんが切り出す。
「会ってないよ」
そう答えるものの、彼女の曇った表情は変わらない。
「そうですか……。最近も何度か一緒にいるところを見かけたから、てっきりまだ続いているのかと思って」
いつの間にか見られていたらしい。
バレンタインの日、白坂さんが真鳥という男と帰ろうとしていたのを見たとき。絡みついてきた三井の腕を、嫉妬のあまり振りほどかなかったことを思い出した。
自分でも子どもじみていたと思う。白坂さんに見せつけるかのような情けない行動……。
ふと、うつむいた彼女の肩にかかる緩い癖毛が柔らかそうで、触れてみたくなった。
そんな衝動をどうにか抑えながら、誤解をとくための言葉を探す。
高校に入り白坂さんをまた好きになったのは、あの日にチョコをもらったのがきっかけだった。
心の奥底ではずっと白坂さんの存在があった。
それに気づいた三井は自分から離れる決意をし、僕に別れを告げた。
それでも、白坂さんと進展しないのを見て、時々三井は近づいてくる。
白坂さんは目を伏せながら、ためらいがちに口を開いた。
「三井先輩にも悪いし……二人の邪魔になることはしたくないんです。だからあまり、私は柏木先輩のそばにいない方が」
――それは困る。
以前から遠慮深いとは思っていたけど、ここまでとは。
「僕は、戻るつもりはないんだよ。三井さんに対する気持ちは……もうないから」
チーズケーキをシェアしたときも思ったけど。僕のケーキを薄く欠片ほどにしか切らなくて。つい自分のフォークで食べさせようとしてしまったが、まさか白坂さんが素直に口を開けるとは思わなかった。
こちらが強引に行きすぎて、断れなかっただけかとも取れた。だから、今度からはもう少し慎重に行かないと。
「白坂さんといると癒されるんだ。たまにでいいから、こうして会ってくれたら嬉しいんだけど。……駄目かな?」
駄目じゃない、と言うように彼女は首を横に振った。
「私も……先輩と一緒にいると癒されます」
しっかりとこちらを見て、彼女は気持ちを伝えてくれる。
たまにではなくて、本当は毎日でも会いたかった。
でも……追いかけ過ぎて、逃げられてからでは遅い。
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私の過去は、誰にも言えない。憧れている美術部の先輩に嫌われる前に、ある人に頼んで過去の記憶を一部消してもらったが……。
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