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それぞれの破滅へのプレリュード

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 ――USFAユーエスエフエー司令部

「全滅? あれだけの機動部隊が!?」
「状況を調べ直せ!」

 映画に出てきそうな、薄暗く、大型モニターがある空間は、喧騒けんそうに満ちていた。

 席に座っているオペレーターが忙しく、端末を弄っている。

室矢むろやカレナは、自宅から動かず! スティアも同じく!」
「ベーリング海にいた、アルファ分隊2名の生命反応が消失」

「監視中の衛星は、脅威となる部隊を確認できず!」
槇島まきしま睦月むつきは別の場所で、敵と交戦中!」

「目標の上空にいる無人航空機は、いまだ健在! ご指示を!」

 将校たちは、我に返った。

「プレデターを……槇島のところへ向かわせろ! せめて、そちらのデータを取りたい」
「イエッサー!」


「プレデター、シグナルロスト! こ、攻撃されたと思われます……」

「馬鹿な!? レーダー照射すら、なかったのだぞ!」

 驚愕する将校だが、睦月の御神刀である百雷ひゃくらいの斬撃は雷、光の速度だ。
 上空への振り抜きで、飛んでいた無人航空機は、あっさりと両断された。

 万策が尽きたことで、席のオペレーターは次の指示を待つ。

 その視線を感じながら、しぶしぶ命じる。

「オペレーション『金星』を終了する……。可能な限り、痕跡を消しつつ、撤退せよ!」

 正面の大型モニターが、別の映像に切り替わった。

 集まった将校たちは、ボソボソと話し合う。

「やはり、室矢カレナは危険だな……」
「スティアがやった可能性も」
「その区別はつかない! いずれにせよ、2人とも危険だ」
「報復すると思うか?」

 その言葉で、腕組みしている全員が考え込む。

「識別できるマークはないが……」
IGUイグーと見抜かれてはいるな……」
「確証はあるまい? 現地に出向いた駐在武官の独断としよう」

 椅子取りゲームは、顔が出ていた武官、ウォリナーの負けに。

「連絡はしてやるか……」

 最後の情けで、秘匿回線により、ウォリナーへ説明。


「……了解」

 通信を切ったウォリナーは、座っている椅子にもたれかかった。

 異能者の特殊部隊を含む、機甲部隊が失われたのだ。
 その責任を負わされた以上、もはや自分のキャリアはない。

 近日中に母国へ呼び戻されて、懲罰的な閑職に甘んじるか、辞職するのみ……。

 決意を込めた眼差しで、ウォリナーは立ち上がった。


 ◇


 ガラガラと、引き戸が開けられた。

「ふわあああっ……。おはようさん! 徹夜、大変だったな?」
「お疲れ! 今日が最後だし、頑張ろうな!」

 ぐっすり寝ていた警官が奥の住居から、次々に出てきた。

 美須坂みすざか駐在所は、住宅と一体化した構造だ。

「おはようございます! コーヒー、飲みました?」

 愛想がいい、萩原はぎわら一吾郎いちごろう

「ああ、もう飲んだ!」
「今、準備をするよ」
「徹夜明けだろ? 俺たちが手伝うから、無理するな……」

 彼らはガンロッカーもある場所へ移動して、ロッカーから制服を取り出し、手早く準備をする。

 制服のベルトの上から帯革たいかくを締めて、吊り下げた手錠ケースなどを確認しつつ、右腰のホルスターに実包を詰めた拳銃を突っ込む。
 わりと重い。


 駐在所の最上位が言った装備品を取り出すチェックが終わり、朝礼。

「えー! 今日は祭りの最終日で、昨日よりも混雑が予想され――」
 ギィッ

 出入口のドアが開かれる。

 その音と気配で、全員がそちらを見た。

 スーツ姿の男は、手早く述べる。

「本庁の片桐かたぎりだ! 昨晩に刃物を振り回していた槇島まきしま睦月むつきを捜査する。……萩原巡査長は?」

 相手を理解した警官は、一斉に敬礼。

 いっぽう、本庁のキャリアである片桐は答礼をせず、見回した。

「じ、自分であります!」

 慌てて、一吾郎がアピールした。

 片桐はうなずく。

「すぐに現場を確保して、所轄の鑑識に調べさせる。パトカーはあるか?」

 今から、祭りの対応だよ!
 どうして、本庁のあんたが、この県警に指示を出してんの!?

 そう言いたい一吾郎は、周りを見た。

 息を吐いた最上位が、命じる。

「行ってこい、萩原巡査長……。ここは、俺たちで何とかする」
「ハッ! ……よ、よろしくお願いします!」

 頭を下げた一吾郎は、微妙な空気を振り払うように、駐在所の外へ。

 警ら用のパトカーに近づき、ドアを開錠する。

 助手席のドアを開けた。

「どうぞ……」

 当然のように、片桐が乗り込んだ。

 運転席に回り込んだ一吾郎が滑り込み、ドアを閉めた。

「君は、あの動画を見たか? ……では、確認してくれ! この場所へ行きたい」

「ハッ! 失礼します」

 片桐のスマホを受け取った一吾郎は、夜の山奥で行われた戦闘を見る。

「とりあえず、それっぽい場所を目指して、近隣の住人に聞き込みをします」
「頼む」

 エンジンをかけた一吾郎は、ゆっくりとパトカーを出した。

 観光バスが連なり、大勢の人が歩いていることで、片桐がイラつく。

「人が多いな……」
「今日は、祭りのメインイベントがありますから……」

 白黒で上に赤ランプがあるパトカーを見ても、人々は驚かない。

 周りにも、警察車両が多いから。


 ――数時間後

 月明かりでホームビデオと同じ撮影だったが、山奥の現場に到着。

 パトカーから降りた2人は、周囲を見た。

「ここか?」
「はい。恐らくは……」

 片桐は、当たり前のように命じる。

「管轄の署に連絡して、鑑識と……現状を保全する人員を呼べ!」
「ハッ!」

 もう勘弁してくれと思いつつ、一吾郎はパトカーの車載無線のマイク部分を握り、引き寄せた。

「美須坂3より県警本部! ……凶器使用と殺傷の疑いにより、現場の保全と――」
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