3度目に、君を好きになったとき

夏伐 碧

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第1章

その空に憧れる-side蓮-2

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「……あの。三井先輩とは、もう会ってないんですか?」


 言いづらそうに白坂さんが切り出す。


「会ってないよ」


 そう答えるものの、彼女の曇った表情は変わらない。


「そうですか……。最近も何度か一緒にいるところを見かけたから、てっきりまだ続いているのかと思って」


 いつの間にか見られていたらしい。

 バレンタインの日、白坂さんが真鳥という男と帰ろうとしていたのを見たとき。絡みついてきた三井の腕を、嫉妬のあまり振りほどかなかったことを思い出した。

 自分でも子どもじみていたと思う。白坂さんに見せつけるかのような情けない行動……。


 ふと、うつむいた彼女の肩にかかる緩い癖毛が柔らかそうで、触れてみたくなった。
 そんな衝動をどうにか抑えながら、誤解をとくための言葉を探す。

 高校に入り白坂さんをまた好きになったのは、あの日にチョコをもらったのがきっかけだった。
 心の奥底ではずっと白坂さんの存在があった。
 それに気づいた三井は自分から離れる決意をし、僕に別れを告げた。
 それでも、白坂さんと進展しないのを見て、時々三井は近づいてくる。

 白坂さんは目を伏せながら、ためらいがちに口を開いた。


「三井先輩にも悪いし……二人の邪魔になることはしたくないんです。だからあまり、私は柏木先輩のそばにいない方が」


 ――それは困る。

 以前から遠慮深いとは思っていたけど、ここまでとは。


「僕は、戻るつもりはないんだよ。三井さんに対する気持ちは……もうないから」


 チーズケーキをシェアしたときも思ったけど。僕のケーキを薄く欠片ほどにしか切らなくて。つい自分のフォークで食べさせようとしてしまったが、まさか白坂さんが素直に口を開けるとは思わなかった。

 こちらが強引に行きすぎて、断れなかっただけかとも取れた。だから、今度からはもう少し慎重に行かないと。


「白坂さんといると癒されるんだ。たまにでいいから、こうして会ってくれたら嬉しいんだけど。……駄目かな?」


 駄目じゃない、と言うように彼女は首を横に振った。


「私も……先輩と一緒にいると癒されます」


 しっかりとこちらを見て、彼女は気持ちを伝えてくれる。

 たまにではなくて、本当は毎日でも会いたかった。
 でも……追いかけ過ぎて、逃げられてからでは遅い。
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私の過去は、誰にも言えない。憧れている美術部の先輩に嫌われる前に、ある人に頼んで過去の記憶を一部消してもらったが……。
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